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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第2章
20/103

19話 似た者同士と二人の文句


 スースーと規則正しい寝息が聞こえてくる。凄くリラックス出来ているのが分かる。羨ましい、寧ろ何でそんなに爆睡出来るのか謎。是非ともコツを教えてほしい。寝れる時は場所なんて変わったところで然程影響は無く寝れるんだけど、やっぱり無意識的な部分で緊張しているのだろうか。



 私は今ベッドから出て仕切りから半分だけ顔を出して師匠の寝顔を見ている。全く起きる気配が無い、熟睡中だ。一方の私は早くに寝たのに全然寝付けず何度も目が覚め夜明けを迎えてしまった。私より遅くベッドに入ったので、早朝だし寝ているのも仕方ないと思うけれど此処まで気持ちよく寝られると少し腹が立ってくる。自然、目付きも鋭くなって睨むようになってしまう。今からも寝れそうに無いし、城内を詳しく知らないので不用意に出歩けないしで八方塞がり状態なので困っている。



「……あんまり睨まれると寝にくいんだけど、何してんだ?」


「っ!?」



 いつの間にか目を僅かに開けて此方を見ていた師匠と目が合った。驚いて声も出なかった。未だ心臓がバクバクと鳴っていて黙っていると眠そうで気だるそうな声が届く。



「? まだ早朝だろう、俺はもう少し寝たいんだから睨むのやめてくれ。何か用あるなら聞くが、このまま。」


「いや、えっとー。」


「……お休み。」


「ちょ、ちょっと待って下さい。眠れなくて困ってたんですぅ。」


「あぁ? 眠いのか?」


「熟睡できて無いので眠いです。」


「はぁ。仕方ない。どうにかしてやるからベッドに入れ。」



 ベッドから起き上がって大きな欠伸を浮かべながら私に手でさっさと動けと指示する。指示通りベッドに入ったが何をするのか………。言われたとおりにしたけれど。



「『眠れ』。」



 ベッドに入って直ぐ師匠が私の顔の上に手を翳し一言。それで私は簡単に意識を手放し深い眠りに落ちていった。






 使ったのは”魔法”。なので本来はなにも言わずに発動できるが言わないと分からないと思ったのでたった一言、言うと直ぐに寝息が聞こえてきて眠ったようだ。そしてその代わりに起こされた俺は二度寝するのにも大分頭がスッキリして寝れなくなったので溜息を洩らし着替えを済ませ部屋を出る。



 誰もいない静かな城内を目的無く歩きいつの間にか”訓練場”にやって来ていた。前と変わらない様子をボーッと眺めつつ中に足を踏み入れる。風の魔法で訓練場に何故か存在するギャラリーに跳んでいく。たまに見学する人が来るとか来ないとか、知らんけどそういう役割が有るって聞いた気がする。はっきりと覚えてないけど。段々と日が昇っていく様子をギャラリーから見つつ眩しさに目を細める。


 最近何だかんだ早起きしなきゃいけないしで、不機嫌になる事が多いがそれも生活が一変したことが関係あるだろう。前から不規則な生活を直そうと決意して、決意しただけで終わってる現状を変えるきっかけにはなるとは思う。けど基本的に俺は人と話すのが苦手だからどうしても邪険に扱ってしまいがちだと思う。直しようが無い。


 そんな俺に対して、約1週間程一緒にいて話していてもユリナからは怒りを感じない。拗ねたりして怒るということはあるけれど不快感を見せた事が無い。今まで話してた奴らは下心満載で少しでも仲良くなって、仲良くならなくても少しでも強さの秘訣を知ろうというのが見え透いていた。けどユリナは真っ直ぐに純粋に楽しんで強くなっている。言わないし伝える気も無いけど今までの人生の中で1、2位を争うレベルで穏やかに過ごせている。相変わらず面倒な性格には変わり無いし出来ることなら全て投げ飛ばして好きな事をしたいとは思うけど今はこの楽しい時間を思いっきり楽しんで退屈しのぎにしようと思う。俺の人生はまだまだ先が長いのだから……。


 少し思いに耽っていると少しずつだけど騒がしくなってきた城内の音が聞こえてきたので、立ち上がって訓練場に降り立ち部屋に戻っていく。



 部屋に戻ると魔法で眠らせただけあってまだ寝ていたユリナの様子を見てから紅茶を入れてゆったりとした時間を過ごしながら今日の授業の進め方を頭の中で整理していく。憂鬱な気分を押さえつつ授業まで2時間弱前になってきたのでユリナを起こす。起こし方? そんなん、聞かなくても分かるだろう?



 ―――ドスンッ



「……んん、痛い………。」


「熟睡して寝れただろ? 授業まで後2時間切ったからそろそろ起きろ。」


「分かりましけど、わざとです?」


「だとしたら?」


「一発殴りたい気分ですね、思いっきり。」



 昨日俺が起きたときベッドから落ちたことに関して笑いを堪えていたのを知っていたからちょっと仕返しをした。風の魔法で体を押してベッドから落ちるようにした。怨めしそうに俺を見てる視線を気にせず柳に風の様に流す。


 そんな俺の様子から何を言っても無駄だと気付いてキッと睨んでから着替えたりするから後ろ向くか遠いとこ行けと言われたので見えないようにソファに腰掛ける。大きな欠伸をしていると後ろから少しの殺気を感じて頭だけをひょいと右に傾けると手が伸びてきてチッと舌打ちした音も聞こえてきた。



「もう少し殺気を隠せ。何しようとしてたかは知らないが。」


「何もしようとしてないですよ。気のせいじゃ無いですか?」


「よくこの状況でそんな事言えんなー。感心するわ。」


「全力で気配遮断したらしたで私の強さじゃ察知されますし、するだけ無駄だと思ってたんですよ。それにしても〝殺気〟ですか。………もう少し気を付けないと、かな。」


「企むなら俺がいないとこで呟いて考えてくれ。静かな声で喋っても丸聞こえだ。」



 思わず溜息を吐く。目上に対する態度が悪すぎないか。いや、多分俺だけこういう対応だ。カリナリーやシファルには丁寧に話してるし。一体俺の事どう思ってるんだ。



「……どう思ってるんだ。」


「? 何か言いましたか。」


「いや何でもない。」



 考え事が言葉に出ていたようだ。お互い釈然としていない顔をしている事に、お互い気付かずにユリナは朝食を俺は授業の内容をメモしていった。



 そうして暫くゆったりと過ごし授業まで30分までなったところで俺は服装を整えて長い髪を首辺りで一本に纏め眼鏡を掛けて認識阻害を発動させながら長い右の前髪を少しだけ横に流し両目がきちんと見えるようにした。ユリナはゆったりしていた事で眠そうな顔をしているが、きちんと腕輪に魔力を流しているのが分かるので何も言わず部屋を出た。






 1時間の熟睡で眠気が飛ぶとは限らない。朝食を食べてまったりとした時間を過ごしていたため凄く眠い。目を少し擦り欠伸をして少し着込む。そして、腕輪に魔力を流すのを忘れないようにして準備を終えると師匠の方も準備を終えていた。いつも隠れていた右目が少し見えていて左目と同じ黒目だった。何かを隠していた訳じゃ無いなら何でいつも右の前髪を目に被せておくんだろうか。と疑問は出てきたけど、色々文句の言い合いの攻防のせいで、思い出してか、たまに怨めしそうに睨んでいるのを見ると聞くのを戸惑ってしまう。未遂なのに怒ってるという状況に疑問符を浮かべながら、かといって私も起こされ方に不満を持って眠気と相まって不機嫌なので黙っていた。


 この先の事を考えるとお互い更に不機嫌になるのだが苛々し合って周りの状況が目に入らなかったという似た者同士だと思われる行動を示すのだった。






 何時も思うが1ヶ月に1回のこの時間は憂鬱だ。今日は()()そう思う。


 俺の授業は何故か凄く人気なので多くの人が受講を希望しているのである条件を付けた。1つ目が受講中寝ないこと、2つ目は1ヶ月の授業の半月前までに受けた授業内容から新たに”魔術”の術式を考えて提出(俺に直接は無理なのでファーリア、カノ経由で来る)させるというものだ。俺の欲を満たせるいい条件だと思う。結構新しい発想っていうのは思い付かないから色んな方面で捉えられる受講者に考えてもらうと良い案がある。その中で安全そうなのは俺が改良を加えて教える、危険そうなものは俺が揉み消しながら俺の知識に加えて俺だけが使うようにする。唯、「提出したのに。」と言われると思うので安全なものにまでレベルを下げたりする。新しく考えられない人に関しては授業での要点を纏めてもらいファーリアが確認をして俺が渡している要点のメモと見比べて8割合ってれば受講できるというシステムにしている。新しく考えた人は無条件で受講でき、無い人は授業内容が把握できてれば受講できる。受講者たちも自分の仕事をしながらなので大変だが参加するために必死で躍起なっているとか。


 で、ここからが本題だが今回も何時もの如く参加者からは参加料を貰っている。が、勇者らからは何も貰っていない。俺が無償で働かされる事実が憂鬱な所なのだ。何を代償に俺に授業をさせる気なのか、そこが大事なところで何も話されていないところなので色々と請求したいが別に金には困っていないし訓練風景を見せてあげると言われてもぶっちゃけ俺の中では雑魚は確定なので興味がない。最初にその話をして欲しかったので今現在授業の部屋では無く、ファーリアの執務室に向かっている。


 部屋の前まで着いたところで俺は扉を開け、中に入る。俺が誰の部屋に入るか気付いたユリナがちょっと頬を引きつらせていたのをスルーする。



「入るぞ。」


「ノックするべきじゃないんですか、普通。」



 呆れたように声を出したユリナも次の瞬間押し黙った。



「そうですね、普通はノックするべきですけど、ノト様ですから気にしませんよ。」



 そう言って執務室の奥で書類を書いていたファーリアが手を止めて顔を上げて微笑む。立ち上がりながらソファに腰掛ける様に促しているのを見て俺はドサッと腰掛け足を組み目線を細める。ユリナは扉の前で止まっていたのでちょいちょいと手招きして隣に座るよう言葉に出さず伝える。



「お久し振り、でも無いですかね、ユリナさん。お元気そうで何よりです。是非腰掛けて下さい。」


「っ!」



 何か言いたげに口を開いたが直ぐに閉じて、黙ったまま俺の隣に座るとファーリアは向かい合うようにソファに座ったので時間も迫って来ているので簡潔に用を言う。



「……俺に満足できる報酬は有るんだろうな?」


「何時もより多くのお金を、」


「要らん。」


「では、折角ですし勇者様達の実力でも、」


「……舐めてるのか? それともそれ位安いとでも思ってるのか?」



 さっき、要らないと思っていた事を提示されてイラッときた俺は思わず強めに言うと場にピリピリとした雰囲気が広がり、その雰囲気に思わず「うっ。」と居心地が悪そうに唸ったユリナで我に返り溜息を吐きキツイ雰囲気を緩める。



「あー、そういえば思い出した。」


「何でしょうか。」


「この授業が終わったら俺はユリナと迷宮に行く。から、迷宮に近いこの城の滞在と自由に色んなところを出入りしたり使えるようにしてくれ。後は、そうだなあ。」



 チラリと隣を見る。ユリナが俺の視線に気付いて此方を見返す。意図が理解できず俺に行動に疑問符を浮かべ首を傾げると俺はニヤリと笑いファーリアに向き直る。



「ユリナの言い分を一言一句聞き逃さず受け入れろ。元はお前のせいっていうのは自覚有るなら了承出来るよな?」


「!」


「ええ、一緒に来てくださったのはこの為でも有るんでしょう? 覚悟はしておりました。」


「そうか。じゃあ10分位、俺は席外すから。」


「ノト様は同席されないのですか?」



 俺は立ち上がった為、聞いてきたファーリアに俺はもう一度驚いてるユリナを見ながら答える。



「俺がいない方が話せる事も有るだろう。関係ない俺は退出するさ。別にそれで構わねえだろう?」


「………はい、ありがとうございます。大丈夫です。」



 ユリナは礼を述べたので気にすんなと手を振ってファーリアを視線でちゃんと聞けよ。と訴えてから部屋を出た。



 約10分後、幾分スッキリした様子のユリナが出てきたので「お疲れさん。」と声を掛けて授業をする部屋に向かっていった。全く声は聞こえて来なかったので静かに喋っていたんだろうがどうもファーリアに対して思うところが有ったようだったのでそれを晴らすことが出来た様だ。後顧の憂いを断てて安心した。






 10万字達成! 第2章もよろしくお願いします!

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