4-4 競争
「二人とも俺のパーティーに入る実力は充分ある。もう一度言おう。アンジュとミレア、二人は俺のパーティーに加われ。」
シーベルからしてみれば、アンジュとミレアがパーティーに入ることは決定事項なのだ。その考え方が普通ではなく王族に由来するものであったが、王族としての驕りが無意識に自身の中に存在していることには気づいていない。
シーベルから同じ言葉を聞かされ、アンジュとミレアの中で怒りよりも困惑の方が大きくなる。そんな中で、シーベルに助け舟を出したのはカヤだった。
「アンジュにミレアちゃん、父さんが言ってたよ。せっかく≪学校≫に行ったんだから、どうせなら多くの人と関わりを持つようにって。同じパーティーを組みたい気持ちもあったけど、どうかな。ここは皆別々でパーティー組んで競争するってのは。アレスも構わないだろう。」
カヤはみんな別々にパーティーを組んで、成績を競い合おうという提案をしたのだ。シーベルのしつこい勧誘が嫌になったのも少しはあるが、元々こういう考えも持ち合わせていた。入学前に父であるハイベルから、学生として色んな人と関わることで今の自分の実力を知ることもできるだろうと言われていた為だ。
「カヤがそう言うなら…、私も競い合うの嫌いじゃないからいいけどさ…。」
「俺も別に構わない。ミレアが俺かカヤかアンジュと一緒のパーティーであるなら問題ない。現状で言えばミレアがアンジュと一緒のパーティーになるみたいだし、俺とカヤが別のパーティーになるだけってことだな。」
「ミレアはカヤさんと二人っきりのパーティーが良いですっ!!」
少し不満顔のアンジュ、変わらない表情のアレス、ぴょんぴょんと跳ねてカヤの前でアピールするミレア。三人の返事を聞いて、「じゃ、みんな別々のパーティーで決定だね。」とカヤは言った。
「っ!!…ちょっと、カヤさん!?ミレアの意見は聞こえてますか?ミレアはカヤさんと二人っきりを所望します!!」
ぴょんぴょんと跳ねていたミレアが手をブンブンと大きく振ってさらに存在をアピールする。だが、カヤからしてみればミレアのおふざけは日常茶飯事なので気にもならない。カヤに対するミレアの態度はいつもこんなものだ。
「そうと決まればなんだか燃えてくるわね。ほらミレアちゃん、いつまでもカヤの前でぴょんぴょんしてないで。これから同じパーティーとして、カヤとアレスを負かしちゃいましょ。」
うーうーと唸るミレアだったが、ふざけ終えるとキリッとした目つきに戻る。
「アレス兄はともかく、師匠のカヤさんに勝てるならミレアは手を抜きませんよ!≪学校≫を卒業するまでに誰が一番良い成績を取るか勝負ですっ!!」
「もちろん、俺も負ける気はないさ。師匠としての意地を弟子君に見せてあげよう。」
カヤとミレアの会話が終わったところで、黙って聞いていたシーベルが口を開いた。
「話は済んだようだね。」
「ええ、私たちはあなたのパーティー勧誘を受け入れるわ。」
シーベルとテッドとカナの三人とアンジュとミレアの二人が加わって五人のパーティーが完成する。五人全員が同年代の中でも飛びぬけた才能の持ち主。今年入学した一年生のパーティーの中で間違いなくトップレベルであるのは明白だった。
「リーダーは俺だ。異論がなければ、パーティー登録しに向かう。」
玄関横にある依頼板の横に設置されている受付。冒険者ギルドから派遣されている受付嬢が担当しており、学生たちによって結成される冒険者見習いパーティーも正式な手順に基づいてパーティー登録されるのだ。
シーベルがリーダーになることに対して、アンジュもミレアも異論は無かった。そもそも三人パーティーのところに自分たちが加わった形なのだから当然の結果だった。
「それじゃ、私たちは先にパーティー登録しに行ってるね。もしかしたら、この先同じ依頼を受注することもあるかもしれないわね。」
「アレス兄はどうでもいいとして、カヤさんも頑張ってくださいね!」
シーベルたちの後に続く形でアンジュとミレアも講堂から出て行った。
仲間でもあり、ライバルでもある関係性は今までと大して変わらない。お互いに、競い高め合っていける良い関係性だ。
「よし、そういうことだから俺たちも別々でパーティー作らないとな。急がないと、どんどんパーティーを組み終わった人たちがいなくなっちゃうみたいだし。」
アンジュたちのパーティーが一番最初にできたパーティーというわけでもない。既に何組かパーティーを作り終えて講堂から出て行っているのだ。
「アレスも急がないと…?」
気づけば、講堂から出ていこうとするアレスの姿が目に入った。
「別々にパーティーを組むことに反対するわけじゃない。俺という人間が、お前たち以外の奴らとパーティーを組む気がないだけだ。俺は一人でパーティー登録をしてくるよ。」
カヤの視線に気づいたアレスはカヤの方を振り返ってそう言った。じゃあな、という合図であるかのように頭の上に手を挙げる。
眠たそうに大きな欠伸を一つして、講堂から出て行ってしまったのだ。




