4-1 入学初日
4章、途中まで書けてるので可能な限りこの時間での投稿を続けていきます。
4章は【学校入学編】です。
強大な魔物が多数生息する森の内部で、その男は静かに目を閉じて椅子の上で眠っていた。男の前には白いテーブルが用意されており、その上には入れたてのお茶が入ったティーカップが置かれている。
ブゥゥン…
寝ている男のことを隙だらけと判断し、巨大な蛾に似た魔物が襲い掛かる。僅かばかりの羽音を立てて、近づく魔物。
だが、その魔物は一瞬にして切り刻まれた。男が動いた気配は無い。
魔物を屠ったのは、男の従者であった。
「レオン様、この森を拠点にしていたドラゴンは既に逃げ出しておりました。あの程度のドラゴンが住み着く森にアウローラ様が封印されているとは考えにくいかと存じますが…。」
従者である女魔人は、寝ているレオンの背後に立つと報告をする。
「ふむ、そうか。最初から期待はしていなかったが、こうも外れが続くとはな。やれやれ、探索というものはどうにも難しい…。」
フッと笑って、椅子から立ち上がるレオン。
レオンが立ち上がると同時に、テーブルと椅子が消失した。
「こうなってはやはり、≪竜の台地≫へ向かうしかないか。あそこは我輩でも、少々キツいのだがな。」
「逃げたドラゴンはどういたしましょうか。」
「放っておけ。あの程度の雑魚が何か知っているとも思えん。」
「畏まりました。」
この二人の会話は、人族において危険領域と認定されている≪飢えた森≫で行われていることであったが、気にする者はここにはいなかった。
二人の影が森の中へと消えていく。
≪飢えた森≫を根城にしていた火竜だけが二人の恐ろしさを理解し、二人が≪飢えた森≫に侵入した時点で逃げ出していたのだ。
■
場所は変わって王都≪カナル≫。
≪学校≫の入学試験に合格したカヤたち四人は、学生寮への引っ越し作業を行っていた。
「準備はできたか。学生になれば立場は冒険者見習いだ。危険な場所や、危険な魔物との戦闘もあると思う。だが、いずれ冒険者を目指すというのならちゃんと卒業してこいよ!」
「うん、父さんっ!」
ハイベル、リア、ゼン、ヨミに見送られて四人は家を出た。
学生寮は≪学校≫のすぐ横に建てられている。カヤとアレス、アンジュとミレアがそれぞれ同部屋であり、他の部屋も同じく二人一部屋を基本として作られている。
学生寮に着いたら、指定された部屋にそれぞれ荷物を置きに行く。その後、学生寮の入口で四人がまた集合した。
「最初に大講堂に行くようになっているみたいね。今年入学した全員が集められているみたいだけど…、ちょっと時間ギリギリだから急ぎましょうか。」
今日の予定をバッチリと頭に入れてきたアンジュを先頭に小走りで大講堂に向かう四人。
「あそこよ!」
ドアを開けて入れば、そこには既に五十人ほどが集まっていた。
机に座っている者や、壁際で立っている者など様々だ。
そして、机に座っていた一人の男性がゆっくりと立ち上がった。見た目からして、他の学生たちと変わりはない。
「……揃ったようだな。おめでとう諸君、今日から君たちは栄えある≪学校≫の一員だ。」
男性の済んだ声が響き渡る。
「私の名前はザーニアス。一応、今年入学した君たちの先生という立場になったが、正直言って私は忙しいのでね。簡単な説明だけしておさらばさせてもらうよ。なに、これからやってもらうのは至極簡単なことであるし、当たり前のことでもある。これから、やってもらうのはパーティー作りだ。」
ザーニアスの言葉で学生たちが周囲をキョロキョロと見渡し始める。これから一緒に活動していく者として、誰が適任かどうかを見極める必要があるからだ。
「パーティー人数は最大で五人。パーティーを組み終わった者たちから、パーティーリーダーを決めて、玄関横にある依頼板のところに行くように。パーティーについての細かいは説明は受付がしてくれる。それから、パーティーを組む時の参考になるように異能力測定機を用意した。そこに一台しかないから順番に使ってくれ。測る測らないは各自の自由だ。」
ザーニアスが用意した異能力測定機は成人男性ほどの大きさをしている機械で、機械の上に立つだけで異能力が測れるようになっているタイプのものだ。指定された場所に立つことで、頭上にあるモニターに異能力値が数値となって表示される。これを使って、お互いに実力の判断をするようにということだろう。
「今日中には、全員パーティー登録するように。以上だ、私は失礼させてもらう。」
ザーニアスは最低限の説明だけして、部屋から出て行ってしまった。
「……よし、まずは俺から測るぜ!」
一人の学生が手を挙げると、みんなの前に進み出て測定器の上に立つ。五秒もかからずに、数値が表示された。
『83』
「おぉ…、たけぇ……。」
誰かの驚く声が聞こえてくる。
一番乗りするだけあって、よほど自信があったのだろう。
表示された数値に満足して、「よしっ!」とガッツポーズをとっている。
「俺も。」
「次は俺だ。」
お互いの実力を知らないままでは、パーティー作りなんてできるはずもない。一人が測ったことで、他の人たちも列を作るようにして順々に異能力の測定を始めた。
『72』、『68』、『77』
測定されていく数値を見ていると、どうやら七十前後が平均となるようだ。
測り終わった者たちの中では、既に近い数値の者同士でパーティー作りの相談を始めている。
「なるほど、低いな……。俺のパーティーに入る資格のある奴はお前たち以外にいなそうか。」
そんな中、壁際で佇むようにして様子を見ていた一人の男が口を開いた。
カヤたち四人を除く全員が、その男の顔を見て驚いた。
「なっ……!?まさか、第三王子シーベル様っ!!」




