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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第1章
12/103

12話 朝の来客と腹黒


 昨日ソファで寝てしまったものの思ったよりぐっすり眠れたお陰で気持ちの良い朝を迎えられた。今日も今日とて同じ事を繰り返すんだろうけど昨日の二の舞にならない様にしなきゃいけない。


 「よしっ!」と声を出して気合を入れてソファから起き上がるとまだ朝早いというのに玄関を叩く音が聞こえた。こんな朝早く誰だろうと思いながら割りとボサボサの頭で(昨日部屋着には着替えを済ませていた。)玄関に向かい戸を開けると知らない男の人が立っていて思わず「ヒッ。」と情けない声を出してしまった。その後状況が理解できず固まっていると男の人の後ろからひょこっと顔を出した女性に見覚えがあった。



「おはよ~、ユリナちゃん。朝早くごめんね~。その様子を見ると起きたばかりだったかしらね? それで彼はいるかしら?」


「カリナリーさん!? おはようございます。こんな格好のまますみません。師匠はいますけど部屋でまだ寝てると思いますよ?」


「まあ、そうだとは思ってたわ。でも割と大事な話だから起こしましょ~。」


「え、あー。いや多分起こされると不機嫌になって話し所じゃなくなる気がするんですけど。」


「それは対応が面倒そうだけど~確認したい事があってメシスが来たと言えば多少の不機嫌も大丈夫だと思うわ~。取り敢えず起こしに行きましょう~。ウフフ。」


「カリナリーさんなんか面白がってませんか。」


「そんな事無いわよ~。」


「……。」



 何だかんだ言って重要な用件ではある様だし此処まで来てもらったのだから師匠の不機嫌を覚悟で起こすしかないだろう。取り敢えず彼女らを中に案内して待って貰う。


 それより、メシスと呼ばれた男の人は一言も喋っていないんだけど用件どうやって伝えるんだろう。カリナリーさんが話すのだろうか。とか考えていたらその考えを読まれたのかカリナリーさんが先手を打ってきた。



「因みにだけど私は彼が起きたのを確認したらメシスを置いて先に帰るから。お店の準備も残っているし。」



 それは師匠がどの様に起きてくるかの反応を見ると言っている様なものじゃないか。やっぱり彼女は様子を見たいが為だけに来たのか。ちょっと呆れつつも私に残せる伝言でも無いだろうから渋々師匠の部屋に前に行き、深呼吸してこの後の不機嫌の対処を考えて嫌になりながらも、扉をノックした。


 その様子をカリナリーさんはニコニコ否ニヤニヤしながら此方を見てきているのでそれにちょっと怒りを感じたけど抑える。



「師匠? すみません来客で師匠をお呼びです。起きて下さーい。」



 ……………。



 やっぱり反応が無い。予想はしていたけどこんなにぴったり嵌るとそれはそれで恐ろしさがある。どれ位で起きるかも分からないしもうちょっと声を掛けた方が良いのかなぁ、と考えていたら部屋から物音が聞こえてきた。


 起きているのかな? そう思ってカリナリーさんに言われていた師匠が起きる用件を伝えようと思った時部屋から声が発せられた。



「……。来客ってメシスか?」



 言い当てられて驚いてしまって黙ってしまったら部屋の扉が開き師匠が出来てきた。意外にもしっかりとした格好でいたので大分前から目を覚ましていたのだろう。思わず言葉を失って立ち尽くしてしまっていた。



「ん? おーい、ユリナ大丈夫かー? というかその感じからだと来客が当たっていた様だな。」



 師匠は私の顔の前で手を振りつつクツクツと笑いながら私の前を通ってリビングに向かっていったので私も慌てて付いていく。リビングから様子を見ていたカリナリーさんはつまらないという感じで明らかに不満の表情で此方を見ていた。一方のメシスさんは相変わらず黙っていた。


 私は状況に追いつけていないもののキッチンに向かってお茶を用意し始めた。キッチンからリビングの様子が見えていたのでメシスさんが話し始める瞬間を聞き逃さない様に聞き耳を立てて待っていた。すると師匠が急に笑い出し否、爆笑し始めてしまった。何故笑い出すのか理解できずお茶を用意している手を動かしつつもきょとんとしていた私だったがその後の師匠の言葉で驚いてしまった。



「わざわざ店で顔出したりした上にここまで来るとはなあ。工房にこもりっきりのお前が出てくるのが驚きだったがまさかカリナリーと来るとは。とはいえ少し違和感を感じたがそういう事だったか。フフッ。さっきの俺の出て来た様子を見て不満そうな表情をしていたところを見るにリンクもしていたか。流石『操人(アヤツリビト)』と言われるだけ有るな。ああ、今は引退しているんだったな。そんな睨むなよ。にしてもよく此処まで似せて作ったなあ。まあカリナリーも街から出ずに俺の様子を見られるし楽しもうとか思っていたんだろうな。カリナリー、残念だったな。メシスが来ることは想定の範囲内。というか近々来る約束していたし驚く事でも不機嫌で出てくることも無いんだ。流石に予想より早かったかといった処だ。」


「え?」



 師匠の話を終えたタイミングでリビングにお茶を持って行ったので話の内容を聞いていた私は驚き、変な声が出てしまった。カリナリーさんが街から出ていない? 此処にいるのに?


 疑問が次々と沸いて出てきて状況が掴めず視線を3人に向けながら、私の様子も面白かったのか師匠は笑い続けている。



「流石としか言いようが無い。というよりお前を騙せるとは思っていなかった。だけどこんなにあっさりバレてしまうと引退したとはいえ俺の面目が丸潰れなのだが。まあお前の事を考えると何時もの事だからと思ってしまうがな。ほんと嬢ちゃんの反応が初々しいし俺としても嬉しい限りなんだが全く。」


「ホントよね~。もう少し驚いてくれたっていいのに~。まあ私は店の準備有るし後は用件済ましてメシスは早く帰って来てね~。それじゃあ~。」



 カリナリーさんがそう言い切った直後無表情になり一言も喋らなくなった。生きているとは思えないその様相に困惑が止まらない。



「え? え?」


「言うだけ言ってリンクを切りやがったな、まあいいけど。それにメシスよ、俺を驚かせたいなら後云十年から云百年修行しないとな。まあ強さの基準は違うし俺には出来ない事がメシスにできて俺は助かってるしそれでいいじゃねえか。」


「お前からの高評価は寒気がするのだが。おっと、そろそろ嬢ちゃんが困ってるようだし自己紹介位はしとかないと。俺はメシス。カリナリーとは夫婦だ。前に嬢ちゃんがうちの店に来た時此奴だけしか会わなかったから何の依頼だと思ったがこれで合点がいったよ。此奴には勿体ない可愛さだし素直さがあるなあ。本当に誰かさんと違ってるし勿体ないなあ。」


「俺の事見るんじゃねえ。それに同じ事を二回も言うんじゃねえ。」


「まあ嬢ちゃんの事は聞いているから言わなくても気にしなくていいが、お前が口を挟んだせいで嬢ちゃんが喋れなくなっちまったじゃねえか。」


「ったく。うるせえな。さっさと用件を言えや。」


「はあ。相変わらずの面倒臭がりか。用件はこれだ。」


「ああ? これなら急ぎじゃなくても良かったじゃねえか?」


「街に中々降りてこないお前にどうやって伝えるんだよ。まあそれさえクリアできれば直ぐに始められる。」


「分かった。明日の夕方位に持って行く。それで2日程で間に合わせる事は出来るか。」


「随分急ぎだな。持って来て正解だったな。まあお前はうちの店を贔屓にしてくれているし他の奴より割増し価格でだが、優先でやってやる。それじゃあ準備できたら直接持ってきてくれ。」



 困惑している私を差し置き話がポンポン進み用件は済んだのかメシスさんは出されたお茶を一気飲みし立ち上がった。



「それじゃあ帰るから。嬢ちゃんお茶ご馳走さま。後、此奴は悪知恵が働くし見た目通り服も心も真っ黒い奴だから大変になったら何時でもお店に遊びに来な。カリナリーも喜ぶしさ。」


「はい! お暇が有れば伺います。」


「腹黒は否定してほしいんだが。解せぬ。」



 師匠の呟きを聞いて私とメシスさんが笑いカリナリーさん(仮)と一緒に帰っていった。結局詳細は分からないままだったので後で師匠に聞いてみるとどうやらあれはメシスさんの魔術の様で、作った人形と生物をリンクさせ遠くに居ながらもその状況が分かるしもう少し組み込めばさっきみたいに会話出来たり表情まで動かす事が出来るみたい。それを聞いて結構凄い力だと思ったが師匠によると精巧にするためにはその人の事をよく知らないと駄目らしい。後、上手くリンクできなかったりすると体調を崩してしまったり寝込んだりしたりとそれなりにデメリットは有るらしい。今回はカリナリーさんだった為よく知っていて再現もしやすかったため上手くいったそうだ。「もしかしたらたまにお店にそれで出ている可能性もあるんじゃねえの。」とか笑っていたけど私には判断しようが無い為驚かされる事間違いなしだと思う。また、メシスさんは元々冒険者でA級にまで達したことが有り二つ名として『操人(アヤツリビト)』と呼ばれていたそうだ。今はこの魔術よりも別の才能と趣味を見つけてしまった事やカリナリーさんと夫婦になったことで遊びとして戦闘力を持たない様な人形を作って人を驚かすだけに留めているそうだ。



「ところで師匠今日は随分早起きでしたね。起こすのを禁止されていたのでてっきり怒られるものかと思っていました。それに来ることが分かっていたとは?」


「ああ、一昨日に街に買い物に出かけた時カリナリーのお店に寄っただろ? その時に俺は座っていたと思うがその時メシスが会いにきたんだ。ついでだから少しばかり注文をだな、その注文品を作るのに考えたいと言われて一旦帰って来たんだがこんなに早く素材リストを渡されると思っていなくて少々驚いたし、持ってくる様に頼んだ覚えは無いが多分メシスというかカリナリーなら俺の反応とかを見ようとしてわざと朝早く来たとかそんなところじゃないか。結果失敗に終わったがな。ただ、こんな朝早く起こしてくれた礼は後でたっぷりしてやるけどな。クククッ。」



 言葉には出さなかったがそう悪どい事を考える所が腹黒の所以なのでは無いだろうか。楽しそうなので私は苦笑いを浮かべて依頼について聞いてみる事にした。



「えーっと、因みにその素材って今日中に届ければ良いんじゃないですか。何で明日なんですか。」


「あー、それはだな。昨日は全然進まなかったし今日は修行に打ち込む必要性が有るなと思っていてだな。なるべく感覚が残っている内、そして気分がスッキリしている内にといった所だ。素材に関しては折角だし明日ギルドのクエストが有れば受けつつ素材を取りに行ったら一石二鳥だなと思ってたからな。」


「うっ。そういう事でしたか。」


「そんな嫌な顔しないでくれ。昨日より大分スッキリした顔をしている様に見えるし今日は上手くいく気がする。」


「結局気がするだけですかー。でも私の昨日の遅れは少しでも取り戻したいとは思ってるのでよろしくお願いします。」



 そう言うと師匠は満足そうに頷いた。



「あんまり気負わずに、な。それじゃあ、時間なったら起きるから午前中頑張れよ!」



 早起きしたのに豪快な二度寝宣言に言葉を失っていると軽い足取りで師匠は部屋に戻っていき私はポツンとリビングに残され思わず呆れた声を出してしまった。



「え~~?」







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