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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第3章
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28話 向かう先と恐怖

第3章スタートです!


 ”魔王”と名乗る魔物の出現騒動。その討伐に向かうのは今回は召喚されし勇者達。普段、強力な魔物の大群が現れた時にはギルドのランクが高い冒険者が集まって討伐しているそうです。


 出現した場所は馬車で3日ほどかかる所らしい(馬車とは言ったが引いているのは亜竜と呼ばれるもので凄まじいスピードが出ている)ので、現在はごとごとと音が鳴りそれなりに揺れている馬車の中にいます。幾つかの馬車が並んで目的地へ向かっていきます。そんな様子をぼーっと見ています。


 と、考えながら現実逃避気味に外を眺めていたが馬車の中にずっと続いている重苦しい雰囲気で半目になりながら視線を戻す。先ず不機嫌を隠そうともしない表情で苛々しているのか少し足を組ながら貧乏揺すりをしている師匠。そんな様子の師匠の前に座るのは騎士団長、サークレルト=ファイユンさん。名前を忘れていた私に改めて自己紹介してくれた『氷の貴公子』と呼ばれている、この雰囲気に負けず笑みを浮かべている男性。その名の通り氷の魔法を使いながら戦うとか。そして最後、私の目の前に、師匠をチラ見しながらも私の動きをじっと見て目が合うとニコッと微笑む勇者、天野輝君がいた。そして走る馬車も先頭という。どうしてこうなった、と声を出したい。事の発端は今日の朝、会話でのこと。



「別行動と言われても目的地は同じですから敵に対しどう動いていくか作戦会議とそれに対してのノトさんの意見をお聞きしたいので同じ馬車に乗ってください。」


「は? 嫌に決まってる。」


「お力を貸すと陛下の前で言いましたよね? しかも私情は挟まないと。この事を陛下に報告しなければなりませんね。仕方有りません。」


「チッ……お前もファーリアも嫌いだ。」


「そう仰らずに。」



 そんな感じで過去の自分の発言に後悔をしながら時を同じくしている。だが、大分走ってきたというのに誰も何も言葉を発しないので重苦しい雰囲気が続いていた。



「おい、いつになったら作戦会議とやらを始めるんだ。さっさと話せ。まさか何も考えていないとかは無いだろうな?」


「そんなことは有りません。ノトさんが不機嫌そうでしたので話を振ってくれるのを待ってました。」


「はぁ? 俺のせいって言うのかよ。もう降りて良いか?」


「降りてどうするんですか?」


「馬車の上で寝る。じゃあそういう事でっ。」


「ちょっと待って下さい。話しますからまだ行かないで下さい。」



 師匠はおもむろに馬車の扉を開けて出ようとしたので慌てた様子で止めに入るサークレルトさん。その様子を睨むようにして見ている勇者、思わず溜め息を吐く私。大丈夫かな。



「冗談だ、では内容を聞こうか。」


「貴方が言うと冗談に聞こえないんですけど.......はい、場所はエルシリラより西方に位置する”ウィッチェ”という魔術大国と呼ばれている街の方面です。かつては魔法が栄えていた国ですが今は英雄達が編み出した魔術に代わった街ですね。ウィッチェとエルシリラの中間地点での戦闘になります。どうやら今回の戦闘に関して勇者らの実力を見させてもらうとかで一切手を出さないそうです。他の大都市も同じ考えの様です。」


「ふーん、一切手を出さないのか。それにウィッチェの方面というよりウィッチェの方に近い位だな。」


「そして、数ですが、報告によれば7000弱とか。かなりの規模になります。しかも統率が取れていますから突っ込んでいっては先ず勝てないでしょう。」


「それで、どうする気だ。」


「此方に有利な地形を作成して少しずつ数を減らしていこうと思います。ローテーションを組んでいけば消耗を抑えるのに丁度良いかと。日数はかなりかかると思いますが。」


「その作戦に派手さは無いぞ? 堅実だけどな。」


「分かっています。ですが正面突破で勝てるとも思えません。ですので地味でもこれでいこうと思ってます。その為の準備も彼らの力なら直ぐに終わると思いますし。」


「そうかい。」



 この世界の地図を開きながら細かいところを煮詰めていっているのを私は黙って聞いていた。作戦自体は地味では有るけど圧倒的数に対抗するには良い作戦かもしれない。勉強になるなぁと思って聞いていたらどうやら詳しく作戦を立て終わった様だ。



「そういえばお二人はどうされるんですか。」


「え、あー? 特に考えてないな。」


「今の作戦を乱さないようにしてくださいね。」


「おう、分かってるよ。んー。」



 話が終わったこともあり師匠は何やらぶつぶつと考え始めたのでまた静かになる。私も特に話す事も無いので再び外の方を眺めて考えに耽る。新しい街の名前”ウィッチェ”が気になる。かつては魔法が栄えていた大国。【魔女狩り】の一件は当時のウィッチェが有る場所で起こった事。英雄達が編み出した魔術により魔法に代わり栄えた場所。どういう場所なのかとても気になる。行ってみたい。その考えが通じたのかは分からないが師匠が口を開く。



「......ユリナ、この一件が終わったらそのままウィッチェに行くか?」


「え? 良いんですか? 気になっていたので行きたいなと思ってたところですけど。」


「それじゃあ丁度良いな。陛下の方にはサークレルトが報告してくれれば済む話だしな。それに必要な荷物の方は基本的にバッグに入れてるし無いものはあっちで揃えれば良いし行くか。」


「はいっ!」



 嬉しさを隠しもせず色々と思いに馳せていると不意に目の前から声が掛かる。



「...不安にならないのか?」



 そんな事を小さい声で言ったのは勇者。今は視線をさ迷わせて緊張した面持ちでいる。契約以来ガツガツと来なくなったのでうざいと感じる事が無くなり安心してた。何時もなら無視していたかもしれないが、私は勇者に言葉を返していた。



「うーん、どっちかと言えば私も不安だよ? けどそんなに暗くなってちゃ何より楽しくないもの。未来を考えるから今を頑張ろうと思えるし、何より私には頼りになる師匠がいてくれるし。テキトウな所もあるけけど充実した毎日を送れているのも師匠のお陰だし。召喚された時に比べたら今は大分不安は少ないかな。日本で毎日を過ごしている時や城で皆といる時よりかはよっぽど今は楽しいしね。」


「........っ。」


「ユリナ、考え事してて聞こえないとでも思ってるのか? おい。」


「え? 私何か言いましたっけ?」


「俺の事、テキトーとか言っただろうがっ!」


「......私のログには残って無いので忘れました。」


「その間は何だ。ったく。」



 エヘッて感じで笑ってウインクすると師匠は呆れながら聞くのを諦めた。そんな様子をじっと見ている勇者。重苦しい雰囲気が大分なくなり、幾らか空気が良くなった気がする。


 そんな雰囲気の中進むと、外が暗くなって来たため手頃な街や村も無く野宿する事になった。元々その予定ではいたが、いざ野宿と言われると戸惑いを隠せない人が多いみたいだ。そんなざわつく様子を見ている私も例外無く馬車の猛スピードによる酔いと疲労感からぐったりしていたし、野宿に戸惑いを感じていた。そんな中、元気そうにしているのは騎士団長サークレルトさんと師匠のみ。いや師匠は疲れた、眠い、怠いの三拍子が有るから元気というかいつも通りと言えるだけなんだけど。幾人か付いてきて手綱を引いていた騎士達だって疲労感は有るようで少しぐったりしている様子が見える。



「あぁ? んな面倒なことは、こいつらにやらせろよ。それも大事だろう。何でも俺に頼むなよ。」


「この状況を見てそんな事言わないで下さいよ。....それでは、雑務とどちらにしますか。」


「因みにその雑務とやらの内容は?」


「野宿用に大きなテントを立てたり食事を用意したり亜竜達の餌やりとか.......」


「それは無理。だって人数分だろ? 俺は俺のやるべき事に精一杯。これ以上面倒見る奴は増えなくていい。」


「それではお願いしますね。」



 少し離れていた私は遠くからそんな二人の会話が聞こえた。師匠は舌打ちと溜め息を吐きながらサクサクと音を立てながら歩いて行き、私達から離れて行ったので追い掛けようとしたものの疲労感から立ち上がる事もままならず座り込んで呆然と見ていた。


 暫くすると少しげっそりした様子で戻ってきた。何やらぶつぶつと言っている様にも見えるが何か有ったのだろうか。その間に騎士達は色々と準備を進めており食事を作っていた。それを一瞥した師匠はチラッと私を見る。疑問符を浮かべていると食事を作っている騎士含め騎士団長に言った。



「俺とユリナはいらん。それにここで休む気も無い。此処は居心地が悪いから遠くにいる。」


「んっ!?」



 私の驚きの声も周囲のざわつきも無視して立てずにいた私をひょいと担ぎ歩いて行く。サークレルトさんだけが動じずに笑顔で手を振っていた。



「師匠っ!? 何処行くんですかっ?」


「彼奴らから離れたとこ。ユリナは彼処に居られたのか? なら戻っても良いが。」



 そう言いながら私を降ろす。魔法で指先に火を灯してそんな事を聞く師匠。周囲を警戒しているのかキョロキョロと視線を巡らせている。そんな様子を見ながら師匠の言葉をよく思い返して考える。彼処には勇者達つまり私を苛めていた人達もそれを黙認していた人達がいるのだ。「そんな人達と居られるのか?」そう聞いたのだ。その意図を察して周囲を警戒するのをやめて小さな灯りに見える師匠の真剣な顔に答える。



「いいえ、その必要は無いです。ありがとうございます。」



 座ったまま礼をすると溜め息を吐く師匠。そして何も音が聞こえなくなり灯りも、立ったまま遠くの方を見ている師匠の手の小さな火の灯火のみ。凄く暗い。そして静か。ドクンドクンと脈を打つのは自然と早くなっていく。視線もさ迷わせてしまう。



「....。」


「....。」


「あのー? 師匠ー?」


「....。」


「師匠? 聞こえてます? 何か喋ってくださいよー。」


「どした?」


「いやー、そのー。」



 はっきり言うと私は暗い所は、苦手だし嫌いだ。なので静まり返り灯りが少ししか無いこの場所は正直言って落ち着いた今は凄く怖い。不安で俯いていた顔を上げて師匠の方をチラリと見ると私の様子を横目で見ていた師匠の顔はニヤニヤして笑うのを堪えていた。その瞬間私は察した。



「わざとですねっ! 早く灯りとか準備して下さいっ! 人の反応を見て楽しまないで下さいっ!!」


「何だ、バレるの早かったなぁ。俺としてはオドオドしてる様子もう少し見ていたかったんだがなぁ。」


「人をおちょくるのも大概にしてくださいっ!」


「おいっ、魔法は反則だろうがっ。そんな事をするために教えた訳じゃねえぞっ。」



 私は若干涙目になりながら何度も水の球を打ち出す。文句を言いつつ全て避ける師匠。すると先程よりも悪戯っぽい笑みを深めてニヤリとした瞬間、私が打ち出した一つの水の球に灯していた火を当てて消した。



「あ゛あ゛あ゛ああああああああぁぁぁぁぁーーーー!!!」


「プッ、アッハッハッハーー」



 そんな大声を上げ体育座りで頭に手を置き縮こまる私に面白そうに笑い出す師匠。そんな悲鳴と笑い声はどうやら勇者らにも聞こえたようで、



「何だっ、今の声は。もしやっ、」


「皆さん、大丈夫ですよ。此処には彼の張った結界が有って魔物に入られる事は有りませんし、きちんと効果範囲内に離れている筈なのでゆっくりしていて下さい。」



 と戦闘準備に入る者達に対して冷静に騎士団長が言っていたらしい。





「あれは酷いです。」


「火に水打つユリナが悪いだろ? 考えりゃ分かる事なのに。どんだけ頭真っ白になってたんだよ。」


「私にだって怖いもの位有りますよっ。なんでそんなに子供っぽいんですか。」


「面白そうだったから、つい?」


「はいはい、そうですか。」



 周囲の木からランプを下げ明るくなったちょっとした広さの円形状の場所に机や椅子を出して環境を整えた師匠に、私は椅子に座ったまま文句を言う。師匠は先程の出来事を思い出しながらクツクツと笑いながら料理している。本当は私が担当する筈だったが如何せん馬車での疲労と先程の恐怖から全くと言って良いほど動けなくなってしまったのだ。あんなにふざけて悪戯したのに今は私に「座ってろ。」と言いつつ珍しく師匠は自分で動いている。面白そうに鼻唄を歌っているのが余計に腹立たしくなるのだが。勿論ご飯は美味しかったので文句が言えない。


 食べ終わるとそそくさと片付けをしてテーブルなど全てしまうと何故かベッドを取り出す。何故にそんな立派なものがぽんぽん出てくるんですかね!? という疑問を飲む。破天荒ぶりは今に始まった事でも無いので。というか何故ベッドが一個なのでしょうか。



「さっさと寝ろ。明日も朝早いんだ。」


「え、でも、師匠は?」


「何時魔物が来るか分からないからな。魔除けの結界が有っても何が有るか分からないから起きてるさ。」


「だったら、」


「何言ってんだ。そんな疲労している状態で見張りが上手くいくかよ。どうせ俺は馬車の中で寝れるし気にすんな。」



 シッシッと手を動かしながら師匠は木の枝に腰かけて幹に体を預けている。頭の後ろに手を組んで遠くを見ているので私だけが寝てしまうという後ろめたさは有ったものの、師匠が近くにいてくれるという事から私は安心して疲労から直ぐに深い眠りに付いたのだった。







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