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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第6章
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53話 街での出来事と開催まで2



「...何か久々に見た気がするなあ。」



 バルディアに着いた次の日。未だ疲れは残るものの久々にゆっくり休めるという事で昼前まで爆睡してしまった。慌てて起き上がりベッドから出ると、ベッドが軋む音が近くから聞こえてきて視線を向けると同じ部屋にもう一つ存在するベッドの端っこに寄って寝ている師匠の姿が映る。落ちそうなんだけど大丈夫だろうか。それにしても眠れないと言っていた時期が嘘の様に静かに寝ている。



「...うるせえ、俺に構うなあー....」



 ....静かに寝ている。(大事な事なので2回。).....どういう夢を見たらそんな事言うんだろうか。

 暫く眺めていると予想していた事が起こる。



---ドカンッ!!



「う゛っ....」


「フフフ.....」



 思わず笑ってしまう。この人は何回ベッドから落ちるのだろうか。というか落ちても微動だにせず寝てるんだけど。眠りが深いにも程が有るでしょう。仕方が無いので起こす事にした。



「師匠~。朝、じゃなくてもう昼前ですよ~。床で寝てると体痛くなりますよ~。」



 体を揺らしながらそう声を掛けると瞼が少し震え少しずつ目を開けていく。いつもより細く開けられたオッドアイの瞳に私が映っているのが分かる。



「ああ~? 怠いからもう少し寝る。」


「せめて寝るならベッドの上で寝ましょ? 私は街の方に行ってきますね?」


「お~。了解.....」



 魔法で自分を浮かせてベッドに戻るのを見ながら街の方に行くために準備をするために師匠の元を離れようとした時、服の裾を掴まれ次の瞬間、布袋を渡された。



「これ、何ですか?」


「お金。お休み。」


「え、まだ持ち合わせありますし大丈夫ですってもう寝てるし!!」



 渡すだけ渡してまた眠りにつく。今日一日寝ているつもりだろうか。取り敢えず渡された布袋の中を確認しておくとお金だけでなく4つ折りにされた紙が入ってたので取り出して読むと、



「注意事項...?」



 その紙にはこの街での守るべきルールや注意点が簡単に書かれていた。一通り読むと下に【追記】として要注意人物と題されて似顔絵?というより写真に近い形で一人の大男が映っていた。



「誰なんだろう。まあいっか。一応覚えておこう。」






 準備をして宿を出て街をぶらぶらと歩く。目に留まったお店に入ってウィンドウショッピングをしたりして時に街の名産を聞いたりして情報を収集しながら何時ものお礼として師匠への贈り物を考えて歩いていた。


 やっぱり全体的に物価が高いのだがまだ開催まで日は有るしギルドのクエストをこなしながらお金を稼いでおこうと決心する。自分には手が届きそうな値段で、出来ればオーダーメイドで唯一の物を作ってもらいたい。立ち寄った一つの雑貨屋でその条件を満たせたのでどんなデザインかを伝えながら作成を頼んできた。お金は用意できたら払いに来るという契約書まで書かされたけど準備は着々と進められているのでクエストをどんどんこなしてお金を貯めなきゃ。


 そうして2~3時間程街をぶらぶらと歩いて夕暮れ時になって来たので帰ろうとした。注意事項に夜は出歩かない方が良いと有ったので早めに帰ろうと思っていたのだが、目的は半分くらいは達成したと嬉しさからか、街の雰囲気が楽しくて宿から離れすぎてしまった。



「急がなきゃ。」



 そう呟き走ろうと踵を返した瞬間人とぶつかってしまった。



「ごめんなさい!」


「嬢ちゃん、気を付けなよ。」



 下げた頭を上げるとその顔に見覚えが有った。どこで、と思ってポケットに手が触れかさっという音がなった事で気付く。そういえば4つ折りの紙をしまったんだった......あ、



 【追記 要注意人物】



 冷や汗が流れた。










「思ったより寝過ぎた。もう夕方じゃねえか。」



 俺は起き上がり体を伸ばし、部屋を見渡すがまだユリナが帰って来てない事に気付き溜息を漏らす。



「全く何のためにメモを渡したと思ってんだ。」



 頭を掻きながら気配を探ると宿より大分遠い場所にいる事が分かったので身支度を一瞬で済ませ宿を出る。この街は朝や昼の太陽が出ている時間こそは賑わい楽しい雰囲気があるものの、夜になると特定の地域では治安が悪くなることが有る。


 その特定の地域は決まっているが数か所の内のランダムで一つなので中々当てる事が難しかったりする。が、治安が悪いと言ってもルールの範囲内で気取るくらいなのでそんなに不安視する事では無いものの、外からやってくるとそれを恐ろしく感じるものも多い為、念のためという事でユリナには伝えたのだが。



「なーんか、嫌な予感がするなあ。」



 そんな予感を抱えながら少しスピードを上げて向かう。夜の方が人でごった返すので隙間を縫って進んでいくと気配が近づいてきて声を掛けようとしたら、会いたくない人物もいる事に気付く。思わず顔を顰める。



「えっと、あの。」



 完全に硬直した状態でユリナがタジタジで何かを言おうとしているので俺は大男を見て深々と溜息を吐いて向かい合う二人の所に近づく。



「おい、ユリナ。メモをちゃんと読んだなら普通帰って来るだろう? 何してんだ。」


「!! 師匠!」



 俺の姿を見るやいなや俺の後ろにさっと身を隠すユリナを笑いながら見て大男を睨みつける。



「むかつくからぶん殴っていいか? 何で此処に居んだよ、ヴェロック。」


「相変わらず理不尽な奴だ!」


「....通報するか。」


「またオレの事馬鹿にしてんだろ!!? お前の考えなんてバレバレだぞ!!」


「うるせえな。少し声のボリューム下げろよ。」


「そもそもその嬢ちゃんがぶつかって来たから声を掛けただけだぞ!!」


「...お前が大きいのが悪い。」


「なんだとっ!!」



 ハッと鼻で笑い飛ばすと奴、ヴェロックの逆鱗にちょっと触れたらしくドスン、ドスンと聞こえてきそうなそんな足取りで近づいてくるので何となく手加減して腹パンを食らわせる。



「効かねえよ!!」


「物理が聞かない事位、知ってるわ。」


「物理、だと!!? ノトリア、お前!!」



 それ以上何か言う前にヴェロックはその場で崩れ落ちた。俺は踵を返しユリナの手を引いてその場を立ち去る。後ろから何やら奇妙な呻き声が聞こえるが聞こえないふりをして宿の近くまで黙って歩く。ユリナも何も言わず手を引かれるまま付いてきている。






「ハハハッ! 傑作だったな~。」


「師匠、どういう事ですか?」



 今は宿近くに有るちょっと高級店の様な店構えのレストランの中で夕食を取りながらユリナと話していた。



「要注意人物って書いといたの見なかったのか?」


「見ましたけど、何で要注意の人とあんな感じで話してるんですか。」


「ああ、昨日サラが言っていたヴェロックが彼奴の事でド阿呆だから辺り気にせず大声で喋るから苦手というか注目を浴びるから要注意なんだよ。ユリナも確実に目を付けられたぞ。」


「え、えぇぇー.....」



 少し嫌そうな顔を見せながら悶々とした状態で出される料理を食べていくユリナを見ながら俺も溜息をこっそりと漏らす。



「そう言えば、師匠はあの人に一体何をしたんですか? そんなに威力が無い攻撃なのにあの人動けなくなってましたよ?」


「そこは.......次会った時にでも聞いてみれば良いんじゃねえか?」


「嫌な事させるんですね。」


「面白そうだし。」



 不満げな表情で俺を睨んでくるので俺はその反応に思わず笑ってしまう。


 というか、あいつ、ほぼ素顔を晒して何やってんだか、あれで街の奴らにバレないのが凄いというか何というか。ああ、俺に認識阻害上手く働かない様にしたんだっけか、後はあれか。ユリナも相当魔力が高まってレベル差有っても見破られつつあるという事か。ギルドに顔写真は載っていない筈だがあの馬鹿は記してもらったか? 考えても分からねえし放置で良いか。認識阻害は少し改造しとかないとやばいかもなあ。と思いながら、そう言えばずっとユリナのステータス確認してなかった事に気付く。一応確認しておくか。



「因みにユリナ、自分のステータスって確認しているか?」


「え? そう言えば自分で強くなったかなとは実感してはいましたけど数値ではまだですね。確認するの忘れてました。」


「確認しておくか。時間ある時じゃないとゆっくり見れないし。」



〔 桜城百合奈 17歳 人間

  魔法使い LV118 (適正〈主〉:青 白 黄 赤 〈副〉:緑 黒 )

  スキル:心汲  魔力:5190 〕



「100レベルから上がりにくいかと思ってましたけど案外上がるものなんですね。」


「......。」


「どうしました? .......え、あ、あれ?」



 確かにステータスもそこそこ上がってるしレベルも上がった事はそんなに問題じゃない。じゃあ、何処が問題かと言われれば、



「な、なんで! 属性増えてるっ!?」


「声がでかいぞ。」


「普通、こんなん見たら驚きません? きっかけ何かありましたっけ?」


「......有るともいえるし無いとも言える。」


「内容は教えてくれます?」


「俺の魔力に触れたから。が考えられるかな。そんな事で属性が増えるなんて聞いた事無いけどな。だから本当にそうなのかは知り様がない。」



 此れは本当の事だ。急激に成長した理由は他に思い当たらない。うーんと食べていた手を止めて考え込む。するとユリナが首を傾げて俺をじっと見てくるのでその視線に気付き考え事を中断する。



「何かついてるか?」


「いえ、なんか誰かと被った感じがして。その誰かは分からないんですけど、知り合いとかでは無いとは思うんですけど。うーん?」


「なんじゃそりゃ。まあ、いいや。出来る事は部屋で確認しよう。今は食べよう。」


「そうですね。」



 食べ終わり宿に戻ると眠気が襲ってきたが寝る訳にも行かず増えた[属性色]を確認しておくことになった。



「それじゃあ、[緑]から。」


「はい。....んー、こんな感じ、ですかね。」



 掌の上に魔力を集中させ小さな風の球体を作っている様だった。〈副〉だけ有って中々難しい様で四苦八苦している。〈主〉とは違う部分はあるが根本的な[属性色]は同じなので苦労している様子を見ながら俺は口を挟む。



「実態のない風で球体を作ろうとするから難しいんだ。土とかだと想像しやすいんじゃないのか?」


「! そうでした。[緑]は風だけじゃなかったですね。....うーんこんな感じかな。」


「まあ、そんなもんでいいだろ。」



 風から土に変えた瞬間小さな球体を作り終わり気を抜いたのか土がさらさらと砂の様に部屋の床に落ちた。



「......。[緑]の風で外に捨てろ。」


「....はい。」



 と、ちょっとした事が起きつつももう一つ増えた[黒]を試す事になったのだが....



「具体的に[黒]ってどうすれば?」


「したい事してみれば良いんじゃねえの? 暗闇にするとか?」


「したい事、暗闇、か。.......あ! それじゃあ師匠そこに座って下さい。」



 俺は言われるまま指を指されたベッドに腰掛けると右目に手を当てられ集中し始めたので終わる迄ユリナを左目だけでじっと見ていた。暫くそうしていると手が離されたので目を開けるとユリナがニコニコしていたので部屋についていた鏡を見ると両目が黒になっていた。



「黒になったな。紅が気に入ってたんじゃないのか?」


「ちょっとした実験ですし、直ぐに戻る様にちょっとしか魔力使って無いですよ。」



 そう言った後黙り込んだユリナに首を傾げながら少しずつ元の紅に戻っていく目を見る。大分魔力操作が上手く行ってるなあと俺も自分の考え事に没頭した。







 [黒]の実験とは言え目の色を黒く変えて見たがさっきの夕食といい何かと被るなと思っていたらこっちの世界の知り合いでもなく、元の日本でのある事件を思い出したのだ。







 当時としては大々的にニュースとして取りざたされて他人事のように怖いと思ったものだ。



 そのニュースの内容は無差別の切り付け事件と殺人事件について。割とありふれた人の死が有る中でその2つの事件は異質だと感じた覚えが有る。齢7歳程だっただろうか。何故か記憶に残っている。



 最初の事件、無差別の切り付け事件について。30代女性が無差別に切りつける事件としてと報道されていたがある共通点が有った。自分と同年代若しくは10代の男ばかりを狙って次々と刺していった。幸いなことに死人は出なかった事件ではあるものの、多数の重軽傷者が出た事により判決が重くなるのではないかと言われていた。容疑者の女性も犯行を認めるばかりか、動機が「苛々していた、とか見ていて胸糞が悪かったとか。」、完全に自分の都合で犯行に及んだという事だったが、逃げる気は無かった様で現行犯逮捕された。が、拘留中に隙を見て逃げ出し一時騒然となった。



 そして第二の事件。無差別殺人事件。こちらの容疑者はなんと10代の男の子だった。そしてこの男の子は先に無差別の切り付け事件の容疑者の息子だったらしい。ボロボロの服を身にまとい右手には血濡れになった包丁を握っており、ボロボロの服でさえも血で赤く染まっていた。顔にも多くの血が飛び散っており生々しい映像がテレビで流された。それ以上に特徴的だったのは右目から流れ落ちる血の涙。テレビで一瞬映った時の開かれた目は私を強烈に惹きつけた。血の様にどす黒く濁った赤い目、実際は黒目の筈なのにそう見えてしまった。そして、左目の黒も何も移していない虚ろな目。最初に殺したのは逃げ出して息子に会いに来た母親。腹辺りをぐちゃぐちゃに刺されており顔も原型を留めていなかったという。その後、母親以上に残虐に無差別に人を殺した。取り押さえようとした警察でさえ殉職した人が多く、手が付けられないとはこのことだと言えると思う。が、この事件は直ぐに収束する。男の子は笑いながら、怨嗟の言葉を吐きながら、持っていた包丁で首を深く切って、自死した。出血多量によって助からず絶命した、と。



 全然違う筈なのに師匠の両目を黒にして前髪が前に垂れた時に男の子と姿が被った。ただ賢者様から聞いた師匠の過去の話を考えるとどうしても他人事のように感じないのはどうしてだろう。転生者、私と同じ世界から来た。けどイコールになる訳じゃ無い。凄く胸がざわつくのを感じながら目の色が戻っている様子を鏡で眺めている師匠をじっと見る。



 ......過去がどうであれ過去はやり直せないし後悔しても意味も無いし今を生きると私は決めている。例え私が好いてしまった人の過去がどうであれ向かい合っていこうと思う。



 此れは私自身のルールであり、誓い。誰が何と言おうが自分の課したルールは自分には絶対に守ってみせる。



 密かに握り拳を作ったのだった。







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