3-10 入学試験
「改めて自己紹介させてちょうだい。私たちは冒険者パーティの≪霊峰の頂≫。私がリーダーのサシャ。」
「私の名前はアルギュ。治癒士よ。」
「そして、私がナズナ。吸血フラワーの時と合わせてこれで二回も助けてもらったことになるわね。この恩は絶対に忘れないから。」
呪いが消えたサシャは、傷薬とアルギュの治癒によって全快まで回復していた。
「俺からも礼を言わせてほしい。あれだけの呪いを解呪してサシャを助けられたのはカヤ君のおかげだ。本当にありがとう。」
冒険者ギルドを代表してヴァルアも頭を下げる。
「≪霊峰の頂≫の皆さんもヴァルアさんも、そんなに気にしないでくださいよ。たまたま俺の異能力が呪いに対して相性が良かったというだけの話です。」
「ふふ、そうか…。そうだな。あまり深層に長居するのも得策ではない。サシャの体力も回復したようだし、とりあえず≪カナル樹海≫の外まで戻ろう。礼をするのであれば、その後ギルドで話し合うといい。」
ヴァルアの提案で帰ることにする一行。カヤとヴァルアの気配探知によって、魔物のいないルートで≪カナル樹海≫の外まで戻ってきた。
道中、カヤとクライブが入学試験の話をしていたことに気づいた≪霊峰の頂≫の三人が驚いた様子でカヤに詰め寄っていた。
「えっ、カヤってば冒険者でもなければまだ学生でもなかったの!?」
「え、うん。そうだよ。」
ギルドに戻った後でカヤをパーティに誘おうとしていたナズナがガックリした面持ちになる。サシャとアルギュはナズナをからかいながらも、同様に驚いていた。
「さて、俺とクライブはこのままギルドに戻るが、みんなはどうする?」
「私たちは少し荷物の整理をしてから戻るわ。思いがけない戦闘で、傷薬とか予想以上に使っちゃってるから確認しとかないと。」
「俺はちょっとだけ周囲を見てから帰るよ。」
「そうか分かった。しつこいかもしれんが、≪霊峰の頂≫はくれぐれも今後は気を付けるようにな。自分たちの実力に合わない場所に挑めば簡単に命を落としてしまうことを忘れてはいかんぞ。」
ヴァルアとクライブ、そして≪霊峰の頂≫に別れを告げてカヤは一人になる。このまま一人で≪カナル樹海≫に入ろうかなとも思ったが、戻るのが遅くなって皆を心配させてもいけないと思いなおし人気のない場所でカヤはヴォイドを呼ぶ。
「お願い、ヴォイド。」
ヴァルア達と一緒に戻れば、不正に王都の出入りをしていたことがバレてしまう。朝と同様にカヤはヴォイドの時空を通って王都内部へと戻る。
「よし。誰にも気づかれていないな。」
当初の目的である魔物との戦闘はあまり果たせなかったが、見たこともない魔物との遭遇にカヤは満足していた。
■
一週間後。
家の前でハイベル、リア、ゼン、ヨミに見送られてカヤ達四人は≪学校≫へと向かった。今日行われるのは入学試験。数日に渡って行われており、膨大な数の入学希望者がふるいにかけられる。
「試験の内容は教えてくれなかったけど、どんなものなんだろうな。」
父さんは試験の内容を知っていそうだったが、結局教えてはくれなかった。油断しなければ問題ない、その一言だけで送り出されたのだ。
「届いた受験番号の順番だとすると、私が最初でアレスが二番目、ミレアちゃんが三番目でカヤが最後みたいね。なんだか今更だけどドキドキしてきたわね。」
家に送られてきた受験票には受験番号が書かれており、四人は連番となっていた。
「ハイベルさんが問題ないって言ってたし、大丈夫だろう。」
「ミレアはそもそも受験させてもらえることに感謝してますからね。本当はもう一年待たないといけないのに、ハイベルさんのお陰で特別に受験させてもらえることになりましたから!」
≪学校≫の受験資格としては第一に異能力の基礎使用が可能なこと。
そして、第二に十五歳以上であることが決められている。
カヤとアンジュとアレスは十五歳だが、ミレアはまだ十四歳。本来であれば、一年後まで待たなければいけないが、校長であるスイレン=ニューワールドがミレアの受験を極秘に受理したのだ。
王城の次に大きい建物のため、≪学校≫まで道に迷わずに着くことができた。
校門には大きく、『入学試験中のため、在校生であっても立ち入りを禁ずる』という貼り紙が貼り出されている。校門の横に置かれている受付で、カヤたち四人は受験票を見せる。
「アンジュ様、アレス様、ミレア様、カヤ様の順で試験となります。試験会場は校内のトレーニングルームにて行われますので、案内に従ってお進みください。」
受付を済ませた四人は設置されている案内看板に従って、校内を進む。そして、野球場ほどの大きさを持つ建物の前で案内は途切れていた。入口にはトレーニングルームと書かれている。
建物に入る扉の前では一人の女性が立っていた。
「≪学校≫へようこそ。私の名前はベティ、皆様の試験の案内を務めさせていただきます。さっそくではありますが、この建物の中で今から入学試験を行います。受験票の番号順に行っておりますので、アンジュさんからお願いしますね。詳しい試験の内容はこの中にて一人一人個別で行わせていただきます。ほかの三人は合図があるまでここでお待ちください。」
「行ってくるね。」
気軽な雰囲気でアンジュはベティと一緒にトレーニングルームに入っていった。




