3-16 入学試験、終了
3章終了です。
できれば素の実力だけで相手したかったが、そうも言ってられない状況になってしまった。
「沈没。」
ベティ先生に聞こえない声量でカヤは静かに異能力を発動させる。攻撃に夢中になっているベティは気づかなかったが、スイレンはこの瞬間に測定機が反応していることに気づいた。
ベティの異能力を沈めたカヤは、ベティが異変に気付く前に接近する。【追撃】の心配がなくなった今、ベティ本体の攻撃にだけ気を付けていれば対処は可能だ。
「あん?そんな無防備に向かってくるなんて、いい度胸ね。今度は玉潰してあげるわよっ!!」
自身の異能力が無くなっていることに気づかず、ベティは勢いよく下から上に足を振り上げる。接近しているカヤの視線が自身のスカートへと向いていることに気づき、フッと嘲笑してしまう。
「私のパンツ程度で隙を晒すなんて情けないわね。ま、玉と別れる前に良い思い出ができたかしら?」
余裕綽々のベティだが、カヤに向けて放った【追撃】が発生していないことに今更ながらに気づいた。
「な!?どういうことっ!?」
慌てるベティの隙をついて、カヤは振り上げられたままの足を掴む。
「ひゃぁっ!」
自身の異能力の喪失という前代未聞の出来事に、ベティは戦闘どころではなくなっていた。いとも簡単に足を掴まれたベティはその場で尻もちをついてしまう。
「あまり下品なのは好きじゃないんですけど、さっきまでのお返しということで許してくださいねベティ先生。」
尻もちをついたベティの両足を掴んで、カヤはベティの足を上に持ち上げる。そのまま頭の方に向かって倒していき、ベティ先生の顔の前で足を左右に開かせた。スカートの中は盛大に晒されてしまっている。
あまりにも恥ずかしい格好。さっきまでの威勢も忘れ、ベティは頬を赤らめたままカヤを睨む。
「動けませんよね。俺の勝ちでいいですか?」
ベティは完全に拘束されており、身動き一つできない。
「そこまでっ。試験は合格です。」
カヤとベティ、二人の間にスイレンが近寄ってきて試験の終わりを告げた。
■
「…申し訳ありません。カヤさんにも、お見苦しい姿をお見せしました。」
試合が終わって、ベティは恥ずかしそうに何度も何度もスイレンとカヤに頭を下げていた。
「いいですよ。本気の戦闘となれば、ああいった攻撃が来ることも予想されます。今回の模擬戦は良い経験になりました。それから、こちらこそ調子に乗ってふざけた拘束しちゃってごめんなさい。」
受験生であるカヤの急所を狙った【追撃】を恥じていたベティだが、カヤにそう言われ決着した時の姿を思い返す。一気にベティの顔面が赤く染まる。
「ふふふ、決着はどうあれ見事な戦闘を見せていただきました。それにしても、まさかベティ先生に勝つとは思いませんでしたよ。さすがはハイベルさんの息子というだけのこともあるのでしょうね。」
「俺も、まさか父さんが≪学校≫の校長と知り合いだったなんて驚きましたよ。」
校長のスイレン=ニューワールドが、かの≪英雄≫のメンバーであるというのは周知の事実である。冒険者を目指すカヤにとっては雲の上のような存在がスイレンなのだ。そんなスイレンが父であるハイベルと知り合いであることに驚愕するのは当然のことだろう。
「ハイベルさんにはよろしくお伝えください。それでは、既に合格している三人のところへ案内しますね。」
別室で待機していたアンジュ、アレス、ミレアの三人のもとへと合流するカヤ。
四人全員の合格を知り、ミレアとカヤが盛大に盛り上がる中、アンジュとアレスは当然だろうという表情で見守っているのだった。
■
入学試験を終えたスイレンは校長室で一人座っていた。
「どうだったかしら?あの子たち四人はソフィの目にどう見えた?」
スイレンの他に誰もいない校長室の中で、虚空に向かってスイレンは問う。
しかし、何もない空間であったそこに、気づけば一人の少女が座っていた。
「四人ともかなりの実力者だというのは一目見た瞬間から理解できた。ただ、一人だけ。アレスという少年を見た時に、寒気が走ったわ。他の三人はただ単純に強いのだろうと理解はできる。カヤという少年も理解するには怪しいところだけど、それよりもアレスの方があまりに異質よ。強さという理解できるできない云々の話じゃない。おかしいでしょ!たかが十五歳の小僧のはずなのに、あいつの体から滲み出るオーラは私よりも長年の時を経ていたわ!」
ソフィと呼ばれた少女は先ほどのアレスの姿を思い返しゾッと背中を震わせる。
寿命を吸って若返っているソフィは、いつの間にか相手を見ればその者の生きてきた年数を見通せるようになっていた。そして、そんなソフィの目でアレスを見た時に不自然なほどに変色したオーラを纏っていたのだ。何回も人生をやり直している自分でさえも見通せない年数を生きていると感じ、理解できない者として恐怖を感じてしまった。
「でも、彼は生まれてから十五年しか経っていない。それは私が保証するわ。」
「だから異質だと言っている。十五年と決められた時の中で、あいつだけは何年の時を生きているというんだ!」
滅多に見せないソフィの怖がる様子に興味を示すも、アレスの出自を知っているだけにスイレンにとって警戒対象となり得ることはなかった。
「分かったわ。気には留めておくわね。」
4章もある程度書き終わったタイミングで投稿します。




