3-13 入学試験:ミレア
アンジュ、アレスと続いてミレアの番になった。
「それじゃ、カヤさん行ってきます!」
「うん、頑張ってねー。」
師匠であるカヤに向かってビシッと敬礼するミレアと、お気楽に手を振って送り出すカヤ。
ミレアもアンジュとアレス同様にトレーニングルーム内に入って、ベティから試験の内容を聞く。
「二十体のゴーレムを倒せばいいんですね。アンジュさんならさくっとクリアしちゃいそうな内容ですね。」
説明を受けて、ミレアはそんな感想を口にした。
実際にその通りなのだが、試験が終わるまでは他の者の合否を口に出すことはできない。
「ではミレアさん、試験を開始します!」
ベティの合図でやはり十体のゴーレムがミレアへと襲い掛かる。
「さてさて、彼女はどういう戦いを見せてくれるのかな。」
もはや試験の合否云々よりも、ただの興味本位でスイレンはミレアを見つめる。
アンジュとアレスを見て、ハイベルの言うように既に実力が飛びぬけているのは理解した。
一方、ミレアは試験開始の合図とともに構えを取る。
両手を前に出して肩幅ほどに足を開くと、腰を落とす。ジッとゴーレムの動きに注視した。
(二十体の内の十体がこちらに。思ったよりも動きは速くありませんね…。これなら筋力を多少増強すれば避けれそうですが……、この程度の相手の攻撃を避けていたらカヤさんに笑われてしまいます。)
正面と左右から一斉に突撃してくるゴーレムの動きを見極めて、ミレアは顔の前で腕をクロスさせると十体のゴーレムのタックルを受け止めた。
ドンッという衝撃とともに、逆にゴーレム達が押し返される。
「軽いですね。」
反動でよろめくゴーレム達を足蹴にして、ミレアは空中を闊歩する。一体一体、ゴーレムを踏み抜くと同時にもう片方の足でゴーレムの首を蹴って砕いていく。
このままではやはりミレアの合格ですぐに試験は終わってしまうだろう。
スイレンは異能力を操作して、崩れていくゴーレム達を再構築した。
「ちょっと、校長!そんなことしたら、ゴーレムを倒すというクリア条件は実質不可能になってしまいますよ!!」
ミレアに聞こえないように小さな声で抗議するベティ。
「もう試験は合格で良いわよ。これは、もう少し彼女の実力を見たい私のわがまま。」
スイレンのその言葉に、はぁとため息をつくベティ。
ただベティにとっても、目の前でゴーレムをいともたやすく粉砕するミレアが不合格などあり得なかった為に、それ以上抗議をすることはなかった。
(土で出来たゴーレムなだけあって、すぐに再生してきますね。しかも再生後はこころなしか前よりも頑丈になっているような感じですか。)
スイレンの企みで徐々に頑丈になって復活していくゴーレム達。そんなゴーレムを次から次へと倒していくミレア。
気づけば杖のことなど気にもせずに二十体のゴーレム全てがミレアに向かって攻撃を繰り返していた。
「まだまだ軽すぎますよ。そんな攻撃はミレアには通用しません。久しぶりに思い切り戦える良い相手でしたが、ここで終わらせてあげます。」
ミレアに突撃する二十体のゴーレムの中心で、ミレアは足を振り上げると、大きく地面を踏み抜いた。
ドシンッ……
地面が揺れると同時に、二十体のゴーレムが空中に浮く。
「筋力超強化。」
異能力によって、ミレアは自身の右足を強化した。
ミレアの周囲に浮かび上がらされた二十体のゴーレム達と同じ高さまで左足を軸にして飛び上がる。
「そりゃっ!!」
ブゥンっと風を切る音が鳴り、ミレアはゴーレム達の中心でまわし蹴りを放った。強化された右足は、空気すらも引き裂いていく。
ガラン、ガシャ、ドサッ
空中で崩れたゴーレム達が土塊となって地面に落ちていく。ミレアの蹴りによって寸断されたゴーレムを見てスイレンもこれ以上の復活は断念したのだ。
「異能力の発動も確認できています。それにしても、校長のゴーレムをあんなに容易く砕ける受験生がいるとは思いもしなかったです。」
ベティはミレアのもとへ駆け寄ると、合格を宣言する。
「やったぁ!!」
わーい、と飛び跳ねて喜びをあらわにするミレア。
あっけなさそうにしていたアンジュや、つまらなさそうにしていたアレスと比較して、少女らしい反応をするミレアにほっこりするベティ。
「おめでとうございます。これで残るのは一人だけですね。この調子なら試験をするまでもなく合格なのでしょうけどね。」
スイレンも拍手をしながらミレアのもとへと近づいていく。
今までの三人の実力を見れば、試験が本当に必要なのかと疑ってしまうくらいだ。
「ミレアの技術はカヤさんから教えていただいたものですから。ミレアが合格できるなら、カヤさんも間違いなく合格してくれるはずです!」
スイレンの言葉に反応してミレアはそう答えた。
師弟関係でもあるカヤとミレア。ミレアにとって、師匠であるカヤが先ほどのゴーレムに苦戦するなどあり得なかった。
「なるほどなるほど…。それは、普通に試験をしても合格するのは目に見えてますね……。」
ニヤリとベティを見て笑うスイレン。
しかし、悪戯を思いついたかのように笑うスイレンに誰も気づくことなくミレアもまた別室へと案内されていった。




