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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第2章
25/103

24話 迷宮攻略と常識欠落者


 25階層目に入ってくると少しづつ敵と戦闘するようになってきた、苦戦はしていないけど。それでも私の気配遮断が効かないのかまだ練度が足りないのか。とは言えまだ余裕が有るのでさくさく進んでいることには変わり無い。


丁度昼時なので歩きながら、もきゅもきゅと串焼きを頬ぼって食べている。けど急に襲われる事もあるので回避したときに何度窒息しそうになったことか。---後で、師匠に歩き食いしている途中に強大な敵にあったらどうするんだと、しこたま怒られたと同時に実際に私が窒息しかけていた状況を思い出して爆笑していた。怒ったり笑ったり忙しい人だ。


 何て馬鹿な事をしながらついに30階層のボス部屋前に辿り着く。そしてまたいつの間にか隣にいて串焼きを食べている師匠を見て吃驚しながら中に入っていく(人の事言えないとはこのこと)。例の如く扉は閉まり、その扉の前に立ってモグモグしている師匠。そして前の層の如くボスが現れる! 筈だが何故か出てこない。んー? おかしいなあと思っていると不意に笑い声が響く。そして私は感じた危機から咄嗟にその場から回避するも風の刃が打たれ、少し服を掠めるが怪我は無かった。


思わず師匠の方を見ると右手を前に突き出した状態だった。「何でっ!?」と聞こうと思ったけど顔を見て言葉が出せなかった。激しい怒りと殺気を纏い何もない空間を睨んでいた。そして聞いたことのないドスの聞いた声で言葉を発した。



「テメェが何故ここにいる? 最下層にいる筈だろう?」


《ちょっと挨拶に来ただけだから~。そんなに怒らないでよ~。それに、実体じゃないから攻撃しても意味ないよ~。暇だったし漸く強いオーラを持っている奴が来たと思ったら―――様だし~。ちょっと遊んで行こう~?》


「俺に意識誘導させておいてどの口が言うか。当たらず済んだが何か迷惑を掛けやがったらお前らを完全消滅させると言った筈だが忘れたか? それともそれを望んでいるか?」


《んん~。折角自由にしているのにそれは嫌だなあ~。謝ったら許してくれるかな~。ボクはそうで有って欲しいと思ってるんだけどなあ~。》


「そのウザい口調と止まらない喋りを数百年出来なくすることで勘弁してやる。」


《ええー。ちょっとそれは酷いよ~。ボクの自由がなくなっちゃうよ~。アイデンティティーの消失だよ~。考え直して~。》


「じゃあお前の能力でここに入る前までの記憶を改竄しろ、迅速にな。そして最下層に行くまで関わるな。それで許してやる。」


《おお~! やったね~、ありがと~感謝するよ~、―――様。それくらいはちょちょいのちょいだよ! ちゃんと最下層まで来てね! 待ってるから、そっちの子も、ね?》


「良いから、早くしろ。」


「???」


《もうちょっと話したかったけど、二人共まったね~!》



 何が何だか分からない内に師匠と小さな男の子の様な謎の声は何やら話していたが、話が纏まると急激な眠気に襲われて私は倒れた。



……………………



……………



……



「ん、んー?」


「おっ、目が覚めたか。大丈夫か?」



 目を開けると此方を心配そうに覗きこんでいる師匠と目が合う。何だかもの凄く頭が痛い。起き上がりつつ頭を振って回りを見ると()()()()()()()()()()()にいた。何で倒れてたんだっけ。確か扉の前に来たとき今まで襲われて来るようになっていたせいか、無事に辿り着けたことで安堵して気を抜いて後ろから魔物の不意打ちを食らってしまった。それを慌てて師匠が助けに来たと記憶が残っている。


ダメージを与えてきたのが頭で不意打ちという事もあり意識を手放したんだっけか。怪我は無いので師匠が治してくれたんだろうか? 何か記憶が混濁している気がする。頭に手を置いて未だ続いている頭痛に顔をしかめながら状況をよく思い出そうとする。何かとてつもなく大事な事を忘れている気がする。



「おーい。本当に大丈夫か?」


「え、はい。大丈夫ですけど。」


「けど、何だ?」


「何か重要な事を忘れている気がするんですよねー。それが何かも思い出せないし妙な違和感も感じるし。」


「本当に大丈夫か?」


「多分。」



 私のはっきりとしていない状態にふうと息を吐く師匠に虚ろな目を向けると「全然大丈夫そうじゃないじゃないか。」と小声で言って私を左手だけで抱き抱える。その突然の行動に驚いて声を出そうとしたら「少し静かにしてろ。これ以上はその状態では進めないから戻るぞ。」と言われ黙って下を向く。確かにあまり力が入らない状態なので師匠に体を預ける。特に何も言わず何故か30階層のボス部屋に入る師匠。「あれ? 戻るんじゃないの?」と思ったが、お構いなしに出てきた敵を、というか出てくる最中に右手を掲げて既に攻撃を加えていたので敵の姿が全部現れる前に倒されてしまった。


そんなのありか!? と驚いた私を他所にボス部屋に出てきた下への階段と魔方陣の2つの内、魔方陣に近付いていき中央に立つと光に包まれ、目を瞑り暫くすると師匠が歩き出したので目を開けると迷宮の入り口まで戻っていた。どうやら転移のシステムがあるらしく一瞬で戻ってきた様だ。


私は師匠に抱き抱えられたまま帰路につく。勿論その状態で歩いているのですれ違う冒険者らしき人や勇者達が戻ってくるのを待ってる一般の人が此方を見るなり目を丸くしたり、にやにやしたりと色々な反応をされた。私は俯いて顔を真っ赤にしていた。師匠は飄々としたまま歩いていたが。端からどう見えるかというのを分かっていないのだろうか。かといって今下ろされた所で力が上手く入らず歩けるかも怪しいので黙っているしかないのだが。恥ずかしいのを隠すため下を向いたまま話しかける。



「師匠、」


「うん? どした?」


「ありがとうございます。」


「それ、何のお礼だよ。何も感謝される事されてないぞ。」


「何となくです。」


「はぁ? 訳わかんねえなー。」



 いつもと変わらない会話にクスクスと笑うと師匠は釈然としない顔をしていた。いつの間にか夕空を見せている空を見上げると師匠もつられて上を見る。斜め後ろに出来ている重なりあう影をちらっと見ながら他愛もない会話をし続けてお互い笑いながら城へと戻ってくるのだった。



 城の中の部屋に着くとベッドの方に私を下ろして左腕を回して懲りほぐしている。それ、重いものを持ったとでも間接的に言っているのだろうか。とは言え運んでもらったので文句をいえるはずもなく黙っていた。



「俺ちょっと出てくるから少し安静にしてろよー。」



 そう言って部屋から出ていくと部屋がシーンと静まり返る。私は横になって今日の事を少し振り返る。すると思い出されるのは心配されて優しくされる自分の姿。もうちょっと迷宮内の事を思い出し、思い、出し?………私迷宮内で苦労せず進んだから何も思い出せない。ただ歩いていただけといっても過言じゃないし。だけど、だけどっ。此方は思い出したくないのぉぉ! ベッドにうつ伏せになり枕をボフボフと音がなるくらい強く叩く。端から見たら完全に不審者。部屋に誰もいないのが救いかもしれない。面倒と言いつつ私に何かあると困る故の対応だろうし、あれが普通、なんだよね。きっと、そうだ。


 現実逃避気味に結論付けてうつ伏せのまま顔だけ横に向く。すると目が合った。誰と? そんなの部屋の持ち主、と。ん゛ん゛? 冷や汗が出てくる。疲れてるからきっと幻を見てるんだ。そう思って一回顔を枕に埋めてまた顔を横に向けると変わらず見てきている。



「ん゛ん゛っ!!?」


「プッ、笑える。」



 ニヤニヤと面白そうな表情を浮かべていたが吹いて笑いを堪えきれず口を抑えて下を向いて肩を震わせている。



「考えてること顔に出すぎ、行動にもか、プッ。面白れぇな。」


「な、何で。え、え?」


「ユリナよ、落ち着け。そういう反応されたら笑い堪えきれん。」



 もう既に笑っているので堪えるも何もないと思うんだけど。用があると少し前に出た師匠が何故かもう戻ってきている。用件そんなに早く済む物だったんですか。いかにも長く出るから安静にしてろという意味に解釈できる言い方じゃ無いですか、あれは。



「あの、」


「何だ?」


「いつから見てましたか?」


「何時から、ね。入ってきた事にも気づかなかったのか。うーん、面白い事してたし秘密だ。ククッ。」


「ぅぅ。」



 若干涙目になる。そのまま腕を使って起き上がる。そしてベッドに腰掛ける。私の様子を見るために膝を折っていたのだがよいしょと言いながら立ち上がり大きく伸びをすると「あっ。」という声を洩らす。



「どうしたんですか。」


「動けるか?」


「多少は大丈夫かと?」


「ん、そうか。じゃあ風呂入りに行くぞ。」


「? 部屋に有るじゃないですか。」


「城の中にある大きな浴槽に、だよ。」


「別に部屋ので良いんですけど。」


「何言ってんだ。この為だけにおどし………じゃなくて頼みに行ったのによ。貸し切りで3時間程使える様にしたからよ!」


「だ、誰を脅したんですか!? 余計入りにくいんですけど。」



 「はははー」と笑ってはぐらかすのでまた何かやったな。と思い、溜め息をしながらも広い浴槽を思い浮かべてちょっと楽しみになってきたのでまだ重い体を動かしてお風呂へ向かう準備を始める。若干ふらふらしてるので心配そうな目で見てくる師匠がまた抱き上げようとしていたので、妥協案としておんぶにしてもらった、嫌そうにしていたけど。いや、今も嫌そうな顔を浮かべてそうだけど心配しているのは変わり無い様で渋々おぶっているみたい。


何かいつも以上に過保護が増している気がしないでもないけど何故だろう。特に思い当たる節がない。強いて言えば頭に不意打ち食らった事くらいだけどそれは私の不注意だし師匠もそれくらいだったらこんなに心配しない気がする。結局何がこんなに心配される理由が思い当たらないのでそんなに気にしない事にした。



 突然だけど問題が発生。普通に歩いて風呂場まで来たんだけど入口一ヶ所。してその事に疑問を抱かず中に入っていく師匠。あれ? 師匠は男性ですよね。そして私は女ですよね? どゆこと? と思ってたら私は脱衣場にあったソファに置かれ状況が分からぬままいると師匠に疑問顔を向けられた。



「入らないのか?」


「え、いや、えーっと?」


「? 何だ?」


「因みに師匠は此所にいるおつもりで?」


「そう、だが? 何か有るのか?」


「いえー。………これが普通なんですか、ね。」


「よく分からんが3時間だけしかないんだから無駄にすんなよ。」



 そう言い残しさっさと服を脱ぎ始めたのでバッと視線を逸らす。暫くすると大浴場の方に向かっていったのが分かったのでほっと安心してソファの上で体育座りして顔を埋める。常識って何だっけ。何か分からなくなっちゃった。


 そんな感じで葛藤しているけど師匠は出てくる気配が無い。もしかしてだけど時間ギリギリまで入っているつもりなのか!? 長風呂ってレベルじゃなくないか! でも私もお風呂には入りたいし広いだろうからゆったりできそうなんだよね。とは言え私が入ればこ、混浴ではっ? 取り敢えずこのままでは埒があかないので大浴場の方の扉を少し開けて覗くと師匠は此方に背を向けて浸かっていた。若干下を向いているが動く気配が無い。


そして私が見ている事も気づいていない様子なので私は意を決して入りに行くことにした。タオルを巻いて大浴場に入っていったが師匠はピクリとも反応しない。ちょっと様子がおかしい事に気付いて近付いて顔を覗くと目を閉じていた。というかよく聞くと寝息立ててる。……寝てる。お風呂で寝る人初めて見た、いるんだ。


 いつ起きてくるかも分からないので髪や体をささっと流して師匠から遠く離れたところで湯船に浸かる。思わずフーと言ってしまう位ゆっくり体を伸ばした。確かにゆったりしすぎると寝てしまいそうだ。私も寝てしまうと時間を忘れてしまうので全く動く様子が無い師匠をたまにチラ見しながら30分ほど入っていた所で上がりゆったりとした服を着てポカポカした体でソファに体を預けまったりしていた。


 その後約束の3時間まで30分といったところで師匠が出てきたが、いつの間にかソファで寝ていた私はそれに気付かず目を開けたら部屋にいるという状態にややパニックになる。が、師匠にデコピンをくらい冷静になった私はそう言えば気持ちよくてソファで寝てしまった事を思い出し、どう運んだかを問い詰めた。気にするとこなのか?と聞かれた。が、すごい剣幕で私が言うもんだから師匠は吃驚しながらも上体を反らし「こうやって。」と腕で示した。それお姫様抱っこじゃん。視線があるかもしれない所で一番してほしくない奴と思ったけどお姫様抱っこは前に一度したけど?とあっけからんと言われて私の思う意図を分かってもらうことはできなかった。


 いつの間にか出来ていた夕食、夜食に近いが食べ終わると何やら半球体状の艶がある橙色の物を出された。食べると柑橘系、オレンジに近い風味のゼリーだった。ツルンと喉に通る感じが凄く美味しかった。そんな美味しそうに食べる様子をにこにこと見ている師匠の視線に気付き恥ずかしくなった私だったが、師匠は自分の一切手をつけていないゼリーを私に差し出した。私は、子供の様に喜んでしまいそれをニヤリと笑われ恥ずかしさが加速した。


そんなことがありつつ、いつの間にか収まっていた頭痛やだるかった体が改善していたが、疲労が貯まっていたこともありぐっすり眠ったのだった。だからちょっとした騒動が有ったのだが気付かなかった。






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