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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第3章
32/103

30話 もう一つの顔と夜の蹂躙戦


 がらがらと大きな音を立てながら進んでいく馬車。3日目も変わらないスピードで走っていく。朝食後、直ぐに馬車に乗った私は師匠の体調が良くない事もあり今日は本を読まずに様子を見ながらゆっくりしていたら発進した。流石に揺れに慣れることは無いし、少し眠かったものの、師匠の朝の様子を見てしまうと、心配だったので様子を見るために頑張って起きていた。けれどもそれは最初だけ。......今は目をぱっちりさせている。だって、この状況は誰が予想できただろうか。昨日みたいに寄り掛かって寝ているだけならそこまで気にしなかったんだけど。


 チラッと下を見ると寝ている師匠の顔があった。寝ている顔でも凄く青ざめた表情を見せている。私が腰掛けている椅子の目の前には今日の朝、師匠が握っており私が初めて見た黒剣が立て掛けてある。そんな事は良い。乗り込み発進した後、眠気でウトウトとしつつぼんやりと外を眺めてゆっくりとしていたら、ズルズルと師匠が横に倒れていき隣に座っていた私の膝の上に頭が置かれた。一瞬ビクッとして反対側に腰掛けようと思ったが、時に顔を歪ませて苦しそうな表情で寝ていたのでどうにも動く事が出来ずに硬直していた。仕方なく膝枕をしている状態でいるしか無く今は覚醒した頭で外の様子を眺めていたのだった、時折溜め息を洩らしながら。


 お昼を少し過ぎたくらいで目的地に着いた。しかし師匠は起きる気配が無く、起きた時に無理してふらふらされるのも困るので馬車が止まった時、外の騎士に声を掛けサークレルトさんを呼んでもらう様伝えると足音が徐々に遠ざかって静かになった。前から気になっていた長い髪を触ろうか迷って意を決して触ろうと思い手を近付けると、



「中に入ってもよろしいですか?」


「ヒィエッ! ええ、大丈夫です。どうぞ。」



 サークレルトさんが到着した様で急に声を掛けられ驚いた私は変な声を上げたが取り繕い中に入る様促す。「失礼します。」と言って入ってきたサークレルトさんは目を丸くして驚いた表情を見せたが師匠の顔色を見ると直ぐに真剣な表情を見せた。



「珍しいですね。こんなに無防備な姿で寝ているのは。誰かが近付いたりするだけで寝ていても素早い反応を見せるんですけど。」


「サークレルトさん、単刀直入に聞きますが、昨日の夜何か有ったんですか? 師匠は結局話してくれなかったので何故こんな様子なのか分からないんです。」


「そうですね。ユリナさんでしたら話しても構わないでしょう。そこまで体調が優れない様子に関しては残念ながら私にも分かりません。ですが昨日の夜、結界の外なのですが魔物が襲いに来て騒いでいたのです。それを対処するため私とノトさんで向かうと数百の魔物がそこにはいて此方を見つけた瞬間に歓喜と殺気を出してきたんです。魔物の行動などを考えると不自然な点は無いんですけど.....。」



 そこまで話すと困ったような表情を見せて言葉を切る。視線も激しく泳がせながら私に質問をする。



「ユリナさんはノトさんが剣で戦っているのを見たことが有りますか? 勿論魔物が相手の時、ですが。」


「いえ、魔術はよく見せてもらいましたけど剣に関しては護身として教えてもらった位なので魔物相手では無いですね。」


「......とても言いにくいんですが少しノトさんへ抱くイメージというか感情が変わるかもしれませんが、」


「大丈夫です。聞かせて下さい。」



 強い意志を持って訴えるとサークレルトさんは深呼吸をしてから観念した様に話をする。



「私は今回だけでなく、以前もノトさんの剣技を魔物相手に見たことが有るんですよ。流麗で無駄がないしなやかな動きに感動し慕っています。ですが彼は変わるんです。」


「変わる?」


「ええ、嫌々言いながらも剣を私に教えていた時と魔物を倒している時の表情が。普段の面倒そうな表情なんて無くなるんですよ。最初見たときは剣技に反してその表情がとても恐ろしかった。.....笑うんですよ。」


「え?」


「魔物を相手にする時の剣を持つ表情が楽しそうに笑っているんですよ。どんなに相手の殺気を受けても、です。昨日も例に漏れず笑いながら敵を倒してました。数百の魔物をたった数十秒で。」


「.....。」


「でもその後については昨日はいつもと様子が違いましたね。」


「どんな風だったんですか。」


「いつも倒し終わると途端につまらなそうな表情に変わって直ぐに魔術で燃やしちゃうんです。ですが昨日は余韻に浸ると言って暫くその場に留まってました。終わった後も満足そうな表情を浮かべてましたね。私は起きていた他の騎士達に事の顛末を伝えるため戻ったので後どうされていたかは分かりませんが。」



 そう締め括ると辺りに静寂が広がる。結局体調が悪い理由は分からなかったけど豹変するなんて初めて聞いたし今までその片鱗さえも見たことが無かった。聞いた言葉を自分の中で反復させて考えを巡らす。



「ふぅ、ノトさんには結界を張ってもらったりして大分消耗させてしまったでしょうから私たちの方で罠だったり防壁を築いたりして戦闘準備をしておきますのでユリナさんもお休みになってて構いません。それでは。」



 そう言い残し馬車から出ていったのを座ったまま頭を下げ見送り再び静寂な空間に戻った馬車内で師匠の表情を見ながら考える。驚いたし想像も付かない。でも師匠から話して欲しかったという気持ちが少しだけ有った。



「.....今の話を聞いて幻滅でもしたか?」


「! 師匠、起きてたんですか。」


「まあな。サークレルトが来た辺りから起きてたよ。どんな話をするか気になって黙ってはいたが。で、どう思ったか聞かせろよ。」


「幻滅なんてしませんよ。色々な表情を見せてる師匠が今更一つくらい表情のレパートリーを増やした位では、ね。驚きはしましたけど。ところで、」


「なんだ?」


「いつまでこの状態でいれば良いんですか?」


「? 俺が元気になるまで?」


「~~~っ! こんな時にまでふざけないで下さいよ!」


「ククッ、冗談だって。」



 「よいしょ」と言いつつ起き上がるがまだ表情は良くないし体は怠そうだ。昨日の夜の事が有ったので無理はさせたくない。



「師匠、無理しちゃ駄目ですよ?」


「おー、じゃあまだ寝かせてくれるのかなぁ?」



 ニヤニヤとさせながらそんな事を言う師匠に私は顔を真っ赤にさせながらそっぽを向いて小さな声で答える。



「もう少しだけなら....良いです、よ?」


「.....大丈夫か?」



 親切心で優しくしたら真面目な声音でその反応って。その大丈夫は頭の事でも言ってるんでしょうかっ! 半目で此方を見るなっ!


 そして、普段と変わらない様子に私は思わず笑っていた。そんな様子に増々疑問の表情で見てくる師匠。これから戦いをする様な雰囲気じゃないけど、楽しいなら良いよね。



 師匠が外の様子を見たいと言うのでゆっくり歩きながら戦闘するポイントまで向かう。そこではそれぞれ自分の得意な分野で作業をしていた。見通せる場所に師匠を腰掛けさせ私は立ったまま様子を眺めていた。


 そんな時不意に一瞬では有るが察知に引っ掛かった。一瞬だったため詳しい場所は分からなかったがかなり遠く。方向は分かったので視線を向けるが特に変な様子は無さそうだった。首を傾げて視線を作業に戻そうとした。すると横目で見えた師匠の顔と雰囲気が怒気を纏っていた。さっきの察知を感じ取ったと思うが何をそんなに怒らせたのだろうか。無理にでも立ち上がろうとしたので私はそれを止める。じっと気配を感じた方を見ていたが私の顔を見てから再び座り込んだ。もう一度察知した方を見るも特に変わった様子は見受けられない。


 それからは何事もなく作業を終え夕刻になると作戦会議を全体でするため集まった。魔物達は私たちがいる場所に向かって来ているとの事、数は7000弱。日数を掛けて数を減らしながら戦う。もしかしたら消耗戦になるかもしれないが正面から行って勝てる数では無いこと。スペックの高さを生かせば余裕に勝てるとサークレルトさんが皆に言い切ると指揮は高まり、いくばかの不安が無くなった様だった。魔物の進軍を見ている者からの報告によると早ければ夜、遅くても次の日の昼には接敵するとの事なので交代で見張り、戦い、睡眠を取るそうだ。勿論だがそこに私は含まれていない。まだ戦闘についてどうするか聞いていないが師匠の体調じゃ訓練をしようと言ったとしても難しいと思う。



 夜。見張りをしているクラスメイトと騎士が喋っている声が遠くから聞こえる。私は何をしているかと言うと特に何もしていない。これだと語弊があるかもしれない。ぐったりして木の幹に体を預けている師匠を看病(?)というか近くに座って様子を見ている。師匠は私に寝ろと促すがここで私が寝ると何処かに行ってしまう気がしているので眠いのを我慢していた。



「作戦会議では出現時間について色々言っていたが明日の早朝に敵は来る。俺がこんな様子でもみっちり修行は付けてやるから寝れる今に内に寝ておけ。」


「それだったら師匠の方が寝てくださいよ。そんな様子で夜中ずっと起きてるつもりですか。」


「当たり前だろ。索敵範囲もう少し広げてみようと思ってるんだからな。何があるか分からないし。終わったら寝るさ。」


「そういう無茶するから体調悪くなるんですよっ。」


「………しゃーねえ。強行手段だ。」


「何、を!」


「『眠れ』」


「ま、ほう、し、しょう。」



 強制的に眠らされ元々眠いことも有り倒れこみ意識を手放す。








「おっと。」



 そう言って倒れてきたユリナを支える。眠いのに無理していたから魔法を使い強制的に眠らせた。重い体を動かしユリナを設置していたベッドに寝かす。そして黒剣を手に持ち先程の不調が嘘の様に木々の隙間を勢いよく縫っていき夕刻前に感じた気配の方へ向かっていく。そして気配遮断を発動させた状態のまま木の枝に立ち少し高所から見下ろす。



「ははっ、こりゃ大量だな。これなら満足してくれるだろう。」


《あの者、7000弱と言ってましたがこれは。》


「そうだな。いろんな場所に巧妙に気配を隠して潜んでんな。気付けないのもヤバイけど上手く隠れられてるし仕方ねえか? まあ魔物共には俺に見つかってご愁傷様って事で。」


《どれだけ殺る予定で?》


「取り敢えず俺自身が満足するまで、かな? 触発されて皆見てる場所で暴走なんてさせたくねえし。ここいらなら多少暴走しても視線が無いし大丈夫だろうしな。....そんじゃあ、殺るぞっ。」


《承知しました、主様(マスター)。》



 俺の右目が煌々と紅く輝いていく。そして黒剣を抜いて姿を変える。その姿は黒い大鎌。それを肩に担ぎ気配遮断を解いていく。



「俺を愉しませてくれよ?」



 口の端を吊り上げ、呟くと一気に下降し鎌を振るう。一気に数十体の魔物が吹き飛ぶ。俺はそれに目もくれず次々に頭と体をバラけさせていく。血が吹き荒れる戦場で魔物の悲鳴と俺の笑い声が響き渡る。1000程はいただろうか。それだけの魔物を一方的に蹂躙していると隠れていた他の部隊の魔物とおぼしき奴等も襲いに来たので容赦なく首を跳ねていく。


 後に残ったのは頭と体が別れた大量の魔物の死骸と血溜まり。鼻につく血の臭い。大量の返り血を浴びながらも恍然とした表情を見せて大鎌を肩に担いだまま上を向いている俺。



「はぁー。思いの外愉しかったなあ。あれだけ殺れば流石に満足してくれたっぽいし触発も無いだろう。大分大人しくなってくれたし。」


《お疲れさまです、主様(マスター)。》


「おう、流石に疲れたし戻って少し寝るか。」


主様(マスター)、僭越ながら申し上げますが血を拭ってから戻る事をお奨めします。また臭いも残るかと思いますのでその辺りきちんと配慮して下さい。》


「う゛ぇっ。こんなに血浴びたのかよ。昨日よりひでえな、こりゃあ。」


《昨日の比では有りません。数は数十倍ですから。》


「さっぱりするかー。」



 先ずは敵を燃やす。そして水を頭から被って血を全て流しきり服も着替えて臭いも、多分大丈夫か? 今まで着ていた服も燃やして大鎌から戻した剣を握り締め、行きと同じスピードで戻っていく。さて明日はどう修行して強くさせようかな。楽しげに笑いながら戻ってきた俺はユリナが寝ているのを見て地面に腰掛けてベッドを背にしながら剣を握って少し眠った。







 次回、修行(戦闘)開始っ!

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