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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第4章
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35話 転移と師匠の師匠

 第4章スタート!


 町に真っ直ぐ進まず進路を逸れて歩き始める師匠は私を抱き抱えたまま言った。



「頑張ったご褒美に俺のとっておきの魔法を見せてやるよ。」


「え? それって......」



 一体どんな魔法なのだろう。そう聞き返そうとするが次の瞬間魔法は発動された。



「『転移』。」



 その言葉が放たれた直後、あまりの眩しさに私は目を瞑る。聞こえた言葉は異世界もので定番と言えば定番。但し高度な魔法で有るとされるものの代表格である『転移』。私だけでなく読んでいた人は思った筈だ。「これが有れば何処に行くのも楽だし、遅刻とか絶対有り得ないね!」と。そんな私も例外無く使えたらとかをよく考えていたものだ。



「ユリナ、着いたぞ? いつまで目を瞑ってるつもりだ。」



 考え事をしていたので声を掛けられてゆっくり目を開けると天窓から暖かな光が差し込んでいるのが見えた。あれ、確か今の時間って夕方近くなかったっけ? なのに此処に差し込む光はまるで春の麗らかな陽気な日の様。その陽気な日も一日の始まりを祝福するかといった朝方の様な柔らかな日射し。体は動かないので目だけ動かしてみると丁度師匠の立っている位置の直線上に一本の大木が生えており天井まで生い茂る葉が光を幾らか遮り木漏れ日の中にいる様なゆったりした雰囲気を感じる。室内の筈なのに妙に広々と感じ森にいるように錯覚してしまう。暫くボケッとしていると声が聞こえてきた。



「フォッフォッフォッ。少々早すぎかと思うたが、若者の成長は早いんじゃったな。まさか約束を守ってくれるとは信じておらんかったが、よう来たな。」


「近くで戦闘してたの知ってんだろ、爺。ついでだよ、ついで。たまたま思い出したから来てやったんだ。」


「相変わらずかわいくないのう。」


「俺に可愛さ求めんじゃねえよ、気色悪い。」


「む? (ヌシ)、少し変わりおったか。あの時は全く吃驚したぞい。長らく一人身の主が急に可愛い子を連れて来るんだからの。少々変心させたのは、その者のお陰かのう、ノトよ。」


「俺の本質は何ら変わっちゃいねえよ。全部成り行きでこうなっただけだ。」



 よく見ると大木の根本に腰掛けている人の姿が見えた。若干嗄れてる声からも分かったが相当歳を召した男の人。師匠はその人と話をしていた。何やら親しげだが誰でどういった関係なのだろう。



「すまんのう。ワシは此処から動けんでな。ノトよ、もっと近くへ来い。”魔法使い”の若人をしっかり見ておきたい。」


「へいへい。」



 私を差し置いて話が進んでいく。分からぬまま師匠はお爺さんに近付いていく。近付くと師匠は目線を下げるため腰を下ろし後ろから私を支える形で座る。私は正座、は出来なかったので膝を折り座り込む。そして改めて話しかけてきた人物を間近に見る。優しそうな表情のお爺ちゃんといった感じ。でも何かこの人の魔力何処かで見たというか感じた気がするけど何処だったかな? 初めて会う筈なのに初めてという感じがしない。まるで家の近くから行けたあの広場を見守る様に生えていて私の力を覚醒させたあの大木と似ている、気がする。暫くの間お互いじっと見つめ合っていた。



「面白い事もあるもんだのう。この娘ッ子気づいておるのか、それに見ていた通り正直な真っ直ぐな子じゃ。ノトよ、主が変わる理由も分かるわい。」


「爺、そういうの良いから自分の名前でも言ってやれ。ユリナが困ってんぞ。」


「おっとそうじゃったな。何せ人と久しく話して無いもんでそういうのを忘れてしもうてた。初めまして、ノトの弟子の娘ッ子。ワシの名は、トレンティ=ウッデンファルユ。みなからは『森の賢者トレント』とも呼ばれておった。」


「え、はい。初めまして。私は桜城(ユリナ)百合奈(サクラギ)と言います。こんな体勢のまますみません。それで、えっと?」


「皆まで言わずとも聞きたいことはそのひよっことの関係じゃろ。」


「ひよっこ言うな。さっきまで名前で読んでたじゃねえか、この爺め。」


「そこにいるノトとは今のオヌシらの関係と同じじゃよ、尤もワシは魔法しか教えてないがの。」


「えっ、それって。」



 師匠に魔法を教えた人。ノトさんが弟子だったということ。思わず目を丸くする。というかこんな優しそうな人から魔法を習ってどうやったらこんなに性格がひねくれてる感じになるのか。チラッと後ろを見ると目が合ったので私はジト目を向けた。



「....何だよ?」


「いえ。」


「おい、爺。何か爺のせいで俺がユリナに変に思われてる気がするんだが。どういうことだ。」


「ワシのせいにするでない。自分の行いをもうちっと反省してみい。それが出来ねば主はまだひよっこじゃよ。」


「思う当たる節がねえな。てか、マジでひよっこ呼び止めろや。色々思い出して頭痛くなってくる。」



 そう言ってこめかみ辺りをグリグリして顔を顰めている師匠をじっと見ながらいると、今までの展開で吃驚して割りと停止気味だった脳が働き始め疑問が沸いてくる。



「あっ! 師匠そういえばあれ[無]属性ですよね? 何であんなに簡単に使えるんですか。それに街の入り口から何で入らなかったんですかっ。普通に街見て歩きたかったんですけど。何で此処に来たんですか? 恩師? に会いにですか?」


「落ち着け。いっぺんに質問されても答えられねえよ。先ずユリナは体が怠いその状態で入って歩きたいってどうすんだ?」


「.....。」


「此処に来たのは前に爺に言われたからだよ。家の近くのあのだたっ広い場所に大木あっただろ? あれこの爺とリンクしてて彼処での修行は全部見られてたんだよ。覚醒時から監視していたらしいしな。それでこの場所はちょっと特殊でこの爺が許可した奴しか出入りできない特殊な場所なんだ。一応ウィッチェの土地には有るには有るんだが。わざわざ歩いていくのも面倒になったしどうしようか迷ってたら『転移』でも見せてやれ。って言われたから使っただけだ。この空間は魔力が豊富で魔法も安定して発動しやすいから『転移』しろって事だろう。」


「ようそこまで分かったな。主は秘密を抱えすぎだ。少し位自分の力をはっきり見せとく良い機会だと思い使わせたのじゃ。どうせステータスも言っておらんのじゃろ? 後は此処に来たのはワシに『限界突破』の魔法でも使ってもらおうとでも思っておったのじゃろう。思い出したとはこの事だったんじゃろう? 主、出来るのにしないんじゃな。」


「何言ってるんですかー。トレント様の方が上手く出来るんでお願いしますよー。」


「はぁ、全くそういうところは変わらんな。まあ折角の有望な”魔法使い”の若人じゃ。道を違えぬようワシが行く手を示そう。」


「??」



 つまり歩けない自分では今は街を歩いて見て回るのも無理。そしてあの状態で街に入れば多くの目に晒されただろう。だから賢者様は師匠に指示したのだろうか。確かに秘密がまだ多い師匠だけどまさかそれで『転移』なんて魔法を誰が使うことを予想しただろうか。その驚きはさておきやっぱりあの大木と関係が有ったというか見られてたんだ。何となく似ていると思ってたけど間違いじゃなかった。それにこの空間の落ち着くという感じは魔力が安定しているお陰なのかな? 


 そして後で教えてもらったがあの家の近くの広場には特殊な魔法が賢者様自身で張っているため、おいそれと立ち入れる空間でも無いし迷い込める場所でもないとの事。迷い混んでも森の中をさ迷い歩く様になり辿り着くことはないらしい。師匠が城に施した障壁と似てるというか師匠が賢者様の障壁を参考にしたらしい。


 そして二人が話した『限界突破』とは何だろう。初めて聞く。まだ二人は話しているのを聞きながらタイミング良く質問を挟むことにした。



「今はまだこの状態だしもう少し元気なったら頼むわ。」


「勿論分かっておる。それにまだもう少し足りぬから此処で修行でもするが良い。主は少しやりたい事でも有るのだろう。ワシが見ててやるから用を済ませてこい。」


「なんだバレバレか。んじゃお言葉に甘えて頼みますよ。」


「えっと、良いですか?」


「何じゃ?」


「『限界突破』って何ですか? 初めて聞きました。」


「ノトよ、説明しておらんのか。」


「まだ必要じゃ無かったし爺からやってもらう予定してたしそん時に説明してくれるかなあって。」


「何処まで他力本願なのじゃ。ユリナよ、それについてはもう少し元気になったらにしようかの。此処はこんなに明るくても外はもう日は落ちておる。何か急ぎの用があるわけでも無かろう? ゆっくりするといい。」


「へ? はい、そうですね。確かに疲れてる状態じゃ話もあまり頭に入りそうに無いです。ところで何処で休めば良いんですか?」


「爺、まだ残ってるか? 有るならそこ使うぞ。」


「勿論残っておるぞ。古びてはない筈じゃからすぐ使えるぞい。」



 話を終えると再び私を抱き抱えた。そして大木の裏に回ると一つの扉があった。その扉には鍵穴があった。すると師匠はポケットから一本の銀色の鍵を取りだし鍵穴に通すとカチッと音がした。その後、扉を開けると一つの部屋が広がっていた。机や椅子、本棚、ベッドと必需品だけがある殺風景な部屋。部屋の周囲にはそれぞれ大きな窓が嵌め込まれていて光が射し込んできているが不思議と眩しくない。窓と言っても外の景色が見える訳でもない。中に入ると私をベッドに下ろし師匠は椅子に方に腰掛け懐かしむような表情で遠くの方に視線を向けている。そんな様子をベッドに下ろされた後じっと見ているとその視線に気付き此方をみやる。



「此処は俺が魔法を教わっている間、生活するためだけに使っていた部屋だ。さっきの扉にこの銀色の専用の鍵を差すと此処に繋がる。あの扉は鍵によって繋がる場所が変わるんだ。だから昔は他の奴もいたりしたが今は若い魔法使いはいないから多分扉を使ったの大分久しいと思う。此処はなんも変わっちゃいない。あの爺も。なんであんなに変わらず何千年以上も生きてられるんだよ。....此処はまるで時が止まっているみたいだ。」



 最初こそ私に説明した様な口振りだったのが段々とぼやくような声音で遠い過去を見るような目で心此処にあらずといった様子に変わっていった。そんな静寂も直ぐに終わりを迎え師匠は立ち上がり部屋を暗くした。



「ほえっ?」


「外はもうそれくらい暗いって事だ。まだ体が怠いんだから寝とけ。」


「師匠は?」


「.....俺は少し用が有るから出掛けてくる。ああ、鍵は此処に置いとくから何か疑問があれば爺に聞いといてくれ。そんじゃあな。」



 そう言うと部屋を出ていった。暗く静かな部屋に残されたが如何せん動くことすらままならないので大人しく寝ることにした。ただ師匠の様子が何かいつもと違う感じがしたが私に有無を言わせてくれずに行ってしまった。



 次の日、目覚めた私は体の怠い感じが取れており頭も妙にスッキリした感じがしてる。とても調子が良い。そんな中お腹の虫が鳴る。恥ずかしくなりながら周囲を見回して自分がいる場所が分からなくなりかけたがそういえばと思い出し、鍵を持って部屋を出ると昨日転移してきた部屋に出た。そして木の正面に回ると賢者様が座っていて此方に気づくとニッコリと微笑んだ。



「おはよう、大分眠れてスッキリしたようじゃな。腹が減っておるじゃろうからこれでも食べると良い。」


「おはようございます。これ果物? ですか。」


「そうじゃよ。それは少し特別製で1個食せば腹が満たされるはずじゃ。食べてみい、美味しいから。」


「頂きます。」



 そう言ってかぶり付くと口の中いっぱいに甘味が広がり、頬が落ちるような美味しさってこの事だ。と思うほど美味しく、大きさは手の平位だったが食べきるとお腹が満たされていた。


 そしてお腹が満たされて落ち着くと視線を巡らせる。昨日は殆ど見れなかったので改めて荘厳な雰囲気であり自分を包んでくれるような暖かさに心がホッとしているのが分かる。そして気付く。



「あれ? 師匠って何処に行ったんですか? 此処にいないとなると?」



 何気なく聞いた師匠の居場所。昨日出掛けると言ってから部屋には戻ってきていなかった。別の扉の先にいるのだろうか。そう思っていたが賢者様からの答えに私は頭を打たれたような感覚を覚えた。



「ああ、ノトなら暫く戻ってこんよ。」











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