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昇る沈没者  作者: 安来 光
第4章 学校入学編
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4-幕間1 冒険者ギルド会議

少し、場面変わります。

 カランカラン、鐘の音が冒険者ギルドのドアが開いたことを告げる。


「戻ったぞー。」


 ギルドのドアを開けたのは上半身裸の大男。若い冒険者からは教官と呼ばれ慕われている、ヴァルアだった。夕方近くから、ギルドで酒盛りしている冒険者たちを一瞥して奥へと向かう。


「お疲れ様です、ヴァルアさん。…二階の会議室で皆さん集まっています。」


 ヴァルアに気づいた受付嬢の一人が近寄って来て、小声で話す。


「分かった。」


 ヴァルアは小さく頷くと、冒険者たちを激励しながら二階へと消えていく。王都≪カナル≫での冒険者ギルドでは、現在ギルドマスターによって有力者たちが内密に招集をかけられているのだ。新人冒険者の教育係を担っているヴァルアもまた、ギルドマスターに呼ばれている一人であった。


「失礼するぞ。」


 ノックも無くヴァルアは会議室の扉を開く。


 長方形の机に座る面々。入口から一番奥の席に座っているのがギルドマスターだ。


「おう、来たかヴァルア。こんな時でもお前はやはり上半身裸なんだな。」


「ロードのおやっさん、これが俺のスタイルなんでな。」


 ギルドマスターの席に座る男の名はロード。白い髭を長く伸ばし、杖を片手に座っている。

 ヴァルアはドアから入って右側の席、ロードに最も近い席に座る。ヴァルアの正面には、スイレン=ニューワールドが既に座っていた。


「忙しいところ悪いなスイレン殿、もう少ししたらヤツも来るだろう。」


「構いませんよ、ロード。≪学校≫のみんなに影響する可能性があるのであれば私は聞いておかねばなりませんから。」


 ロード、ヴァルア、スイレンの三人が座る会議室。

 その会議室のドアを開けて、一人の男が入ってくる。なんら特徴のない好青年。黒髪黒服で腰に長い刀を下げている。


「遅くなりましたっ!」


 会議室に入るなり、男は流れるような動作でヴァルアの横に座る。


「予定の時間に遅れているわけではないから気にするな、ジョウ。さて…、来てすぐで悪いがさっそく本題に入らせてもらう。」


 チーン、と机の上に置いてあるベルを鳴らすロード。


「失礼いたします。」


 即座に会議室のドアが開き、小柄な男性が資料を手に入ってきた。王都≪カナル≫の冒険者ギルドにて、ロードに次ぐ役職の持ち主。サブマスターであるコンゴロは、四人の前に資料を配ると、ドアから最も近い席に座る。


 ロードを含めた四人がコンゴロの配布した資料を見る。


「近頃、≪ブルート≫と思われる組織のメンバーが活発的になっていることは既に全員承知のうえだろう。本拠地が王都にあることまでは分かっているが、構成員にも危険な奴らが多く、ギルドで率先して≪ブルート≫探索の依頼(クエスト)を出すわけにもいかなかったからな。未だに本拠地がどこにあるか不明なまま、奴らの犠牲者ばかりが増えている状況だ。」


 コンゴロが配った資料には、最近発生した犯罪組織≪ブルート≫の手によるものと思われる被害について書かれていた。≪ブルート≫を象徴する赤い風車のマークがそれぞれの被害現場で血によって作られていることから、ギルドではそれらの殺人が≪ブルート≫によるものだと断定したのだ。


「ギルドでは過去に三度、A級以上という条件付きで≪ブルート≫の拠点探索を依頼として出していますが、そのどれもで受注した冒険者が死体となって発見されております。それ以降、ギルドでは≪ブルート≫の話題を出すことすら避けていました。」


 コンゴロがロードの話に付け加える。

 A級以上の冒険者というのは当たり前だが、決して弱いわけではないのだ。ギルドにとっても貴重な戦力をそう易々と失うわけにもいかず、苦渋の決断であった。


「ギルドで最後に≪ブルート≫の依頼を出してから半年ほど経った。資料を見てもらえれば分かると思うが、ここ一ヶ月の間で被害者が急増している。…それも、ほとんどが学生を狙った誘拐や殺人だ。現在の増加傾向を考慮すると、今後も学生の被害は増える一方かと思われる。」


 ロードは言いづらそうにしながらも、スイレンの前ではっきりと告げた。


「……それで、ここに私たちを集めた理由は何でしょうか?ロード。」


 落ち着いたふりを装っているが、隠す気も無い殺意がスイレンから溢れ出る。ロードに言われる前から、≪学校≫側でも把握していた内容であるが、改めて確認して怒りを露わにするスイレン。


「スイレン殿には有事の際に備えて≪学校≫の防衛力の強化をお願いしたい。無いとは思っているが、≪ブルート≫が≪学校≫を襲撃するなんてことも考えられるのでな。」


「ええ、既にこちらでも対策は色々と考えているところです。」


「そうであったか。それならば良い。スイレン殿が対策を立てているのであれば、≪学校≫へ襲撃する可能性は低いと判断できる。」


 ロードはスイレンから視線をヴァルアの方へと移す。


「ヴァルアは、冒険者へ注意勧告すると同時にジョウのサポートに回って欲しい。」


「ああ、任せな。」


 ロードからの頼みを親指を立てて答えるヴァルア。ロードと付き合いの長いヴァルアはロードから言われることについては予想がついていた。


「それから、ジョウ。お前には≪ブルート≫の拠点の探索及び≪ブルート≫の殲滅を依頼したい。」


 依(・)頼(・)というワードを出したロード。それは、ギルドから冒険者に対しての依頼(クエスト)という意味である。目の前に座る冒険者のトップに立つ男ならと、ロードは判断したのだ。


「はいっ!冒険者ギルドからの依頼(クエスト)、確かに承りました!!」


 なんてことのない笑顔でさらっと承諾するジョウ。相手がどれだけ危険な組織であるか理解していないわけではないが、考慮する必要はなかった。なぜなら、ジョウは世界に八人しかいないS級と呼ばれる冒険者の一人なのだから。

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