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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第4章
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36話 少年との出会いの過去と限界突破



「え?」



 私がつい声を洩らしてしまうのも仕方がない事だと思う。昨日の曖昧な返答から何となく察していたからだ。スッキリした筈の頭が真っ白になり、視界がグニャリとネジ曲がる感覚。思わずフラッとして前に倒れそうになったのを自分の腕で支える。段々と呼吸も早くなる。自分でも何故こういう感覚に陥ったか分からない。けど一人になってしまうという恐れや不安が込み上げてくる感じがする。



「落ち着くのじゃ、少々用があり出掛けたが戻って来ない訳じゃ無いから安心するがよい。寧ろ早く用事を済ませようとする筈じゃぞ。」


「それってどういう....?」


「似た者同士、という事じゃな。」


「?」



 私と師匠が似た者同士? どういう事だろう。賢者様の言葉によって一瞬で不安よりも疑問が勝りうーんと唸って首を傾げてしまう。そんな様子も含めて賢者様は楽しそうに朗らかに笑う様子を私は意味が分からずただただ疑問符を浮かべて見ていた。


 すると賢者様は表情を一転さ、真剣になる。そして、ゆっくりされどしっかりとした口調で話していく。私は座ったまま話を聞きのがさまいと耳を傾けた。



「ノトは昔の事を語らぬだろう? 人に話させておいて自分は話さぬのをどう思っているかあやつは知らぬのだ。悪戯の一種とでも思っておるのだろう。」


「っ! 私が過去の話をしたことまでご存じでしたか。確かに師匠は私と会う前の話は全く話してはくれませんし、いつか話してくれると言ってくれたので。」


「娘ッ子は本当にそれで良いと思っておるのか?」


「....。」


「ノトは不器用なんじゃよ。いや、不器用、というよりはまだ子供、というべきか。」


「師匠が、子供。ですか?」


「そうじゃよ。あやつがいない今、少しだけ昔話でもしてやろう。その話は、ある少年と賢者の出会いの物語。そんなに長くはならぬが急ぎの用があるわけでも無さそうだしの。修行はその後ゆっくりやれば良かろう。その為の時間はたっぷりと有るようだしのぉ。」



 賢者は語り始める。



 森の賢者がその少年と初めて会ったのは少年が齢15の時。会ったと言っても賢者が一方的に監視していたといった方が正しい。何せ森の木々からさ迷い歩く子供を見掛け心配になり見守っていた。と賢者は言う。その子供はフラフラとしていて、しっかりとしていない足取り、そして目の前の景色すら映して無いだろう虚ろな目をして、目的無く兎に角歩いているようだった。そんな様子で有りながらも強烈な殺気を魔力に乗せて振り撒いていた。少年自身、無意識の様だったがその殺気のお陰で他の魔物を寄せ付けない程には強かったらしい。程なくすると立ち止まった。と、思ったらその少年はそのまま倒れる。倒れた後もうわ言の様にして何かを呟いていた。よく耳を傾けると紡がれる言葉は、ただただ人を怨む言葉。賢者は迷った末に少年をそのままにしておく事もできず、自分の住むこの場所へ転移させた。如何に強い殺気を魔力に乗せて放ってこようが、少年一人取り押さえる事は賢者にとって造作もないこと。しかし、少年は予想外の態度を示す。襲ってくると思われたが、先程の虚ろな目は何処へやら急に違う場所に来たことに驚きながらも、興味を持ったかのように目を輝かせていた。そんな少年に賢者は言った。



「やってみたいかの?」



 そんな軽い言葉。最初こそ少年は驚いたもののその言葉だけで何をしてくれるか分かったのか激しく首を上下させ頷いた。当時は賢者の元には多くの弟子がおり魔法だけでなく剣の才を持つものもおり少年にとっては魔法だけでなく剣もとても珍しい物だったのだろう。その珍しさから積極的に魔法だけでなく剣さえも教わり、その悉くを吸収して強くなっていった。その期間凡そ2年。2年という月日で強者となり得た17歳に成長した少年はこの場所を去っていった。そんな2年という長いようで短い期間、多くの人に囲まれ最初こそは警戒し中々馴染めなかったが半年も経つと打ち解け楽しく笑う姿が見られた。だけど賢者は気付いていた。その笑顔も心の奥底からじゃないこと、そして時折出会う前の虚ろな瞳を見せていること。賢者は本当の意味でその少年を救うことが出来なかった。それを悔いて生きていた。




「その少年が今や心の底から楽しそうに笑っているのを見たのじゃ。この少年は成長が遅すぎと思うたがそんな事は無かったわい。もう少し子供らしさは有った方がかわいらしくて良かったのじゃが今が充分子供らしいから良しとするべきなのだろうかの。」


「賢者様、今の話って.....」


「質問はワシにするでない。如何せん長く生きておるのでな。記憶が正しいとは限らぬし、いつの時代と聞かれても合っているとは言えぬのじゃ。」



 とぼけた様な表情、口振りに私は思わず笑う。意外な所で本当は聞いてほしくないであろう過去を聞いてしまったが後は自分で探ろうと思う。いや、聞いてみるのも有りかもしれない。そうしよう。話してくれるかどうかは別だけど。



「さて少し喋りすぎたかのう。あやつに進んでいないことに気づかれて、色々と聞かれるのも面倒じゃ。久し振りに修行でもつけてやろう。準備は良いか。」


「勿論、準備は万端です。よろしくお願いします。」



 立ち上がり賢者様の指示通りに魔法を行使していく。今は兎に角強くなって師匠が戻ったとき吃驚させようと思いひたすら努力していく私であった。





 賢者様より修行を付けてもらい始めてから何と1週間が経っていた。しかし師匠はまだ一度も顔を見せておらず帰ってきてない。少々とは聞いたが大分時間がかかっている用事とは一体何なのだろうか。


 しかし賢者様の修行を乗り切った末、この1週間で漸く至ったのだ。因みに私が修行を始める前の、要は大規模戦闘後の後のステータスはこれだ。



〔 桜城百合奈 17歳 人間

  魔法使い Lv76 (適正〈主〉:青 白 〈副〉:黄 )

  スキル:心汲  魔力:2920 〕



 大規模戦闘がもたらした恩恵は凄まじかった様だ。にしても急に上がりすぎかと思っていた。後に師匠に確認したら「俺が倒した奴の経験値も入ってたか? スキル効果で。」と言われて『果てに紡ぐ力』の効果の中に99までのレベルであれば少しの経験値が入るとか。少しというのが分からないが上げ幅凄まじいので特に聞かなかったけど師匠が隠れて? 相当敵を倒した証明になっていると思う。そして、ゴブリンキングを倒した事もかなりの上昇に繋がったとか。あの時のレベルよりも格上の相手らしかったとか。


 そして1週間の修行の成果がこれ。



〔 桜城百合奈 17歳 人間

  魔法使い Lv99 (適正〈主〉:青 白 〈副〉:黄 )

  スキル:心汲  魔力:3790 〕



 この空間の魔力の扱いやすさも有り高レベルだったのにあっという間に限界値に届いてしまった。なので8日目になる今日遂に、『限界突破』とやらを試すそうだ。



――『限界突破』とは。


 かつて師匠はレベルの最大値は99と言った。だけど一般に知られていないレベル100以上になるための物だと言う。一般に知られていないと言うと語弊が有るかもしれないので詳しく言うと、この『限界突破』は高位の(=レベルが高い)魔法使いにしか扱えない。昔は知られていた物も魔法使いが居なくなった事もあり語り継がれる事も無いので忘れ去られたそうだ。今現在『限界突破』を使えるのは賢者様と師匠の2人しかいないらしい。


 ただ現存する魔法使いは賢者様が知る限り賢者様自身と師匠、私を除き、後1人いるらしく私がその中で一番若いとのこと。そのまだ会っていない人については『限界突破』を使用できないが魔法の才は高い女性らしい。賢者様曰く近いうち会うだろうと。何処でどの様に会うかは分からないが少し楽しみだ。


 そして師匠の年齢が割りと謎に包まれる。あの過去の話から考えても弟子が多い世代と言ったら【魔女狩り】前じゃないのか。そうすると200年前? うーん。確証は無いけど相当な歳じゃないかという説が立証されそうな気がする。




「そんなに緊張しなくても大丈夫じゃ。肩の力を抜いてゆっくり深呼吸でもして落ち着いてから行おうかの。」


「ふぅ。」



 目を瞑りゆっくりと深呼吸をする。そうすると周囲の魔力がよく感じられて落ち着いてくる。そのまま立っていると賢者様の声が届く。



「うら若き魔法使いの行く末がどうか幸多からんことを。...........『限界突破』。」



 その瞬間激しい魔力の奔流に流されそうになる。今までの比にならない程多くの魔力が内から溢れてくる。それを抑えようと、流されないようにと歯を食い縛りただただ耐え忍ぶ。最初に教わった魔力操作と同じ要領だ。そして抑え込む感覚は気配遮断を使うときと同じ様に。焦っては何も出来ない。それは中々魔力を操作出来なかった時に知った事。落ち着いて魔力の奔流を収めていく。



「はあ、はあ。」



 荒れる息を繰り返し疲労感から腰を下ろすも力が入らず仰向けに倒れる。魔力の奔流が落ち着いたので力が抜けてしまった。目を開けると変わらず優しい光が射し込み落ち着かせてくれる。仰向けのまま息を整えると笑い声と共に声が掛けられる。



「成功じゃな。それに変化も大きかった様じゃ。確認してみると良い。」



 そう言われステータスを表示させる。



〔 桜城百合奈 17歳 人間

  魔法使い Lv100 (適正〈主〉:青 白 黄 〈副〉:赤 )

  スキル:心汲  魔力:4290 〕



 先ずはレベルが100になっている。そこで少し感動。そして、ステータスが上がった。魔力が大分上がった。そして[属性色]の[黄]魔法が〈主〉になり[赤]魔法が〈副〉に新しく追加された。特に新しいスキルは増えなかったが結構変わったと言える内容だろう。[赤]が増えたのはあれかな? 魔術でめっぽう強い爆発系の教えてもらった事も関係有るのかな。



「賢者様。新しく使える魔法の種類が増えました。後はステータスが伸びました。」


「スキルは増えんかったか。」


「元々一個持ってたので増えなくても何にも問題ないですよ。今でも相当なステータスだと思いますし。」



 上半身だけ起こし後ろ側に手を付けながら賢者様を見て言う。最初の時の弱さを考えると大分強くなったと思うのと同時に急成長したなと若干苦笑いする。そんな事を考えていたせいか微妙な表情を浮かべていたらしい私に賢者様は言う。



「案外強くなるとはあっという間という物じゃよ。それだけ努力してきたという証明にもなるのだからもう少し自信を持つとよい。」


「努力したかなぁ。あんまり思い当たらないですね。」


「努力して無かったら今此処におらん。要領があまり良くないノトの説明と修行で更なる力を解放できたのだからワシは感心しておるがな。」


「賢者様的にも師匠の教えは要領得ないと思ってたんですか.....。確かに比較すれば明らかに賢者様の教え方の方が分かりやすかった気がしないでもないけど。」


「教え方は人それぞれじゃ。ノトは人に指導なんてしたことがないからのう。」


「え? でも大勢の人の前で魔術教えてましたよ?」


「それは....魔術の根本を理解しているからこそ教えられるのじゃよ。魔法は分からぬからのう、それだけ魔法は奥深いということじゃ。」



 魔術の根本とは何だろう。魔法とは何が違うのだろうか。確かに魔術は作られた物だ。だから知ろうと思えば知れるだろうがその鍵を握っているのはかつての”英雄”達。確か英雄達は今のギルドを作ったとは聞いたがそれも200年前。もうこの世にはいないだろう。語り継がれた物が有るのか。.....あり得ない、信じられないと思える事だが、師匠がその当事者の一人である...? 魔法も魔術も使えて賢者様の少年の話が師匠の事で有るとするならば可能性があるけど。うーん。まだ情報が少ないなー。



「ユリナよ、何を考えておるかは分かるが目的は達したのじゃ。当初の予定ではウィッチェでゆっくりするつもりで有ったんじゃろ? まあウィッチェはノトが帰ってきたら行くと良い。他の街に行ってみたいとは思わんか。」


「他の、街ですか?」


「そうじゃ。ユリナの世界はどうだったかは知らぬがこの世界にはヒト以外もいるのじゃよ。」


「! それって獣人とかエルフとかドワーフとかヒト以外ではよく聞く代名詞のやつですかっっ!!!?」



 興奮して賢者様に迫っていく。賢者様は驚いた顔を見せながらも笑う。私は興奮した事が恥ずかしくなり少し下がる。



「よく聞くかどうかについてはワシにはよく分からぬが大体言った種族はいるのう。後は魔族かのう。この世界の常識として聞いておらぬのか?」


「ええ。そもそもヒト以外の種族に関して見てもいませんし、いることも聞いたことが無かったのでそういうものだと思ってました。有るなら行きたいですっ!」


「そうか。それではその者らが住む街について一般的な認識について教えようかの。あやつも目的は達しておるし怒らんじゃろう。」



 そうして私はこの世界では魔族も含めてヒト以外を”亜人”と呼ばれ蔑まれている者達が住む魔の街”ルギシニラ”について教えてもらう。







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