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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第3章
35/103

33話 魔物の進軍と大規模戦闘3


 戦場に繰り出した俺は真っ直ぐ勇者らの拠点に進軍している魔物たちを迎え撃つため進路上に仁王立ちで立っていた。後ろからは、どよめきが聞こえてきたが微かにサークレルトの声が聞こえるのでフードを被って後ろ姿だったとしても俺だと気付いたのだろう。何て言って安心させているかは知らないが。ただ、闇に紛れるよう真っ黒にしてるが気付いたのも流石と言うべきか。さて、あんまり後ろに構ってる暇もないからテキトウに蹴散らしつつ勇者達にも動いてもらいましょうか。

 剣を抜きこの黒剣の本来の姿を見せる。



「『魔剣《鴉羽(カラハ)》、真の姿を示せ』」



 黒く光輝くと2本の剣が現れる。俺は両手でしっかり握り久し振りの感触を確かめる。一本を下向きに構えもう一本を肩に担ぐと魔物が雄叫びを上げる。俺に気付いた様だ。殺気、狂気あらゆる感情を振り撒きながら押し寄せる魔物に俺は真っ直ぐ突進して次々に首を跳ねていく。一本の時と比べて手数が格段に増えているので効率よく次々と首が跳んでいく。そんな無双をしつつもテキトウに敵を勇者らの拠点の方まで進ませたりして自分がやりたいよう戦っていた。やっぱり数は有っても個体が弱い。統率も知能が低い魔物には意味がない。無双出来ていても詰まらねえなと思いながらも本心は隠せず口の端を吊り上げながら魔物を切っていった。


 すると戦闘区域より遠い場所から揺らぎが生じた。黒幕も流石に焦ったみたいだ。どう動くかを気配を鋭敏にさせ探ると今だ焦った様子を見せるものの特に動きを見せる事はなかった。良いのか? このままじゃ俺が蹂躙して終わるぞ。そんな事を考えていたら視界の端でキラッと光り俺はその場から大きく回避する。するとさっきまで立っていた俺の場所には魔力で作られた尖った武器が突き刺さっていた。”魔術”か。しかも黒幕の方からじゃない。サークレルトだったら俺の正体をうやむやにしただろう。ということはその説明を聞いたのにも関わらず俺に気付いた奴、俺だと知っている上で邪魔だと感じている奴等。複数の憎しみやらの負の感情の視線を俺に向けてる奴がいるな。


 そんな考え事をしていても敵は際限無く押し寄せて来るが一瞥せず片手間で首を跳ねていく。今回の戦闘では返り血を浴びずに勝とうと思っていたが、浴びちまった。あーあ、血を落とすのも楽じゃねえんだよな。全く



―――二回目は無いと言った筈だ。面倒事を増やしたお前は、お前らは後で泣き騒いでも中々死ねない苦しみを味わいながら殺してやるよっ。




 戦闘を続けて数時間。遂に勇者らも総力戦で挑むようで一斉に動き始めて敵を倒していってる。まだ夜中だけど中々いい動きをしている。しかし、疲労感はあるようで息がかなり上がっている。対して俺は全く息が上がっていない。魔物の数も見える範囲では3000は切っただろうか。一日、二日で終わる量でも無かったが俺が出張ったせいで早々に決着が付きそうだ。ちょっとやりすぎた、か。これ以上俺は戦うと終わるしまだボスが残ってるから折角だしユリナを起こして夜戦をさせつつボスと少々戦わせるか。うん、そうしよう。黒剣を一本に戻し大きく跳躍して気配遮断全開に発動して血などを軽く拭いユリナがいる場所まで風魔法を使い一気に戻る。









「……ナ、……リナ、……ユリナっ!」


「ん、んー?」


「ユリナ起きろっ、夜戦だぞっ。」


「えっ! はいっ!」



 飛び起き戦闘準備をする。昼間と違って敵が見にくい。そして昼間と同じく攻撃しようと構えたらガシッと腰を捕まれ驚き呆けていると次の瞬間一気に地面が遠ざかる。



「えええぇぇぇー!!!」


「よっしゃー、いくぞー!!!」



 師匠が[緑]魔法の風を発動させて擬似的に跳んでいた。寝起きでボーッとしていた頭が一気に覚醒していく。そして、より近くまで戦場に来ると降り立つ。すると魔物が気付き襲いかかってくる。私は呆けている暇無く一瞬で槍を生成して放っていく。[白]魔法では光って存在を示してしまうので[青]魔法でどんどん敵を撃ち抜いていく。慌ててはいたが冷静になると普通に対処できて来ているので少し考え事をする。先程戻ってきた師匠は血こそ付いていなかったが少し臭った。血の特有の臭いが。何か妙にハイテンションだったけど何か関係が.....。



―――笑っているんです。



 サークレルトさんの言葉が頭を木霊する。察知の方に力を傾ける。あれっ、数が少ない。何で、とは思わない。夢うつつで覚えている。師匠が何処かへ行こうとしていたのを無意識に止めたが行ってしまった。これはきっと数時間前の事だ。その証拠に師匠が羽織っていた筈のコートが私に掛けてあったのだから。


 そして行ってしまった先で蹂躙劇を見せた。そう考えるのが妥当だ。私でさえ夢と現実と境が微妙だったから寝ていると思われただろう。黙っていよう。嘘は苦手なので隠し通せる自信は無いけれど。いつか秘密を話してくれた日に話そうと思う。



「見つけたっ! こっち来いっ!」



 と遠くから声を上げている師匠がいる。私を呼んでいる訳じゃ無さそうだけど誰を、呼んで、いる、のか。


 ハイテンションで呼んできたのはこの魔物の群れのボスと思わしき魔物。本で少し見たことがある。体長こそ大きくは無いが賢くヒトの言葉を話せるようになる知能ある魔物、ゴブリンの進化の果てであるゴブリンキング。


 師匠は滅茶苦茶良い笑顔でゴブリンキングの攻撃を受け流しながら私の元まで下がってきて、ニコッとそのまま笑いながら、



「よしっ、交代!」


「え? え?」



 肩をポンと叩くと[緑]魔法で跳んでいく。一瞬で師匠の姿が見えなくなる。


 驚く暇もなく視線を戻すと、ゴブリンキングは私を見つけるやいなやニヤッと笑い戦闘体勢に入るので私も今まで仕舞っていた杖を取りだし自分の胸辺りで構える。いつの間にか周囲に明かりを持った魔物たちが取り囲んでおりシーンとする中、私は先制攻撃とばかりに水の刃を打っていく。ゴブリンキングは持っていた剣でいなしながら距離を詰めてくる。威力弱めで打ったけど簡単に避けられたりするとこの魔物の力量が高いことを思い知らされる。後ろに少し下がりながら水の壁を作り出し視線を遮る。その間にゴブリンキングの背後に回ろうとすると不意に下からの危険を察知し横っ飛びで回避してごろごろと転がると足元から土でできた槍が飛び出てきた。



「イマノヲ ヨケルカ。ナカナカニ ツヨソウダ。」


「それはどうも。.....本当に喋るんだ。」



 冷や汗を垂らしながら体勢を整えるとゴブリンキングは先程私が立てた水の壁の直前で立ち止まっていた。ふうと一息つけて今度は私の方から距離を詰める。そして私の十八番であるのにあまり使いどころが無い『スカイドルフィン』を発動させながら距離を近づけていく。


 ゴブリンキングは先程の水の刃より脅威と取り後ろに下がろうとするので泳がせる様にして地面に付く寸前に跳ねさせる。私は一旦立ち止まりそれを操作しながら更に[青]魔法を発動させ円形状に出来ている場所にのみ水を大量に降らせ地面を濡らしていく。


 そして大分濡れたところでゴブリンキングにイルカで誘導させながらタイミングを見計らい[黄]魔法で雷を流す。私はこの[属性色]のお陰で少しの雷は耐性がある上、自分の電流じゃ自分にダメージが入らないことも知っているので容赦なく使っていく。丁度地面に足が付くタイミングで流してダメージを与えていく。時にイルカが地面をすれすれで泳がせるので電気を帯びながらも相手への攻撃の隙を与えないばかりかこちらに接近されない距離感を保ちつつ攻撃をしていく。



 優勢に見えたが突如ゴブリンキングは剣を鞘にしまうと凄まじいスピードで一直線に私を狙ってくる。私は膝立ちで地面に手を付いていた状態でその突然の行動に魔法が間に合わず咄嗟に両手をクロスさせるとその腕に凄まじい威力のパンチが飛んできた。


 感じたことのない痛みに悲鳴も出せず意識が飛びそうになるも更に攻撃を加えようとしている姿が見えたので、この戦闘で幾度も作り、息をするように使えるようになった水と光の槍を同時に作成し撃つ。余りの発動速度と攻撃速度に攻撃モーションに入っていたゴブリンキングは避けることが叶わずいくつかの槍が体を刺していく。私は自分の腕に回復魔法を掛けながら追撃をするため槍を生成しては放っていく。


 ゴブリンキングは体に槍が刺さり血を流し更に追撃するために放った槍を剣を再び抜きいなそうとするがあまりの数にいなせず、避けきれず体に刺さっていく数を増やしていく。どんどん血を流しているのを気にせず私は追撃の手を緩めずに攻撃を加えようとする。すると何を思ったのかゴブリンキングはニヤリと笑ったので何か来ると思い身構えたがその察知は遅くその場から慌てて飛び退こうとしたが一歩遅く足に土の槍が刺さる。



「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ。」



 あまりの痛さに私の絶叫が響き渡る。腕は何とか治せたので足を治しに入るが一瞬緩んだ追撃を敵は見逃さず再び接近してくる。回復魔法はあまり使っておらず他のことにも魔力を使うし、慣れていないので治るのが遅い。足が全く動かず座り込んでしまい思わず恐怖を支配しそうになるがふと思い出す、ここへ向かう馬車の中。



―――この一件が終わったらそのままウィッチェに行くか?



 そんな何気ない師匠の言葉。それがこれからも自分は生きて良い人と認められ、頑張れるための活力となった。日本で先なんて考えられなかった私にとっては大事な〝未来()〟の話。



―――キィィン



 肉が切れる音じゃない。甲高い音を立てたのはゴブリンキングが剣を振り落としたのを座ったままの私が杖でガードしたから。上段から放たれたそれは威力が高いが私はそのままその攻撃を受けるほど素直じゃないし、護身の為の剣術をわざわざ習った訳じゃない。キッと気持ちを入れ直し、剣を受け流しすぐさま魔法を発動させる。まずは距離を取りたいので水の球を打ち込んでいく。あまりの数に避けきれず当たる度に後ろへ下がるしか無くなったゴブリンキングを見ながら辛うじて立てるほど回復した足を震えさせながら立ち上がり見据える。ハアハアと荒れる息を深呼吸して立て直す。


 また静寂が訪れる戦場。多分そろそろ決着が付く。ゴブリンキングは大量の怪我による出血過多。私は魔法を大量に使用した事による魔力切れ。ストック分もかなり排出させて残り少ない。なのに、私はこの重要な局面で新しい事を試そうとしてた。ステータスなんて確認してない。けど何故かやれる自信があった。


 最初に動き出したのはゴブリンキング。大分地面がぬかるんでおり濡れている。乾いた地面と違い何度も足を付けて走ってくる。私はイメージを補填するため思わず大声を上げて魔法を発動させていた。



「『凍りぃ、つけぇぇっっっ』!!!!!」



 そう言って杖を持ったまま両の手を地面に付いて魔法を発動させる。その瞬間少しずつではあるが地面が凍っていき次第にスピードを上げて凍らせていく。


 ひんやりとした空気を感じ俯いていた顔を上げると私が[青]魔法で水を飛ばしまくったのでゴブリンキングだけでなく円形状を作るために、近くにいた魔物も凍りついていた。ゴブリンキングは走っている体勢そのままに周囲の魔物は訳が分からないままの表情で凍っている。



「ははっ。やった。成功、した。」



 脱力しそうなのを抑えてふらふらと立ち上がり凍っているゴブリンキングの元に近付いていく。残り少ない魔力を使い[青]魔法で水の刃を打ったつもりが氷の刃になっていたが、その最後の攻撃がゴブリンキングを凍らせた氷ごと切っていきその首を跳ねた。


 ハアハアと荒い息をして首を切り落とし、敵を倒したことに安心するとともに、魔力が完全に切れた事もあり、騒ぐ魔物の声の一切が耳に入らず、意識が途切れその場に倒れこんだ。







 頑張って戦闘シーンを書きました。自分で読んでても思ったけど結構分かりにくくなってしまったかもしれないです。

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