54話 街での出来事と開催まで3
「結局[無]属性は無かったですねー。一番便利そうで欲しかったんですけど。まあ普通のルールに縛られない属性色ですし仕方ないですかね。」
「簡単に獲得されちゃ先人たちは涙を流すだろうよ。」
「そうですね、此処に先人たちに涙を流させた張本人いますしね。」
「何処だ?」
「ふざけてるのか本心なのか分からないのがまたイラっと来ますね。」
「?」
絶対本心だなと思いながら白い目で見ていると「何だ?」と聞かれたので「何でも無いです」と答えたら釈然としなかったものの引き下がった。
「明日はどうすんだ?」
「4人の様子を見ながら依頼の手伝いでもしてこようかと思います。」
「ちゃんと時間気にして帰ってこい。そして、ヴェロックには気を付けろ。大男だから遠くからでも気付くだろ? 何とか逃げるか、隠れるかして会うなよ。」
「わ、分かりました。」
私の肩をぐっと掴んで力説する師匠に気圧されながらも何度も頷くと心配そうにしながらも最後にブツブツと呟きながらも引き下がった。
「ところで、サラさんもそうですけど、ヴェロックさん?でしたっけ。どういった関係なんですか?」
「一応サラもヴェロックもギルドの職員であり、現役の冒険者だ。昔二人でパーティーを組んでいたんで少しお邪魔した事有るんだ。サラも攻撃系だし、支援が欲しかったのだろう。だから少しの間支援職としてサポートしてたっけ。ヴェロックが突っ込むもんだから後始末をサラと俺がって感じで何とかやってたかな。」
「という事はお二人とも相当強いんじゃないですか? それこそSランク位は。」
「さあ? ランクは聞いた事無いな。」
今度調べてみようと思いながらもSランク以上は名前よりも二つ名で呼ばれることが多いのでランクが高いと本人か調べようがないなと思いながらも顔写真と名前付きで紹介されている事を祈りつつ次の日4人と一緒にギルドに行ったときチェックを忘れない様にしようと心にメモを書き止め、就寝したのだった。
次の日、冒険者ギルドに早朝から出向き4人と何とか合流し街の外で魔物を狩りながら私のノルマを達成した後はギルドに置いてあった『S級以上 冒険者特集!!』という本をめくる。サラさんと一応ヴェロックさんも見つける為ぺらぺらとページをめくっていく。が、中々見つからない内にSSランクとSSSランクのページまで来てしまった。凄く強そうだったのにS級に載ってないのかと少し残念に思いながらSSランクの特集をじっくり読む事にした。書かれている事は先に知った情報と何ら変わりない。というかSSランクとSSSランクの3人は名前が載ってないんだなあと改めて隅々まで見て探したが何処にも書かれていなかった。ファミリーネームは載っていたので一応頭の中にメモしておこうと思う。
『焔姫』は、”ファイアス”。『怪力』は、”リキラル”。そして、『暴嵐』は、”ミル”。
名前は何て言うんだろうなあと思いながら姿絵が載っていない本をニヤニヤして見ていると、
「何ニヤニヤしてるの?」
「そんなに面白い事書いてあった?」
と、討伐が漸く終わった4人が戻ってきて話し掛けて本を横から見てきていた。本を読むのに没頭して気配に全く気付けず驚いてしまった。
「まあ、面白い事、というか、今度の『S級昇格試験』で出てくるこの3人に合えるのが楽しみだなって。どんな人かまだ先なんだけど早く会ってみたいよ。」
「百合奈ちゃんは何だかんだいって強運の持ち主だから案外もう会ってるかもしれないね!」
「ええー、まさかー。そんな強い人だったら見落とさない自信あるからまだ会ってないと思う! 早く試験始まらないかなあ。」
この後休憩を挟むと言って皆で試験についてだったり英雄たちと噂される彼らの姿を思い浮かべながら楽しく過ごし、休憩を終えた後は依頼をクリアさせ、なんてことはない楽しい時間を過ごす事が出来た。
因みに魔物はエルシリラよりも強力に感じた。とは言え今の私のレベルで苦戦する相手はいなかったので縛りプレイという名の修行を自分で考え〈副〉属性と魔術のみで倒す様にした結果、発動にかなり時間が掛かったりイメージが上手く行かなかった風も大分形になってきて満足の行く結果になった。
「どんどん強くなっていくな。」
森に出かけて行ったのを見ていた俺は遥か上空から様子を眺めていた。その横にはもう一人。
「私の後輩は随分強いみたいね。要領悪そうな教え方していると思ってたけど案外そんな事もなさそうね。」
「爺と言い、俺の事なんだと思ってんだか。」
「自覚あるでしょう?」
「.......。」
目を逸らすとカラカラと楽しそうに笑うサラ。
「封印を見て来たわ。何の綻びも無いし彼女らも元気そうにしてたわ。」
「上手くやられてんのか。『魔の叡智』っていう組織がどこまで大きいかも掴めてねえし何もかも後手に出てる感じで苛々すんだよな。前から前兆は有ったのに何でその時に調べなかったと思っちまう。後悔しても意味が無い事も分かってるから余計にどうしようもなくて嫌になる。」
「今更どうこうしようと考えても無駄なんだから何が起こっても大丈夫なようにっていう考えに切り替えておきなよ。全部やられちゃったんだから直ぐに何かを起こしてくるわ。」
「全部、か。」
ユリナ達の様子を眺めながら対策を考える。
「ノトリア、らしくないわよ。」
「...俺らしいって何だっけ。」
「豪快で愚直に真っ直ぐな男。ヴェロックとはまた違った阿呆。」
「酷い言いようだな。」
「はっきり言った方が分かりやすいでしょ。」
「確かにそうだ。」
考えるのも確かにいつもやってたことだが考えても結果が出ない事は何時も成り行きに任せ何とかしてたのを思い出す。クツクツと笑いながら考えを放棄し、笑みを浮かべるとサラもつられて笑う。
「やっとらしくなったわね。」
「おう、サンキューな、サラ。」
「じゃあ、ちょっとだけ手合わせしてくれない?」
「...は? 何でじゃあになるんだよ。まあ、別に良いけどよ。お互い手加減な。」
「分かってるわよ、ノトリアの本気だけで世界が崩壊するわよ。それに私だって本気を出したらノトリアとぶつかり合って莫大なエネルギーが生まれて危険なのは一番承知してるつもりよ。」
「んじゃ、軽くやりますか。」
目つきを一瞬で変えお互いに魔法を打ち合ったり接近戦に持ち込んだり空中で暫く闘いを続けていた。時に雲を吹き飛ばし空気が揺れる中手加減しながら自分たちの気が晴れる迄続けていた。
「んー?」
「どうしたの百合ちゃん?」
「なんか上空がうるさい気がする。見えないから何とも言えないけど何かやってる気配がするような?」
「? 俺たちには分からないけど、確かに急に雲が晴れたりしている気がしないでもない。」
「....うん。僕だけだと思ってたけど気のせいじゃないみたい。」
そんな会話が下でされているとは知らず数時間ぶっ続けてやった結果、癪に障るがヴェロックから注意を受ける羽目になった。サラも俺も話半分に聞き流し先程の戦闘を振り返って反省会をしていた。別に意思疎通をしていた訳じゃ無いけど何となくお互い感じる事は同じだったようでヴェロックが視線を俺たちから外した瞬間アイコンタクトで話して注意を受けてる最中というのに戦闘の余韻を楽しんでいた。結果、その密かな反省会もバレてヴェロックの大声によって叱られ鼓膜をやられるのだった。回復魔法で一瞬で治せたが聞こえないと言って途中で説教をやめさせる判断は俺だけじゃなくサラも同様の考えで「ちょろいな」とお互い笑っていた。
そんな感じで1週間があっという間に経って今日はユリナが一緒に街を観光したいと言い出したので開催まで5日と迫った日、割と早い時間から街をぶらぶらと歩いていた。別に街で何かをしたいという訳でも無くただ一緒にいたいといわれたので付き合う事にしたのだ。俺も何かをしなきゃいけないという用も無かったのでただ街を歩くだけでも割と楽しんでいた。
そして街を歩いている途中で入った雑貨店でユリナは俺に贈り物をした。いつものお礼といろんな贈り物のお礼と言っていた。自分じゃ高価な物は買えないし貰ったものからしたら釣り合わないけどと前置きを置いたが俺は貰った真ん中に黒い宝石が埋め込まれている十字架のネックレスを貰ったその場でつけて見せる。
「ありがとな、大事にする。」
驚いたが本当に嬉しかったので素直にそう答えるとユリナは目を逸らした。その行動の意味を理解できなかったが今日という一日を凄く楽しく過ごす事が出来た。
そして、『S級昇格試験』というお祭りが開催される。
「本当に開催までの1週間で人が急に増えましたね。宿も追い出されるような人いたし師匠の言った事が理解できました。」
「言っただろ? ずっと招待されてんだから分かってるに決まってるだろ。」
「そういえば招待されてたんでしたっけ。忘れてました。」
私はあの日渡した時からずっと身に着けてくれている師匠の首元のネックレスを眺めながらそんな他愛もない話をしながら4人と約束していた集合場所に向かって歩いていた。ごった返す人の波に飲まれない様にと手をしっかり握ってくれる師匠に付いて約束した場所に向かうと既に4人はいて合流して開催される街の観光名所の一つとされるコロシアムに向かって歩いて行く。
因みにだがバルディアを拠点にした冒険者家業によって天野君たち4人はFからDに、私はDからCになっていた。依頼自体がかなり難しい為報酬もそれなりに高く懐も大分温まった。支払いをしたのにも関わらず、だ。
「此処までで良いだろ。此処の列に並んでればその内自分たちの番が回ってくるだろうから受付しちまえ。ユリナはもらった手紙を出しとけ。じゃあな。」
言うだけ言ってそそくさと立ち去ってしまった為、声を掛ける事が出来なかった。師匠も招待されてるなら此処で受付するんじゃないのかと思いながらも言われるまま順番が回ってくるのを4人と会話しながら待っていた。そして順番が回ってきて先ずは4人が受付をしていたので私はそれを眺めていた。
「此方をお受け取り下さい。こちらの自分の左胸に着けて下さいね。それを付けていると冒険者として見られます。『S級昇格試験』本線終了後回収します。もし其方を紛失したり壊してしまっても此方は一切の責任は負いません。弁償していただきますのでご容赦ください。それなりに弁償額が掛かりますのでご注意ください。」
その会話後、私に目を向けたので最初にギルドカードを見せる。
「お預かりします。確認したしますのでお待ちください。」
見た目はパソコンの様な機械でギルドカードを読み取っている様だった。それを終えるとバッチが出来てくるので先程と同じ説明を受け、バッジを渡される前に私は手紙を渡す。
「すみません、これギルド?からだと思うんですけど。」
「確認したします。」
中を開けて読んでくと受付のお姉さんの手が震えてくるばかりか焦った様な表情に変わるが、次には胡散臭い様な表情を向けてくるのでその意味が分からず戸惑う。どうすればいいか迷っているとお姉さんが左耳に手を押し当てた。するとみるみる顔が青ざめていくのが分かる。
「申し訳ございません。『焔姫』様、『暴嵐』様がお認めになった方を蔑ろに扱おうとしてしまいました。どうか、お許しください。」
「え? え? 状況がちょっと分からないんですけど。」
「敬語など私に使わないで下さい。特別に認められたお客様ですので何なりとお申し付けください。つきましては、お部屋の方へ案内しますので、........不要ですか、承知しました。」
「んー?」
「ではご自由にお楽しみください。」
「ありがとうございます...?」
急に仰々しい態度を取られ戸惑いながらも待っていた4人と中に入ると既に多くの人が盛り上がりを見せていた。コロシアムは外から見た時よりも広く感じ何かの魔術を使っているのかと思える程だった。招待された師匠は何処に居るんだろうと座る席を探しながらきょろきょろと周りを見ていた。結局開催宣言前までに見つける事が出来ず『S級昇格試験』は始まってしまったのだった。
そして想像もつかない事が起きたのだがそれは後の事で、受付さんのバッチについての言葉をよく聞いていれば何か含みが有る言い方だと気付けただろうに少し浮かれて気付かなかったので苦労する事になった。更にはあの一通の手紙だけで私がさながらVIP対応の様で戸惑ったのも更に溜息の回数を増やした。
俺は誰にも見られていない事を確認しながら姿を変化させ、コロシアムの裏口から入ろうとすると警備兵に止められたので息を漏らしながらギルドカードを提示すると恭しい態度に変わる。そのやり取り後に『焔姫』が来て中を案内される。『焔姫』は俺に失礼な態度を取ったとしてクビにするとか言い始めたので「どうでもいい」と言うと、思いとどまった。
後ろから警備兵に深々と頭を下げ続けられていた。案内に来たと言ってはいたが俺は場所位知っている。特に気にすることなく毎度のことだなと思いながら一つの部屋に入る。そこで、自分の服装含めて身支度を整えて会場の歓声をぼーっとしながら聞きながら体を少し解す。
「さて、年1のゲームを楽しもうか。」
「気楽でいいわね、『暴嵐』は。」
「気楽でいるのは俺だけじゃないけどな。」
「楽しみだな!!」
「『怪力』はいつも通りでしょ。」
「それが良いんじゃねえか。まあ、適当にやって楽しもうぜ。」
「きちんと見定めてあげるわ。」
「勿論、今年もド派手に本気でやるぜ。」
「『焔姫』と『暴嵐』は何やら取引でもしてたのか!!? まあ盛り上げようぜ!!」
賑わう会場に向かって俺たちは歩き出す。毅然とした態度で。




