4-7 カヤの勧誘
「それで、あと一人はどうする気だい?カヤ。」
メルとベルをパーティーに加え、パーティーメンバーは現在で四人。五人パーティーにしたいというカヤに向かってクライブが聞く。
「実はさ、声をかけたい人はいるんだよ。見た感じ、まだどこのパーティーにも入ってなさそうだしね。」
カヤの言葉を聞いて、クライブとメルとベルは講堂を見渡す。最初の時よりもおよそ三分の一に減ってしまっている学生の人数。その誰もが、既にパーティーを組んで話し合っているようにも見える。
カヤを除く三人には、無意識的にパーティーメンバーの候補から外してしまっている学生が存在していた。その為、この状況になってもカヤが誰のことを言っているのか気づかなかった。
「ほら、あそこで一人で座っている彼女。俺は最後のメンバーに彼女を誘いたいんだけど、どうかな?」
カヤは一人の少女に視線を向けた。
カヤの視線に倣って、クライブとメルとベルもそちらを向く。
そこに座っているのは、一人で窓の外を見つめている銀髪の少女だった。つい先ほど、講堂内において全員の視線を集めた人物と言ってもいい。みんなの異能力の数値の平均が七十前後であるなか、『170』という飛びぬけた数値を叩き出したノレイアであった。
「な、るほど…。彼女か…。」
カヤは知らない。ノレイアが『暴れ姫』と呼ばれて、避けられていることを。去年の入学生でありながら、唯一留年を言い渡された一年生。
クライブとメルとベルの反応を見てカヤは何かを感じ取ったが、あえて聞かずに歩き出した。
「聞くだけ聞いてみるよ。みんなの反応から歓迎されていないようには見えるけど、ごめんね。俺は彼女を放ってはおけない。」
カヤは一人でノレイアの座る席に向かう。
そして、講堂の隅っこで窓の外をずっと見つめるノレイアの目は、窓に反射して映るカヤの姿に気づいた。誰にも声なんてかけられないと思っていた。誰にも見向きすらされないと思っていた。
だから、本当に自分に声がかけられるまでは信じられなかった。もしかしたら、私の近くにいる誰か別の人のところに向かって歩いているだけかもしれない。ノレイアは少しばかりの期待を心の奥に隠しながら、窓に映るカヤの姿を目で追った。
自分にどんどんどんどん近づいてくるカヤ。
ノレイアの背後で立ち止まるカヤに、ノレイアの心臓がドクンと跳ねた。
「ねぇ、もし良かったらでいいんだけど…、俺たちと一緒にパーティーを組まない?」
続けざまのカヤの言葉で、目を見開くノレイア。今ですら信じられない。
自分のことをパーティーに誘いたがる者なんているはずないと思っていた。測定機に乗った自分のことを異様だと見つめる周囲の反応を見て、やはりダメなんだと諦めていた心が激しく脈打つ。
「……それって、もしかしてだけど、この私に言ってるの…?」
無表情を装って、カヤの方に振り向くノレイア。
「そうだよ。こっちは四人なんだけど、どう?」
ニッコリと、怯えが全く存在しないカヤの顔を見て、思わずカヤの手を取りたくなるノレイア。だけど、カヤの後ろで自分に対して怯えを抱いている三人の姿が見えて手が止まった。
「……そうね。あなた、私のことを知らないのでしょ。他のパーティーメンバーに聞かなかったの…。私は、この場にいる学生の中で唯一去年から入学しているのよ。それはつまり、二年生に上がる為の条件を達成できなかったってわけ。こんなお荷物っ……、パーティーに必要ないでしょ。」
「……ふぅん、それだけ?その程度の理由なら、俺は君を誘うのをやめないよ。」
カヤの言葉にノレイアが悔しそうに涙ぐむ。
「……っ、知らないのなら、覚えておきなさい。去年、私とパーティーを組んだ人たちは全員私の攻撃によって怪我………、いいえ、≪学校≫を去っているわ。」
思い出したくもない過去の出来事にノレイアの目に涙が浮かぶ。
誰も傷つけたくなかった。一緒にパーティーを組んでくれた仲間たちを守ろうと必死だった。そして、必死になればなるほど仲間たちを、ノレイアは自分の異能力で傷つけてしまったのだ。
「そうか……。でも、君はまだ誰かとパーティーを組みたいんだろう?俺たちと一緒にパーティーを組もう!」
「っ……!!」
カヤを諦めさせる為に放った自分の言葉を、軽く受け流したカヤにノレイアがきれる。
ダンッ
机を手で叩いて立ち上がるノレイア。
カヤと目を合わせると、カヤのことを睨みつける。
「私のことを知らないくせに…、軽い気持ちでパーティーになんて誘わないで!!」
ノレイアの叫びに講堂内が静かになる。そればかりか、ノレイアが怒りに身を任せて暴走するのでは、と残っていた学生たちが慌てて講堂から出て行った。
残っているのは、カヤとノレイア。それからカヤのパーティーメンバーであるクライブとメルとベルだけだ。
「カヤ……、君は知らないのかもしれないけどノレイアの言っていることは事実だよ。ノレイアは去年、自らの異能力を制御しきれずに多くの学生たちを傷つけている。」
クライブが静かになった講堂内でカヤに告げる。
「だろうね。異能力が制御できていないのは見た瞬間から分かっていたよ。」
「っ…、じゃあっ、なんで私のことなんか誘うのよっ!!」
ノレイアの叫びにカヤは落ち着いて、目を合わせて答える。
「他のパーティーを見るノレイアの目が寂しそうだったからだよ。ノレイアに聞きたいのは過去がどうとかじゃなくて、今、パーティーを組みたいかどうか。ノレイアの望む未来は、どうなんだい?」




