23話 初の迷宮と実力差
今日は遂に迷宮への攻略に向かう初日! 天気も晴れ渡っており、まるで祝福し応援してくれているよう! なのに、
「うへぇー。ねみぃー。」
と言いながら暗いオーラを纏い大きな欠伸をする師匠。
「眩しいー。太陽なんて要らねえ。ぶっ壊してぇ。」
何か恐ろしい事を、今だぶつぶつと言っている師匠はさておき何故こんな怠そうにしているのかと言うと、チラリと呆れた目を向けながら後ろを見る。
「本当に付いて行くのか?」
「彼奴の本性を見極めなきゃいけないし仲間である彼女が心配だ! すまないが皆、力を貸してくれ。」
と昨日の午後に迷宮前で勇者たちの紹介がされたらしく注目度の高い彼らが周りのギャラリーに手を振りながらも一定の距離を保ちつつ何やら会話をしながら付いてきてるのだ。私も師匠も察知で気付いたのだが丁度私たちが城を出て迷宮の方向に歩いているのに気付き慌てて追いかけてきたらしい。最初は師匠に文句を言おうとしていたが、昨日の事を思い出しチラ見しながらまだ話し掛けやすい私に話してくるという行動に出た。しかし、師匠が睨んだ事で今は後ろの方で付いてきているという状況だ。懲りないというか何というか。勇者たちも迷宮に暫く行くようだったので行き先は一緒なのだがずっと後ろに居られて視線を向けて勝手に仲間とか言われたりしてるとイラッとくるものが有るし、正直私に対する意見が明らかに纏まって無さそうだし、「帰って来いとか言うなよ、迷惑なんだけど。」って仲間内で思ってるのに気付けよ。と、言いたくなるが関わると碌でもない事が起きるだろうから苛つきながらスルーしている。
師匠はその視線からかどうかは知らないが、勇者は絡んで来ようとさえしたのでイライラしたオーラを纏いながら他を近づけていない。たまに舌打ちしながら自然な動作で自然破壊しようとしているのを慌てて止めながら迷宮への入り口へと至った。
「はぁ、うぜえ。なあ、殺してもいいか?」
「うーん。殺るなら私が見てないところでお願いします。流石にまだ人の死亡シーンは見たくないので。」
「おーけー。」
と軽く物騒な話をしていると何かを悟ったように勇者達は後ずさる。寒気も感じている様で幾人かは腕を擦ったりしてる。
「まあ、冗談はさておき、」
「冗談が冗談で済んでいない件について。」
「俺のせいじゃねえし、本題に入るぞ。気配遮断と察知全開で10階層毎のボスだけの戦闘で夕方までに30層以上の攻略だ。魔力の練度を上げつつボスだけの討伐。何と効率が良いんだろう。」
「今最大50階層程で30層以降ってペース早すぎません?」
「下層の方が経験値効率良いから早く下に行きたいって事だよ。言っておくが戻ってくる時間も計算に入れて、だぞ? んじゃ出発。」
と勝手に話を終えて迷宮内に指を指す。師匠が目標を立てた以上出来る範囲なのだろうから深呼吸をして気配遮断と察知をいつもより強めに発動して歩いていく。何やら後ろから「どこに行った? 目を離していなかったのに。あの野郎何かやったな?」とか見当違いな勝手な事を言っていたので早急に師匠も気配遮断を発動。その後、流石にイラッと来ていたのか小さな風の球体を指弾で勇者の額に当てて倒れていく様子を指を指してカラカラと笑っていたのを横目に進んでいった。
中はそこそこ明るく時折魔物の気配を感じながらずんずん進んでいく。察知で勇者達も動き出した様子が分かるがどんどんと魔物に見つかり対処している様なので私は下に降りるための場所を見つけて進んでいく。師匠はもの凄く遠いところにいるらしくたまに察知に掛かるくらいで殆どはいるかいないか分からない状態だった。何故たまに察知に掛かるようになるかというと一応私へといる場所を教えているのと勇者の行動に苛々して乱れているらしい(一応後で合ってるか確認した)。たまに私に対しての感情じゃ無いのにも関わらず固有スキルが反応するし。
魔物には一体も見つからずに(私は見かけたものの彼方にはバレていない)10階層の荘厳な扉の前に来たところで師匠が近付いてきて「10階のボスだ。」と短く告げる。私は意を決して扉を開けて中に入ると扉が閉まる。扉が勝手に閉まるのに気付き、後ろを向いたとき師匠が手をヒラヒラと振っていたのを最後に完全に閉じられ扉が開かなくなった。
そしてふと前方に気配を感じ視線を正面に戻すとそこには一体の魔物がいた。名前は忘れてしまったがゲームで言うオークに似た魔物で体長は2m以上あり片手に木製の棍棒を持っている。私は咄嗟に戦闘体勢に入り私にとっては初めての1対1の戦闘が開始された。
「始まったな。」
俺はそう呟きボス前の扉の前に胡座をかき座っている。たまに目に映る魔物を八つ当たり気味に倒しつつ欠伸をして結果を待っている。誰かがボスに挑んでいる間は入ることが出来ず扉は固く閉ざされる。中で敵、若しくは人が死ねば入れる。ただ一つの命なので死んだら人生ごとゲームオーバーだが。まだ上層は雑魚ばかりなので多分勝つだろうと思いボーッとして時間を潰していると奥の方から集団が歩いてきたのを見て俺は思わず顔を顰める。
「なっ、お前何故ここにいる!?」
あんだけ注意したのにも関わらずお前呼びかよ。と思いながら話し掛けられたのを無視して遠くを見る。勿論そんな態度を取って引いてくれる性格じゃない。案の定、勝手に話す勇者を俺はガン無視し続けた。
「聞いているのか!? ところで彼女は何処だ? 何故お前といないんだ。まさか中にいるのか! 一人で行かせるなんて。そこを退け、心配だから俺が中に入らせてもらう。」
そんな事をギャーギャー言っている勇者とざわつく取り巻き達を耳をほじりながらテキトウに流すとボスの扉が再侵入できる様になった。気配的に倒して先に進んでいるようなので俺は立ち上がりボスの扉に手をかけると勇者が物理的に止めてきた。俺、男同士で手を繋ぐ趣味ないんで離して欲しい。
「俺達が先に行かせてもらう。お前の反応的に彼女はきっと先に進んだだろうから追い掛ける。」
「……本当に面倒な性格してんなー。ああ! そういえば思い出したよ、勇者君。」
「俺の名前は天野輝だ!」
「その辺俺にとってどうでもいいや、聞いてたと思うけどユリナから自分の見てないところだったら君達殺しても良いって許可貰ってるから俺の邪魔するならユリナいないし殺すわ。」
そう言ってちょいと殺気を飛ばしてみたら俺から少し遠ざかり勇者達が一斉に戦闘体勢に入ったので感心しつつ、このままここで時間を取られるのも嫌なので妥協案を提案してみる。普段の俺ならしないだろう提案。
「勇者君。」
「……何だ?」
「その不遜な態度に関してはスルーしてあげよう。俺もお前らも先に進みたい。利害の一致だ。全員で中に入れば良いだろう? どうせ昨日はここのボスは倒したんだろうしもう一度真面目に戦う必要性なんて無いだろう? 提案だよ。どうだ?」
ニコニコと笑みを浮かべる。なのに勇者君たちは得物に力が入っている様子だ。何故だろう。
「.......その提案を受ける。確かにここは昨日突破したし何よりもお前の実力が見れる。その提案をした以上はここのボスを倒してくれるんだろう?」
「面倒だがそれで構わねえよ、瞬きして見逃したなんて言うなよ。後、歳上への態度を改めろ。何度も言わせるなよ。」
勇者の取り巻きの中には文句を言ってるやつもいたが勇者が良いと言ったのであっさりと従い決定したので俺と勇者達30人くらいはボス部屋に入るとボスは再び召喚される。俺は召喚された魔物を見て右手を掲げ魔方陣を一瞬で展開させる。そしてトリガーを引く。
「『氷よ、礫になりて、敵を穿て』」
複数の氷の礫を打ち10秒も掛からず敵を倒す。んー10秒以内とはいえ思ったより時間が掛かったな。前なら1秒も掛からずに瞬殺出来ていただろうに。まあ実力を見せるといった点も考慮したら良い結果か、1秒とか早すぎることで見れなくて何言われるか分かったもんじゃない。
今の魔術だけで殆どが放心状態で動く様子が無い勇者達を置いて俺はユリナを追い掛ける。ユリナはもう13~14階層まで降りている。ボスにはそこそこ時間は掛かっていたが流石にその辺の魔物には後れはとらないだろう。察知も気配遮断も練度が上がってきているので問題も無さそうだ。案外さくさく進みすぎて目標を越してしまうか?
俺がそんな分析をしつつボス部屋の階層を降りようとして勇者達が再起を果たし動き出した。これ以上一緒にいると戦闘回数増えるわ、いちゃもんつけられるわで面倒なのでさっさと気配遮断を発動させて早歩きでユリナの所に向かっていく。何やら騒いでいるが興味ないので俺の耳には届かなかった。
「師匠の気配全然感じないなぁ。下までは付いてこないのかな?」
そう言いながらどんどん先に進み今は16階層にいる。思ったよりボス以外の階層の敵が弱くて一切見つからず進めているのだ。案外余裕だなあと思いつつも気を抜くと対応が遅れる事も有るのでキョロキョロしながらもズンズン進んでいく。
そういえば勇者達というか勇者の中の一部の人間には一泡吹かせてやりたいなー、いや、勇者もイラッとする事してくれるし纏めて成敗か。そうしよう。師匠に後で相談でもしてみて決めよう。師匠なら面倒と言いつつ何かしらしてくれそうだし。
考え事をしながらでも一切ムラなく察知と気配遮断を使ってると不意に察知に引っ掛かった人物がいてほっと息を吐く。やっぱりちゃんと来ていた。でも少しというか上の階層にいたときよりも苛々してる気がする。何でだろう………。まあ、いっか、後で聞こう。
そして20階層のボス扉前に来るといつのまにか師匠が横にいて驚きつつ「俺も中に入って観戦する。」とぶっきらぼうに言ったので何となく何が有ったか察してしまう。恐らくというか確実に勇者に接触されて色々有った。そう考えるのが自然かもしれない。私は苦笑して扉を開け中に入る。師匠は入った瞬間扉の前にドサッと腰を下ろして完全に観戦モードに入っている。
そしてボスは狼型の魔物5体。その中で一体は大きいので群れのリーダーとかそういった所だろうか。今回は私だけでなく師匠も中に入ったので勿論私だけじゃなく師匠にも攻撃しようとする敵がいたが障壁を張ってるらしく欠伸をして片手間にあしらっている様子に敵が苛つき過激な攻撃を加えると行った行動に出た。
一方の私は群れのリーダーの一匹と残り二匹が私の元に攻撃を加えてきたので水の刃を打ったりしているが連携によって中々当てる事ができない。本当なら1対5で戦うべきところが師匠の介入によって1対3という状況になっている。思わず一人で対処する未来が来ていた事かもしれない事実にゾッとしつつ策を巡らす。
そして一つの案を思い付き私は全く当たらないと分かっていながらも水の刃や水の球を打っていく。師匠は私の意図を察して障壁を水から風に変え若干敵を切り刻みながら被害が一切来ないようにしていたので私はニヤリと笑って敵が地面に着いたのを見計らい[黄]魔法の雷を発動させて敵を痺れさせる。すかさず自分で編み出した技を放つ。
「『空を泳ぐイルカ』!!」
痺れている敵が避けれる筈もなく5匹にそれぞれイルカが急所を目掛けて体当たりをする。若干雷も纏わせているので更なる痺れのおまけ付き。リーダーだけは若干急所を外されて立っているので地面に広がっていた水で牢獄を作り出し暴れているのを見ながら私は水の刃で敵の首を切り落とした。他の魔物に関しても急所を狙ったとはいえ生きていると困るので4匹とも首を切り落とすと下への階層が開かれた。
思わず技名を言ったが思ったより恥ずかしかったので今度から言うの止めよう。そう思いつつ師匠の方を見ると魔物の皮を剥いでいた。その光景がちょっとグロかったので目を背けて今回の戦闘について聞いてみた。
「どうでした?」
「んー? 中々良いと思うぞ。俺の事忘れてるかと思ったけどちゃんと俺が切り替えたのを見てからやってたし。技名は笑いそうになったが。」
「黒歴史作ってしまった。そこは触れない方向で。」
「まあ本当なら多対一だから難しかったかもしれないがそれでも倒した事実は有るし良いんじゃね?」
と何ともおざなりに返事をされたが現段階の能力では作戦自体は良かったとか言ってもらえて嬉しかった。
「そういや最初は泣いてたのにこんなあっさりと首を落とすとは。」
「よくよく考えたら血がブシャーとかゲームでよく見た光景だなあって。これはリアルなので血の匂いとかが有って具合悪くなりそうですけど、まだ魔物だからと割り切れているから。ですかね。」
「ふーん。よく分からんけどあんまし変心させんなよ。戻れない道までいったら後は堕ちるだけだから。」
「? 大丈夫ですよ、今の光景は見れない位の怖さは残ってますし。というか何で皮剥いでるんですか? それ意外にグロいです。」
「後で売るから取ってる。本当はユリナにやって欲しいが見れないならいいや。ついでだから取ってるだけだし。お金には困ってないからな。倒したのはユリナだし換金したらこれはユリナに全部やるよ、よっと。」
どうやら全部剥ぎ終わって立ち上がったので先に進んでいく。師匠の言葉はちょっと気になるけど今は迷宮の攻略を進めなければ。




