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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第6章
57/103

52話 街での出来事と開催まで1


 4人と別れた後、宿へ向かう。漸く到着した新たな街でのお泊り。どうやらバルディアは他の街に比べると物価が高い様で宿代も結構値が張るものだった。元々の物価が高いんだから仕方ないんだけど、ちょっと簡単に泊れるようなところでは無い気がしてくる。だからと言って野宿しろと言われれば話は別。そんな事をもやもやと考えていたら師匠は袋二つ分の金銭を渡していたので、私の分まで宿代を払ってくれていた。今来ている宿は一応この街の中では安めの方らしいと小声で教えられ、ちょっと戦慄してしまった。



「本当にあれで安いって言えるんですかあ? 金銭感覚疑っちゃいますけど。」


「その代わりサービス良くしてくれるし値段以上に良いと思っちまうかもな。」


「その言い方からすると師匠は泊ったことが有るみたいな感じですよね。」


「まあ、一応な。あのばk...じゃなかった『怪力』サマが目を掛けているとこらしいぞ。....あの『馬鹿』を本来の名で呼ぶとかしたくなかった。」


「何か言いました?」


「いや。些末な事だ。」


「『怪力』というとSSクラスの方でしたっけ。」


「そうだな。SSクラスにしてバルディア兼全てのギルドの統括するマスターにして”機人”。頑丈さは唯一のSSSクラスも手を焼くもの。.....一言で言えば脳筋。」


「失礼ですよ!」



 注意しても飄々とした態度を変えずに柳に風と言った感じでいる師匠に呆れ溜息を吐きながらも話を続ける。



「ところで機人ってどういった意味合いを持つんですか?」


「分かりやすく言うと半分機械、半分人間だな。もっと言えば臓器は人間のモノで体は機械化してる奴の事を言う。バルディアはそういった者共が住むものの街だからな。」


「機械化、ですか。利点は有るんですか?」


「利点、か。......特に思い当たらない...........あ、さっきも言った頑丈っていうとこか。後は長生きする。」



 師匠が思い付かない程の機人の利点って。呆れていると思い出したかの様に早口で急に喋り始める。



「頭が馬鹿になって戦闘もいつも真っ先に突っ込みメンバーに迷惑を掛ける。そしてそれを悪びれもせず笑って誤魔化す。」



 死んだ魚の様な目をしながらも乾いた笑みを浮かべて言うのでリアルで体験したと錯覚してしまう。何か笑顔が怖いのでこれ以上は聞くのを止め、話題を転換する。



「えっと、それでもう一人のSSクラスが『焔姫』でしたっけ?」


「...そうだ。」


「得意で良く見せる魔術が炎系統だった為に付いた名で、エルフの中でも高位の存在と言われるハイエルフに達している女性。『怪力』が剛なら『焔姫』は柔とも呼ばれる程良い相性とも言われてますよね!」


「ソ、ソウダネ。」



 二人の姿を思い浮かべて妄想する。すると何かが引っかかる感じがして首を捻るが、師匠のどうでもいいような返事で我に返りムッとする。何が引っ掛かってそう思うかは分からなかった。



「師匠は興味無いんですか!? まあ、師匠には関係ない話かもしれませんね。」


「おう、興味無い。」


「そんなはっきり言わなくても。」


「というかギルドに行く前はそんなに上の奴ら知らないと言ってたじゃないか。どうして少しの間にそんなに詳しくなってるんだよ。」


「師匠を探すのを諦めて調べた結果です。」


「そうかい。で?」


「で、とは?」


「一番上の情報は分かったのかよ。」



 一番上、つまり一人しかいないSSSクラスの人の事だろう、そう思いながらも興味が無いと言いつつ私に聞いてくるので少し矛盾を感じ真面目に返答されないと思いながらも聞いてみる事にした。



「興味無かったんじゃないんですか?」


「興味は無いな。」


「じゃあ、なんでわざわざ質問するんですか?」


「何だ、聞いちゃ悪かったのか。話したそうにしていると思ったから聞いてみたんだが。別に無理に話さなくても良いぞ。」


「何か釈然としない感じがしますけどそれで納得しておきます。」



 確信は無いけど他にも理由がある気がしてもやもやする。でも、これ以上探っても多分ぼろなんて出さないし聞いても特に意味も無さそうだったので話を戻す事にした。が、後から考えれば、含みが有った事に何故気付かなかったと頭を抱えた。



「それで、SSSクラスの人の事でしたね。全てにおいて、そつなくこなす。本人は完璧までは追い求めてはいないと言うがそつなくが他の人にとっては完璧だそうですね。亜人族は嫌われ者として扱われている中でSSクラスのハイエルフ『焔姫』は美人とされ忌避される事無く、SSSクラスもまたエルフと人の間、ハーフエルフでありながらもその美しさや女性を虜にするとか。そして男性さえも強さから尊敬の念を抱き嫌われる事無く頂点に居続けていると書いてありましたね。滅茶苦茶胡散臭い感じしてなんか一部からは師匠と似た雰囲気を察しましたよ。それに『暴嵐』ですし師匠に合いそうな名じゃないですか。」


「へ、へえ。」


「師匠? さっきから大丈夫ですか? 気分でも悪いですか。」


「あら、奇遇ね。こんなところで会えるなんて。」



 まだ部屋に向かって歩いている途中だった為、廊下で赤い長髪の人間の女性に声を掛けられた。彼女が見ているのは師匠の方だ。



「何でいるんだよ、しかも思いっきり晒してるけどいいのかよ、サラ?」


「偶には良いじゃない。ノトリアの気持ちを味わってみようと思ってね。.....その子かあ。」


「怖がられてるぞ。」


「そんな事無いわよ! ノトリアじゃあるまいし、髪の長い男よりは怖がられないわよ。」


「遠回しに俺の事そう思ってたって事だな。覚悟は出来てるか?」


「全く冗談通じないのね。それじゃあ軽く自己紹介をしておかなきゃね。私はサラっていうわ。ノトリアとはちょっとした事で知り合ってそれ以降依頼を請け負ったりしてるわ。内容は秘密、だけどね。大丈夫。いかがわしい事じゃないからね。」


「え、はい。私は桜城(ユリナ)百合奈(サクラギ)です。」


「引かれてるぞ、サラ。」



 師匠がクツクツと笑っているとサラさんの目が据わり手が出そうな感じに変わる。それに師匠を”ノトリア”と呼んでいる。私が師匠に何かを言う前に師匠の目が細く吊り上がりサラさんを睨みつける。



「本番前に怪我したく無いだろう? 止めとけよ?」



 師匠のたったその一言でサラさんは表情を和らげ諦めた表情を見せた。



「知ってるわよ。私自身が一番ね。」



 シーンと静まり返る廊下で暫くにらみ合っていた二人だが殆ど同時に息を吐き、世間話を始めた。



「にしてもノトリアにこんな可愛い子がね。」


「っせなー。彼奴にはまだ黙っとけよ。騒がれたらうっせーし。」


「ノトリア以上に分かってるわよ。あれからずっとヴェロックと関わってたんだから。」


「そうだったな。」


「ん、んんー!? ノトリア、『血の盟約』やってないの?」



 私と師匠を交互に見てそう言うサラさんの言葉に私は戸惑った。『血の盟約』? って何だろう。



「説明してないのね。そこまでの工程は進めたのに何で最後の工程をしておかないのかなあ。もしかしてビビっちゃった?」


「『血の盟約』って?」


「それはね、」


「サラ、それ以上口を開くな。例えお前とは言え俺は容赦なく殺るぞ。言っておくが本気だ。」



 ドスの聞いた声で先程の冗談を言っていた時とは比べ物にならない位周辺の空気が一気に凍った。



「分からないとは言わせねえぞ。」


「....言うと思ってるの? でもね、説明する義務は有ると思うわよ。」


「サラ、気付いてんだろ? 今は無理だ。どうなるか誰も読めねえんだぞ。」


「.....そうね。それじゃあちょっとした賭けと約束をしましょう。」



 未だに凍った様な雰囲気の中手を叩いて妙案を思い付いたとばかりに楽しそうに笑うサラさん。私はこの場の空気に圧倒され冷や汗が止まらないのだがそのサラさんの何気ない行動によってそれが少し緩和された気がした。



「賭けと約束だあ??」


「そう。結果によってはあの場で説明し夜には工程を終わらせておくこと。私は2は軽く越してくれると思っているからね。」


「贔屓はするなよ?」


「しないわよ。」


「良いぜ。乗ってやろうじゃねえか。1だ。」


「ノトリアこそ手抜きも出しすぎも禁止よ。」


「俺は何時でも全力でやってる。あの場だけはな。」


「そうだったわね。楽しみにしてるわ。」



 そう言って手を振って立ち去っていくサラさんを見届けると師匠は膝を折って頭を抱えた。急激な変化に驚いて私は師匠と目線を合わせようと屈むと何やら呟いているのが聞こえた。



「くそ、あの野郎、覚えとけ。何で俺がこんな面倒な事に巻き込まれてんだ。ざけんなよ。勝手に色々決めやがって、俺もどうしてあれに乗っかったんだ。ああ。むしゃくしゃする。」



 私は軽く自己嫌悪にトリップして髪をぐしゃぐしゃと強く掻いている師匠の肩を軽く叩いて現実に引き戻させる。



「悪いな。」


「何に対してですか。何かを悪く感じるなら話してくださいますか?」


「いや、それは。」


「でしたら何も言わなくていいです。師匠がちゃんと考えて下さっていると思って何も言いませんから。」


「......助かる。」



 気にならないと言ったら嘘になるが答えたくない事を無理に聞き出すほど落ちぶれちゃいない。毅然とした態度でいると師匠は立ち上がったので私も立ち上がるとひょいと視線が一気に変わる。



「ん?」


「良し。」


「いや、何が良しですかっ!? 降ろしてください!!」


「別に減るもんでもないし良いじゃねえか。てかさっさと部屋に行きてえしこの方が無駄な事考えずに済みそうだ。」


「師匠の都合じゃないですかっ!」


「そうだが。」



 結局部屋まで横抱きされたままだった。なので少し疑問に思った事を聞く。勿論、『血の盟約』の方では無いけど。



「ところで、サラさん?でしたっけ。ノトリアって呼ばれてますけど知ってるんですか?」


「名乗った時、ノトリアって言ったからそう呼んでるだけだ。色々事情を知っている様に言っていたがユリナを揶揄いたかっただけだろう。」


「師匠とそういう所は性格似てますね。」


「サラと一緒にするな。」



 部屋に着き、中に入ると降ろされたがちょっと、いや大分驚かされた。



「部屋広くないですかっ!?」


「この宿の中で中くらいに広い部屋だ。」


「もうちょっと狭くても良かったんじゃ。」


「そっか高いお金を払って狭い部屋を二つ借りろと?」


「え、いえ。そういう訳ではないんですが。ん? とういうか二つ分の部屋のお金払ってませんでした?」


「あ? あれは2週間分払っただけだが。」



 ......????



「いや、首を傾げるなよ。開催まで早く来たんだぞ? 前払いして部屋を取られない様にしとくんだぞ。大会前は取り合いになるんだ。そうすると前払いしてくれるお客さんを宿側は取っちまうんだよ。流石に早く着いただけ有ってまだ空きが有って良かったが開催までどうなるか見ておくといい。」


「な、なるほど。」



 宿の経営者も中々えぐい事をしている気がするけど気のせいか。前払いをしないからって追い出す事は無いだろうに。



「ん? じゃあお祭り中はどうするんです? 確か13日後開催だった筈です。そして開催してから終了まで3日間は最低続けるとか聞きましたけど。」


「その事は心配しなくていい。当ては有る。正直嫌なんだが試験中は強制だからな。」


「は、はあ。」



 何かよく分からないが大丈夫ではあるようなので心配せず楽しむことにした。取り敢えず開催までは街をぶらぶらして良いそうなのでたまにクラスメイトの4人を手助けしながら遊ぼうと思う。でも今は。



「......zzzzzzzzzz」


「寝るの早。まあ、当たり前か。」












「サラ、いや『焔姫』。何故ここの宿に泊まると分かった?」



 真夜中、バルディアの俺が選んだ宿の屋上でそう言うと言葉が返ってくる。



「それなりにサービスが良く高すぎない宿を選ぶことくらい知ってるわよ。ノトリアともそれなりに付き合いが有るんだからね。いや、ノトリアじゃなくて『暴嵐』って呼んだ方が良いかしら? SSSクラスの英雄さん。」


「サラも英雄の一人だろう。全く、あの場で出てくるサラの度胸が知れねえわ。違和感に何となく気付いてたぞ。」


「まあ、大抵の人は気付かないものね。気付いてくれた方が嬉しいわよ。唯一の女の子の魔法使いの後輩なんだからさ。」


「炎の魔法をメインで使う奴が普通エルフ選ぶかよ。真逆のイメージだろ。」


「仕方ないじゃない。魔法使いの長寿なんて事がバレたら迫害されるに決まってるわ。その分ノトリアはエルフと[緑]魔法が合ってて良いわね。」


「一応ハーフって事で通してるけどな。」


「どうでもいいでしょう。魔法何て今の世界に存在しちゃいけない存在という風潮に魔法使いなんて育ててるなんて。気が知れないわ。しかも賢者様じゃなくて面倒臭がり屋のノトリアってのがまた。」


「うるせえな。」


「確かにあの子に惹かれる感じも分かるけどそんな簡単に落ちちゃうやつだったっけ?」


「あ゛あ゛?」



 若干苛つきながら言葉を返すとクスクスと笑われる。俺は舌打ちをしてバルディアの夜景を見渡しているとサラが口を開く。



「『血の盟約』もしてないなんて。指輪渡しといて終わりとか。魔法使い同士はしておく掟だったでしょう?」


「魔法使い以前に俺は別のも混じってるからな。簡単に出来ねえよ。それに魔法使いの特性みたいなモノである長寿をちゃんと説明してないし、交わす事で俺と同じ体質に変わるかもしれない。話すきっかけがねえよ。」


「そこまで悩むとか、ほんと変わったわね。前のノトリアじゃ考えられなかったわ。嬉しい変化かもしれないけどね。」


「考える事が増えて面倒なだけだ。」



 恥ずかしさからそっぽを向く。そのまま俺は話を続ける。



「それとあの『馬鹿』に言うと面倒くなるからあの場では言わなかったが、封印に綻びが生じず力だけを暴走させられている。これで、このざまだよ。」


「....今回奴らは動いてくるわ。」


「何でそう言い切れる。」


「ただの勘よ。」


「....勘かよって言いたい所だがサラの勘は当たる事が多い、というか外れた事が無いから気を付けよう。あの『馬鹿』にはそれとなく伝えといてくれ。」


「分かったわ。」



 俺は部屋に戻ろうとすると最後に声を掛けられた。



「自分の都合だけで動かない事ね。残された者の事も考えて慎重に行動してよね。」


「あの時と同じ事は繰り返さねえ、絶対に。俺は自分自身の力を正しく使って敵を見定め.....殺す。自分の守るものの為に。例え敵が誰であろうとな。」



 そう言ってサラをじっと見てから、視線を下に向け屋上から飛び降り魔法で減速しながら裏口から静かに宿の中に入り部屋に戻る。



「はあ。周りをもう少し頼ったらいいのに。全部ひとりで背負い込むのが悪い癖よ、『暴嵐』の魔王。」







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