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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第6章
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55話 S級昇格試験開催と1日目1



〝遂に始まりました!! 一年に一回のギルドのイベント!! その名も『S級昇格試験』!! 伸し上がった数多のA級冒険者によるS級への昇格のチャンス。毎年試験の内容は変わっており、今年はどういったになるのかは公開されておりません。毎年公開される年とされない年とありますが知らないというだけでこんなにワクワクするものは無いですよね! 開催宣言は毎年この方たちから行われるのでお呼びしましょう。先ずは全ての冒険者ギルドの統括マスター『怪力』様と補佐官『焔姫』様です!!〟



 入場してくるは『怪力』の二つ名を持つ大きな男の人、機人が豪胆に、『焔姫』の二つ名を持つ女性、ハイエルフが悠然とした態度で入ってくると会場がより一層盛り上がりを見せる。その熱気で此方がやられてしまいそうだ。入ってくる二人を見ていると司会役が喋りだす。



〝SS級のお二人の入場と有って会場は更なる盛り上がりを見せています! 我らが英雄様の内のお2人。強さというのが分からない私でもこのお二方は特別だというのが分かります。が、しかしです! こんなものでは終わりません!! お二方は目にされる方も多いかもしれませんが、もう一人ギルドの頂点に君臨し未だに膝を尽かせることが出来ない唯一無二の存在、SSS級の『暴嵐』様です!!〟



 そうしてコロシアム内に入って来たのは緑色の髪で少し耳が尖っている、確かハーフエルフだった気がする。そして、右目には片眼鏡、所謂モノクルが掛けられている。余裕のある態度で長い髪をたなびかせながら入ってくるその姿で会場の熱気、歓声は最高潮に達する。



〝流石の人気です。それは勿論。『暴嵐』様はこのイベント中しか顔を拝見する事が出来ず普段はお見掛けする事の出来ない存在なのですから!!!〟



 司会役の人が興奮気味で捲し立てる。そしてスッと『暴嵐』の男性が軽く手を上げると一気に会場は静まり返った。



「ここに『S級昇格試験』の開催を宣言する。」



 静かな美声で会場に響き渡った声に誰もがうっとりしている。かく言う私もぼーっとしてしまった。理由は美貌に見惚れたというかそういう訳でも無いんだけど。


 未だに静まり返る会場で『焔姫』の女性と『怪力』の男性も続けて言葉を発する。



「全力を出し切って下さい。」


「良い戦いを是非見せてくれよな!!」



 言い終わると再び歓声の嵐に巻き込まれる。その歓声の中3人は一旦退場して準備を整える様だ。と言ってもSSクラスの二人はVIP席と称しても過言ではない見やすい位置にSSSクラスの男性は再びコロシアムに戻って来た。そしてSクラスを目指すA級冒険者も入ってきて『暴嵐』がコロシアムの中央で手を上に掲げると空から何かが落ちてきてそれをキャッチする。


 その手に握られていたのは一本の緑色の弓。短弓ではなく長弓。矢は無いが良いのだろうか。



〝此処で情報が入ってきました。今年の試験内容が! ズバリ今年はシンプルに『暴嵐』様とA級冒険者による戦いだそうです。そして平坦なコロシアムも大きく様相を変える様です!〟


 そう司会役が言うと大きな地響きが起きコロシアムの様相が大きく変わる。密林や雪原、砂漠など色々なステージが一つのコロシアムに存在している。そしてそのステージの中央に佇んでいるのは『暴嵐』。A級冒険者は皆コロシアムの壁際に居たのでそれぞれのステージに分断されたようだ。



〝『暴嵐』様に対して策を練り闘い抜いた者を昇格させるようです! 制限時間はなんと夕刻を迎える迄! 今から数時間は有りますが休憩をとりながら上手く立ち回る事を要求される様です。それではそろそろ開始の合図をさせて頂きます。因みにですが此方に観戦に来ている冒険者様は自分の身は自分の身で守って下さいね。〟



「.....え?」



 私の疑問の声は歓声に掻き消され、遂に開始の合図がされる。



〝それでは、今年の『S級昇格試験』開始です!!〟



 開始の合図とともに壁際に居たA級冒険者は『暴嵐』がいた中央へ向かっていく。幾らかの人はパーティーを組んで行動しているが特にルールが定められていないので駄目では無いのだろう。が、数十人いるA級冒険者の攻撃を一斉に受ける筈だがどう回避するのだろう。と考えていると最初の冒険者が中央に辿り着く。



「初撃はもらった!」


「....。」



 何も喋る事無く弓という遠距離攻撃をしてくるであろう『暴嵐』に対して近接戦に持って行き剣を振るったが既に『暴嵐』はその場にはおらず姿が消えてた。



〝皆さん上です! 『暴嵐』様は上に回避され、来ます! 『暴嵐』様の弓裁き!!〟



 興奮した様子で司会役が解説すると『暴嵐』は空を切って弓を構えると魔力で出来た矢を放出させる。しかも一本でなく近くまで迫っていた他の冒険者も打っていく。全ての矢はA級冒険者の左肩に突き刺さる。血も出ないし刺さった矢は直ぐに霧散したが痛みだけは有る様で左肩を抑えて痛みに堪える人もいる。防御しようとした者もいるが魔力で出来た矢に対して物理防御の効果が有る訳がない。


 そして上に回避した『暴嵐』はもう一度同じ場所に着地し静かに佇む。構えが無く、ただ佇んでいる様に見えるが一切の隙が無い。多分本気を出せば一瞬で全員を気絶させる事等容易いと思う。そう思える強さが滲み出ていた。強くなったと自負していた私が少し震えていた。さっきのぼーっとしてしまった理由もこの強さ故に起きた行動だった。



 そんな事を考えていると『暴嵐』はよく通る声で一言。



「先ずは一発目。」



 そう言って弓を空に向けて放つ。私は多大な魔力の反応に咄嗟に上を向きそしてその魔力が飛び散り観客席に降って来るのを感じ防御の魔法を咄嗟に出す。魔術を唱える暇なんてなく防御に徹する。天野君たち4人も宣言が有った事もあり防御出来ていたようだった。そして周囲から幾つか叫び声が聞こえる。その内容は最初に配られた冒険者の証となるバッチの破損。弁償確定に怒鳴り散らかす人も出てきたが受付、司会役の言葉を思い返すと「守り抜け」と言っている事にも繋がる。



「今のは初撃だ。次からが宣言無しに攻撃が飛んでくると思え。」



 そう『暴嵐』はA級冒険者を相手取りながら言う。近接攻撃を加えようとしてくるものが多い為、弓がまばゆい光を纏って一本の剣に変化する。その一本の剣だけで全ての攻撃をいなし隙あらば反撃を加えていく。全て浅い攻撃にとどまっていたけれど。エルフなのに剣も扱うのかと思っていたが其処はハーフ故なのかもしれない。



 試験が始まってから1時間。もう1時間経ったとも言えるし、まだ1時間しか経っていないともいえる。既にA級冒険者の息が上がって来ており密かに休憩を取っており、冒険者として観戦しに来た私達にも何十発の攻撃が既にされていた。防御出来ず散っていくものが多い。全ての攻撃が冒険者が身に着けているバッチに一直線に向かってくるのだ。A級冒険者よりも余裕はあるもののSSSクラスの攻撃が飛んでくるのだ。防御を一回するだけでもかなり消耗させられ、天野君と美奈ちゃんは未だに防御に成功しているが千春ちゃん、優君は既に割れてしまっていた。



「もう1時間、いやまだと言った方が正しいかしらね。A級冒険者が攻撃してない時には攻撃の手を緩めているみたいだけどいつまでそれが続くか分からないわね。」


「気を抜けないね。気合入れなさないと。まだ昼にも達していないのに夕刻までだもん。」



 深呼吸をしながら試験の様子を凝視する。大きな動きはない。寧ろどの人も息を潜め隙を伺っているようだが、多分『暴嵐』に一生隙なんて生まれないと思う。思う、ではなく割と確信に近い。だってあの英雄たちだとすると魔王を討伐する為に数年を要したって聞いてる。その数年気を張り詰めていた筈だ。そんな中を生き抜いた彼らに隙なんて生じる訳....!!



「「「「今だっ!!」」」」」



 『暴嵐』が少し息を吐いた瞬間隙が生まれ息を潜めた冒険者が一斉に攻撃に転じる。



「.......残念。」



 その一言の呟きは攻撃に転じたA級冒険者に届く事は無かった。どさっと倒れ込む数人の冒険者に囲まれ悠然とした態度で立っている汚れ一つない『暴嵐』。何が起こったか大多数の人は見えていなかったと思う。そもそも『暴嵐』は一歩も()()()()()()のだから。


 倒れ伏している冒険者はピクリとも動かないが全員痺れて動けないのだろう。私でさえ一瞬しか見えなかったが元々地面には罠が張り巡らされていた。踏む、若しくは通過によって電流が流れる仕組みだったと思う。とてもじゃないけどあれは食らいたくない。見えてた分余計に顔を引き攣らせてしまう。



「何が起こったの?」



 そういう千春ちゃんに私は佇んだままでいる『暴嵐』の周辺を凝視して罠の類いを探しながら答える。



「『暴嵐』のあの男の人の周りに色々罠が仕掛けてある、と思う。探しきれてないから確定で言える事では無いけど、ほぼ間違いないと思う。仕掛けた人は誰かは分からないけど自分の周囲に張る位だから自分自身で仕掛けて罠に嵌めた...? .........でもそんな動き一切無かったし。参加者の誰かと考える方が妥当?」


「おーい??」



 ブツブツと考え事をしながら未だに会場の様子を片時も目を離さずに見ていたので話し掛けられても気付くことなく考え事に没頭していた。すると表情を一切変える事が無く周囲のA級冒険者を見ていた『暴嵐』の視線が変わり、此方、私を見た気がした。何となく視線が合った気がしてじっと見てきていた『暴嵐』はフッと口元を緩め笑ったようにも見えた。次の瞬間にはもう視線をA級冒険者たちに変えていたので本当に一瞬の事だし私を見ていた訳でも無いと思う。


 自意識過剰だと思いながら凝視し過ぎて視線を追ったのかな? とか色々と考えていたが周囲にいた女性たちの歓喜の声で自分にじゃないなと我に返り試合に再び目を向け、見落とさない様に集中し直した。



 そしてあれから4時間経過。此方にも度々攻撃が飛んでくる中私は未だに防衛出来ていた。残り1時間程と迫ってはいたが....



〝...これにて『S級昇格試験』を終了いたします!! 予定時間より早く終わってしまいましたがこの後昇格者の会議があるそうなので発表が行われるまで小休憩を挟みたいと思います!! 1時間程外の屋台などを回って楽しんできてはいかがでしょうか!? 因みにですが、どんな理由であれ犯罪を起こせばその場で様々な資格などを喪失しますのでご注意くださいね!! それでは発表の場でお会いしましょう~~!!〟




 高らかに言い切ったその言葉によって会場は試験前の様相に戻っていく。戻ったコロシアム内を悠然と歩き退場していく『暴嵐』を見届けると多くの人が一旦外に出ていきお祭りを楽しむ様だった。私たちも試合の話をしながら1時間弱屋台などを回って楽しみ早めに会場に戻る。早めに戻ったつもりだったが多くの人が待ちきれない様子だったようで6~7割ほどは既に会場内にいた。私たちも席に戻ろうと歩いていると反対側から歩いて来た男の冒険者集団の一人とぶつかってしまった。



「すみません。」


「ああ? そんだけかよ。誠意見せろよ、そうだなあ。例えばそのバッチをくれるとか、さ? あ? お前、受付で対応良くしてもらってたやつじゃねえの? 試合中も何だかんだいろんな奴がお前に声を掛けてたよなあ? 一体どんなことをすればそんな風にしてもらえるんだ? バッチの効果かよ?」



 明らかにぶつかりに来ていたのにも関わらず下卑た笑い声をあげながら手を差し伸べてくる。千春ちゃんがキッと彼らを睨みつけるもののこういう人たちには逆効果。それに気付いたのか、天野君たちも無視して行こうと促すが彼らはそれを許さなかった。挙句の果てに暴力を翳して来ようとしてきた。


 冒険者だけ有って拳に少しの魔力を乗せて本気でやってやろうという気持ちが分かる。まさかこんなことになると思わず身構えるのが遅れてしまいニヤニヤとした笑みを浮かべる男の拳が自分の顔に向かって「これは、間に合わない。」と察し目を閉じたが何時まで経っても顔に攻撃が来ないので少しずつ目を開けると男の腕は横から伸びてきた細い腕によってしっかりと握られピクリとも動いていなかった。押す事も引く事も叶わず私は男を抑えている人を見る。


 後姿だったがその姿で誰かが分かってしまった。



「....ああ。やはり動いた冒険者がいた。.....分かっている。『権限発動。実行するコード”剥奪”』.....D級か。低俗な者にはそれ相応の判断しか付かないと思っていたが。..........ああ、そっちに送るから手続してくれ。」



 男たちの冒険者の証となるギルドカードが緑の髪の少し尖った耳を持つ男性の空いている手の平の上に浮かんでいる。誰かと連絡を取っていると握っていた男の手を離しその空いた手で指を鳴らすと男たちの姿が一瞬で消える。



「お祭りごとになるとこういう輩が良く現れるんだ。大丈夫だったか?」


「...........え、あ、はい。ありがとうございました。」



 此方に向き直り私に声を掛けるは右の目にモノクルを掛けた誰もが姿を見た人物にしてギルドの最強。『暴嵐』。



「それは何よりだ。......ああ、男どもは外に出した。....成程手続きはもう終わったのか。ではカードは.....了解した。」



 『暴嵐』に流麗な動きでお辞儀をされたので返すと少し微笑んだ後普段の真顔に戻り観客席からコロシアムの方へ跳んで戻っていった。着地後男たちから取り上げたカードを燃やしていた。燃え尽きたタイミングでSSクラスの二人も出てきてコロシアムは再び様相を変え表彰式の様な会場に様変わりする。そして立派な椅子が3つ。そこに向かって歩いて行き腰を掛ける3人に会場は様々な歓声を送っていた。



〝少し早いですが昇格者を発表したいと思います。此処からは全ての進行は彼らが行ってくださいますので一言一句聞き逃さない様によく聞き耳を立てていて下さいね!!〟



「先ずは今ほど少し不埒な輩がいたので排除させて頂いた。冒険者は自由をモットーにしてはいるが自由とは何でもやっていいと同義ではない。その事も理解せず勝手な理論で暴挙を働いた者どもは処分した。この処分の意は何も”死”ではない。ただ、..........冒険者として登録も、活動も出来なくなる。が、この試験中は他にもルールはある。毎年参加している者や事前に配布されている資料を読めば分かる事だが、俺たちの権限だけで全てを決定し覆す事が出来る。例え、その冒険者が王の采配、領主の推薦でなった者であったとしても、だ。この期間だけでの絶対的ルールであり他の街よりも許可はもらっている。......今も何かしら行動を起こそうとしている者も俺たちは把握しているため潰す事は容易いがこれを聞いてもまだ実行に移ろうとするか?」



 『暴嵐』が静かにそう言い切ると心なしか会場の敵意が少なくなった様に感じる。が、少なくなっただけだ。完全に消えていないと思って少し身構えていると疎らに立ち上がる人が出てきてそれぞれに武器を構え周囲の人間を見境なく襲おうとし始めた。



「注意は受け入れられないか。」



 悲鳴が上がる会場に一つの音が響き渡る。その音の出所は『暴嵐』。手を一回だけ叩くとその音はよく響き次の瞬間には立ち上がり暴動を起こそうとした者の姿は何処にもなかった。



「『権限発動。実行する、コード”剥奪”及び”犯罪者の監獄への収容”』」


「これで分かったでしょう? 皆様方も自由の意味を取り違えず節度ある行動をして冒険者として胸を張れるようにしなさい。」


「切り替えて昇格者の発表でもするぞ!! 盛り上がりが無いとつまらぬのだから晴れてS級になれるものを祝福してくれ!!」



 しーんとしていた会場は一気にボルテージが上がりビリビリとした空気感が肌に感じるほどに熱気に包まれる。流石の対応と強さに感嘆しながら私はどの人がS級になれるかというのを観戦しながらも自分で判断してみたので強さの見極めが出来ているか確認しようと楽しみにその時を待つのだった。






 私の直ぐ横の陰から陰謀が迫っている事を知らずに....。






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