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昇る沈没者  作者: 安来 光
第4章 学校入学編
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4-8 パーティーを組む為に

 カヤからパーティーに誘われたノレイアは息をのむ。

 それでも、どうしても過去の自分の過ちを思い出して前に進むことができなかった。


「……組みたいわよ。私だって、みんなと一緒にパーティーを組んで冒険したい。あなたからの誘いは正直とても嬉しかった。だけどっ…、私はもう仲間を傷つける自分のことを許せない。誰かと一緒になって戦うことができないの……。」


 ノレイアの異能力は【水使い(ウォーターマスター)】。使い勝手の良い能力ではあるが、ノレイアの異能力は普通ではなかった。明らかに規格外すぎる異能力の大きさのせいで、少し水を出したいだけであっても大量の水を出現させてしまうのだ。

 その異能力のせいで、戦闘時ともなれば敵を狙った攻撃が全方位に放たれる。敵も味方も関係なしに、ノレイアが攻撃を放つだけで辺り一面が洪水によってなぎ倒される。

 ≪学校≫に入学した時は、ノレイアは他の学生たちに期待していた。自分の異様な異能力であっても、対応できる人がいるのではないかと。一緒になって誰かと戦ったり、冒険したりできるのではないかと。だけど、去年一年で身をもって痛感した。私なんかが誰かと一緒になんて、考えちゃいけない。私が異能力を発動させただけで、パーティーを組んでくれた優しい仲間たちを全員巻き込んで怪我させてしまうのだ。


 だからもう、ノレイアは一人でやっていくと、そう決めたのだ。

 今までと変わらない寂しそうな表情を見て、カヤは右手を伸ばすとノレイアの手を取った。


「…なるほど、分かった。まずは、ノレイアの心配事をなくしてしまおう。簡単に言っちゃえば、ノレイアは異能力が大きいせいか常に体中から異能力を発散させているんだよ。今も、発動すらしていないのにノレイアから異能力の気配が溢れ出ているからね。要するに、仲間を巻き込んでしまうのはノレイアの異能力の発動によって体中からあっちこっちに異能力が漏れ出てしまっているから。前方の敵にだけ攻撃をしたければ、例えば手の平だけに絞って異能力の発動をすれば解決する。」


 そう言って、ノレイアの手を引っ張るカヤ。


「な、何する気!?」


「トレーニングルームに行こう。俺の異能力があれば、ノレイアの悩みは解決するってことを教えてあげるよ。」


 最後まで講堂に残っていたカヤたち五人。全員カヤに言われるがままに、トレーニングルームへと向かうことにした。


 入学試験を行った時のトレーニングルームという施設は≪学校≫内にいくつか存在している。模擬線などに使用されることが多いトレーニングルーム。その中で、誰も使っていないトレーニングルームを見つけたカヤたちが中に入る。


「ここならバリアが張ってあるおかげで、異能力が暴走したとしても外に被害は出ないから安心して発動できるよね。」


 ドーム型のトレーニングルームの内部でカヤはノレイアにそう告げる。


「どうする気だい?カヤ。」


 クライブとメルとベルも一緒になってトレーニングルームに入っている。三人とも去年のノレイアの暴走を知っているだけに少し震えているが、カヤを信じて任せることにしたのだ。


「話を聞く限りじゃ、こうやってパーティーメンバーが集まっている場面でノレイアが異能力を発動させることで味方も巻き込んだ大技が発動してしまうっていう感じだよね。」


「…そうよ。私を中心として発生した大量の水が仲間を巻き込んだのよ…。」


 カヤはノレイアの言葉に満足したように頷いた。


「だったら、この状況でノレイアの異能力が俺たちみんなを巻き込まなければ問題は解決されたってことだよね。ノレイアが俺たちのパーティーに入らない理由は無くなるでしょ?」


 さも当然といったようなカヤの言葉にノレイアが驚いた。


「そんなこと言って、もし失敗すればあなたたちが怪我するかもしれないのよ!!」


 ノレイアはカヤから視線を外して、後方に控える三人に訴える。クライブもメルもベルも、カヤの言葉にノレイア同様に驚いていた。

 ただ、≪カナル樹海≫でのカヤを見ているクライブはすぐさま落ち着きを取り戻した。


「分かりやすくていいね。パーティーを組むならお互いの不安は解消させておいた方が良いからね。」


 そう言って、クライブはその場でドンと構える。ここから動く気はないという意思表示であった。


「……私もいいよ。カヤたちとパーティーを組むって決めた以上、カヤのやりたいように任せる。」


「お姉ちゃんがそう言うなら私もいいわ。ノレイアが寂しがる気持ち…、何度もパーティーを断られてきた私たちにも少しは分かるからね。」


 メルとベルもクライブに並んでジッと立つ。


「ノレイア、俺が絶対に三人を巻き込ませない。だから、俺を信じて異能力を発動してくれないか。」


「……そこまで言うなら分かったわよ。だけど、覚えておきなさい。もし、私の異能力であなたたちが傷つくようなことがあれば私は立ち直れなくなるわ。」


 ノレイアはカヤに向かってそう告げる。

 今から起きる結果次第で、自分は立ち直れなくなる。――、だから絶対に成功させろ。


「安心してくれ、俺の異能力は【沈没】。今から、ノレイアの体中から溢れ出ている異能力を抑える為に、手の平以外の異能力の出入り口を全て沈没させる。」

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