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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第6章
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56話 S級昇格試験開催と1日目2



「やっぱり見極める目はまだまだだなあ。」



 発表が無事に終わりそんな事を呟く。予想していた人が入っていなかった訳じゃなく寧ろ全員入ってはいたのだが、発表者よりも多くの人を想像していたのだ。後で選ばれなかった理由を何処かで見ていたであろう師匠に聞こうと思いながら1日目が終了した。



 会場を出る時に受付の人にバッチを返すと代わりに手紙を受け取った。



「バッチを返却された方にはお渡しする決まりで御座います。今日中に冒険者ギルドにそれをお持ちになって下さいね。」



 と言われ渡された手紙だが実は手紙と言えるものか判断が付かない。封はしてある。中に何が書かれているか読もうと封を開けようとする。普通の行動だ。が、その封を開ける事が出来ない。頑丈に張り付いている訳でも無さそうだが、開封する事が出来なかったのだ。



「何だろうね、それ。」


「開かないし、ギルドに持って行けば分かるって事なんじゃない?」


「それしかないよね。」



 ワイワイと話しながら手紙の謎を解こうとしたがどうやっても開けられないので受付の人の言う様にギルドに持って行くことにした。



「にしても、バッチが無くなった代償がまさか屋台の手伝いとは。無くなった時間分手伝いしなきゃいけないんだってさ。」


「美奈は3時間位だけど、千春ンは4時間は最低でも働かないとね。可哀そうだよ~。」


「本当にかわいそうと思っていないでしょう!? 美奈も道連れにしてあげるわ!!」


「キャー! 千春ン怖ーい!!」



 くだらない話もしつつ結果師匠とは合流できなかったなと思いながらギルドに辿り着いたので天野君たちは宿に戻ると言って帰ってしまったので私一人でギルドに入りカウンターの受付の女性に話し掛ける。するとどうやら担当者がこの期間だけは別でいたみたいで嫌な顔一つせず案内して担当の受付さんに手紙の貰った経緯とコロシアムの受付さんに言われた事をそのまま伝えると頷き少々混みあっているので待ってもらうよう言われた。幾人かの人が上の方に行っては暫くすると喜んで降りてくる人や怒ってる人、色々な表情を浮かべているが。


 数十分待っていると先程の担当の受付の女性が「ご案内いたします。」と言っていつも解放されている2階に行く、と思いきやその2階の奥にある”魔方陣”に向かって歩いて行った。剝き出しで置いてあるが悪用とか問題あるのでは無いかと思ったが、魔方陣が有る場所を通った時何かを通った感覚があった。結界? 通れる人を限定している、のかもしれない。その結界を通ると透過していた透明な膜が透過しなくなった。



「私の案内は此処までです。此方からはお一人で向かって下さいね。」


「え?」


「大丈夫です。向かう先は一か所ですから迷わず目的地に着く事が出来ます。その手紙を持っていれば証明になりますので着いた先で渡してくださいね。それでは、行ってらっしゃい。」


「ど、どういう事、ですか.....!!?」



 聞いた質問は空を切る。眩しい光に包まれ次に目を向けると全く別の場所に”転移”していた。



「あそこが目的地....? 本当に一本道。」



 コツコツと響く足音を聞きながら手紙を持っていた手を強く握りしめていた。あの扉の先に途轍もない大きな力を感じる。つうと汗が伝う。足に重りを付けている様な感覚さえ有り、進んでいるスピードは変わらない筈なのに扉まで凄く長く感じる。


 扉の前に漸く辿り着きノックする。すると中から声が掛けられる。



「どうぞ、入って来てください。」



 女性の声が聞こえてきて、扉を開け中に入る。



「...失礼します。」



 そう言って頭を下げる。そして頭を上げると目の前の椅子に座る大男、『怪力』。その隣に立っているのはハイエルフの女性『焔姫』。そして、直ぐ近くに向かい合って置いてあるソファの片方に座っている『暴嵐』。



---......ここが目的地で本当に合ってるのっ!!??



 そんな叫び声を飲み、扉の前で硬直していると『焔姫』は微笑む。



「そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。何も取って食おうという訳では無いのですから。」


「わざわざ、そんな事言ったらそうするんじゃないかって思いそうだ。」


「まあ、そこでは何だから、そこに腰掛けると良い!!!」



 とそれぞれに言われて言われるまま『暴嵐』と逆側のソファに腰掛ける。凄く見られているのだけど、私もう一回お礼言っておいた方が良いのかな!?



「えっと、先程はありがとうございました。」


「?」



 お礼を言うと何故か首を傾げられた。そしてしばしの沈黙。



「....ああ、あの時のか。あんなの合法な訳無いだろう。当然のことをしたまでだ。」


「え、はい。」



 何か話が続かなくて気まずいんだけど。そんな事はっきり言えないので黙る。何か話さなきゃ...あ!



「あの、この手紙を見せて下さいって言われて来たんですけど。でも、開けられなくて中身は確認してないです。」


「その手紙ですね。開かなくて良い物なんですよ。お預かりしますね。」



 握りしめていた手紙を渡す。少しくしゃくしゃになってしまった手紙を見て『焔姫』は笑みを浮かべる。ちょっと恥ずかしくなり俯いてしまう。



「そういえば、」



 と、『焔姫』が手紙を確認しようと動き始めると口を開いたのは『暴嵐』。顔を上げて目の前に座る『暴嵐』を見る。



「あの会場でどんな人よりも一番身を乗り出して見ていたな。面白い物でも見れたのか。」


「え、やはり此方を見ていたのはたまたまじゃないんですか?」


「まるで自分がその場にいるように見ていた。そんな感覚を感じ取ったので視線を向けたのだが。自分に向いていないと思っていたか。」


「ご、ごめんなさい?」



 まさかそんなに集中して見ていたとは自分でも自覚があまり無かったので人に言われると思い出して恥ずかしさから更に縮こまる。



「別に謝れと言ってる訳では無い.....それで、面白いモノは見つかったのか。」


「面白い、と言えるものかは分かりませんが攻め方とか技の使い方は勉強になりました。私は愚直に真っ直ぐに向かってしまうので罠とかそういう類いの仕掛け方って言うんでしょうか? 見て出来るものでは無いとは思いますが取り入れるべき自分の欠点は知れた気がします。」


「フフフ、こんな風に試験を見ている者は中々いないのだが、なあ『馬鹿』?」


「そうだな!! 面白い視点で良いでは無いか!! おい、『暴嵐』、またオレの事『馬鹿』と言ったな!!」


「それで、他に何を見ていたんだ。」


「無視すんじゃねえ!!」


「えっと?」



 完全に話が聞こえていないという様子で私の方から視線を逸らさないので私はちらっと『怪力』に目を向けると溜息を吐いて私に手で先を促すので『暴嵐』に視線を戻し、続きを答える。



「どの人が昇格に値するだろうか、という点でしょうか。」


「ほう、それでどうだったんだ。」


「私の予想というか、考えではもう少し多くの方が昇格に値すると思ってました。あ、批判とかじゃなくて。」


「別に何とも思わん。それで、」


「一応、予想していた人は全員昇格になりましたね。これで人数が合っていれば良かったんですけど、そこまでは上手く行きませんでした。」



 何でなんだろうと釈然とせず、うーんと悩んでいるとまた笑い声が聞こえる。



「本当に面白いな。まだ時間は有るし折角だから昇格すると思っていた人の名前を言うと良い。どうして選ばなかったか答えよう。」


「え、でも、良いんですか。」


「疑問を抱えたままじゃ今のモヤモヤが晴れないだろう。ただの時間潰しだから気にせず聞くと良い。先程までの自分勝手な発言の数々で疲弊しているんだ。何でも無い探求心がある話を聞いていた方が幾分か楽しい。」


「疲れているなら静かにしていた方が良いのでは.....?」


「それでこの場の空気に耐えられるならそれでも構わないが。」



 何も言えなくなった。確かに黙ってたらソワソワするだろう。気遣われていた事に気付きぺこっと頭を軽く下げ話を始める。何か指導されているみたいで師匠と話している感覚がある。



「あの罠は誰が張ったモノなんですか。」


「あれは、A級冒険者が自分達には作動しない様にと仕掛けたものを少し改良した。罠は気付かせるように置いていたから移動でもした時にダメージが入る様な仕組みにでもなっていたのだろう。」


「成程。罠、と言っても何もすべてを隠す必要性が無く攻撃による誘導、移動制限、自分の戦いやすい場所作り、ですね。うーん。先ずは仕掛けたタイミングが分からないし、仕掛け自体は気付かれない様にしなきゃいけない。」


「仕掛けるの自体をバレない様にするのには.....」




 そうして暫し話していると区切りがついたタイミングで『焔姫』が口を開いた。



「お待たせしました。と言う所なのでしょうが...。随分楽しく過ごせたようで何よりです。緊張は解けましたか?」


「大分! お気遣いありがとうございます。......そういえば何の用で来たんだっけ。」



 話についつい夢中になり本来の目的を忘れ思い出そうと小声で呟いてから首を捻る。えっと、目的......。



「それじゃあ、本題に入りましょうか。」



 そう『焔姫』が言ってテーブルに封が切られた手紙が置かれる。



「あ。」


「思い出したようですね。」


「結果はどうだったんだ?」


「予想はつくがな!!」



 「どうぞ。」と言って渡される手紙を受け取りながら、”結果”とはどういった意味だろうと疑問に思いながら中の手紙を取り出し開く。




 ”この手紙所持者をC級からA級に昇格させる。”




「...........。」


「生き残りにはそれ相応の評価が下るとは思っていたが....。此処までとは。」


「2クラスアップはギルド創設から初、だな!!!」


「私も見間違いかと何度か見直してしまいましたわ。変わりませんでしたけどね。」


「こ、こんな評価貰っても困りますっ!!」



 これは本心。特に何かをした訳でもないのに高く評価されても重荷になるだけ。断ろうと思っていたが、厳正な判断の元決められているから決定事項と言われ引けなくなってしまっていた。此処に入室した以上にプレッシャーというか重圧を感じる。受け取るしかない選択肢なのだが困惑し続けると溜息が聞こえてくる。そして、



「で、何時になったらいいのかしら? 未だ駄目なの? 賭けと約束をちゃんと果たしてもらわないと。」



 と急に砕けた口調に変わった『焔姫』。今迄丁寧に対応してくれたので、急な変化に私は驚いて見るが『焔姫』の視線は『暴嵐』に向けられている。



「げっ、しっかり覚えてんのかよ。最悪だ......はあ、そうだなー。割とパニック気味になってるし、何より改めてのこの状況で緊張が勝って気付かなそうだし。良いんじゃねえの?」



 次に『暴嵐』がそう言う。何が何だか分からない。頭がパニックになってきた。目まぐるしく変化するいろんな出来事があれば結果は見えている。



「「「あ。」」」



 そんな3人の声を最後に、私は頭がショートして気絶した。







 何故だか頭が凄く温かく感じる。意識がゆったりと現実に引き戻される感覚がある。...話し声も聞こえる。その声音と言葉から言い争っている様にも聞こえる。



「『馬鹿』のうるせえ声のせいだろ。」


「オレは『馬鹿』じゃないと何回言ったら分かるんだ! 『暴嵐』!! そもそもこのきっかけは二人のせいではないのか!!?」


「はいはい、分かったから、『怪力』。今は静かにして。その子が今度こそうるさくて無理矢理に起こされちゃうじゃない。」


「! す、すまん。」


「おー、『馬鹿』も声を小さくするって出来るんだなあ。俺、感心した。拍手。」


「ちょっと、『暴嵐』! 何で煽るのよ。」


「....んん?」


「「「!!」」」



 目を開けると此方を覗き込む一人の男性。ボーっとしている頭でその人を凝視する。緑の髪、モノクルを掛けて.....ん!!?



「...ごめんなさいっっっ!!!!」



 即座に起き上がりソファの上で正座になって土下座して謝る。あの『暴嵐』に膝枕されてちゃ色々とやばい。



「別に俺が勝手にそうしただけだからそんなに気にする事無いが。少しは頭が冷えたか? よく周りを見てみると良い。」


「...え?」



 そう声を掛けられ、顔を上げてじっと3人を見る。緊張で今迄きちんと見れていなかったが、何か既視感....?



「まあ、少し気付いたみたいだし及第点って事で、良いわよね? ()()()()?」


「...『焔姫』、いや()()の師匠になったつもりは無いのだが?」


「....え、サラさん?」



 ハイエルフの姿をしていた『焔姫』は姿を一変させる。赤い長髪になりその髪がたなびく。尖った特徴的な耳も人間のものに変わる。



「.....え、え? それじゃあ.....」



 そう言ってサラさんの隣に座っている大男の『怪力』に目を向ける。



「残念だが、オレはそういうのは使って無い!! が、一度街で会っているぞ! 嬢ちゃんの師匠様に止められたがな! ハッハッハ!!!」


「お察しの通り、『怪力』はヴェロックよ。」



 驚き声すら出なくて口がパクパクとしてしまう。という事は、と最後に『暴嵐』に目を向ける。そしてよく見た事で気付く。



「それ、は。」


「贈り物は大事にするタチだからな。失くさない様にずっと身に着けていたが気付かなかったか?」



 真ん中に黒い真珠が埋め込まれた十字架のネックレス。私の師匠で、大事な人の為にこの街で作ってもらい、プレゼントした特注品。モノクルを外すと紅目がはっきりと見え、髪や左目の色も元に戻る。



「『暴嵐』こと、ユリナの師匠様だ。」



 そう楽しそうに笑ういつも通りの師匠を見て再び固まってしまうのだった。








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