3-7 吸血フラワー
「父さん!カヤ!」
クライブは倒した突撃ボアには目もくれず、悲鳴が聞こえてきた方に目をこらしながらヴァルアとカヤに向かって叫ぶ。
「ああ分かっている。すぐに向かうぞ。」
カヤとヴァルアとクライブが三人で悲鳴の聞こえた場所に急行する。悲鳴が聞こえた場所は元いた場所からすぐ近くであったために三人はそれほど時間を要することなく到着した。
「イヤァアアッーーー!!離してっ!!」
冒険者と思われる女性が一人、地面から飛び出ている植物に拘束されていた。ヴァルアから聞いていた情報を頼りに吸血フラワーの仕業だとすぐさま判断するカヤ。上を見上げれば、拘束されている女性冒険者が目に入るが少々見るのが申し訳ないような恥ずかしい格好になってしまっている。
逆さまにされて拘束されている女性冒険者は丈の長いローブを着用しておるが、そのローブがペロンと腰の辺りまでめくれてしまっているのだ。ローブの下に身に着けている下着が露わになっており、さらに股の間を吸血フラワーの根が這うように動いている。四肢も全てガッチリと拘束されており、自力での脱出は難しそうだ。
「ヴァルアさん、すぐに彼女を助けましょう。」
カヤは判断を仰ぐように後ろにいるヴァルアに振り返る。そして、気絶し血を流して倒れるヴァルアの姿が映り込んできた。
「なっ!?気配もなく襲撃されたのか。全く気付かなかったぞ。」
突然の事態にカヤは気を張りつめて戦闘態勢に入る。
「待って、待つんだカヤ。父さんは襲われたわけじゃない。」
そこにクライブが慌てたようにヴァルアの下に駆け付ける。
「……?どういうことだ、クライブ。」
クライブはカヤからの質問に戸惑いの表情を浮かべながらも、観念したかのように話し出した。
「誰にも言わないでくれよ。父さんは……、女性のハレンチな格好に弱いんだよ。今も、あの人のパンツが見えてしまっているせいで父さんは気絶してしまったんだ。それからごめん、かくいう僕もなんだか目眩が……、すまないけど、後は任せた。」
クライブはそう言いながら、目を回してヴァルアの上に倒れ込む。
「いや………、えーー。」
確かにカヤも女性冒険者のパンツが見えている姿にドキッとはしたが、魔物に襲われている緊急事態にそんな邪な気持ちを抱くわけもなくヴァルアとクライブの情けない弱点に唖然としてしまった。
「お願いっ、助け…。」
女性冒険者もカヤ達に気づいたようで、こっちに声をかけてくる。吸血フラワーの根が女性冒険者の口を覆い、声を出させなくするが今さらである。
タン、と地面を蹴ってジャンプするカヤ。持ち上げられて拘束されている女性冒険者と同じくらいの高さまで跳ぶと、空中で前転するように身を捻り吸血フラワーの根に向かって足を振り下ろす。ザクッと、いとも容易く吸血フラワーの根が切断され、女性の足が自由になる。カヤは前に一回転した勢いを殺すと、そのまま空中で今度は右に体を捻る。女性の腰に巻き付いてる根に向かって回転蹴りを行うことで、またしても簡単に根が切断された。
「キイイィッーー!!」
だがその時、怒りをにじませた吸血フラワー本体が地中から飛び出してきた。大きな牙をつけた花はカヤではなく女性冒険者を丸飲みにしようと口を大きく開け放っている。
「ヤァアッ、イヤッァアアアーーーーーー!!」
真下に口を開け広げた吸血フラワーの登場に、女性冒険者の大きな悲鳴があがる。
「なんだ、ちょうどよかった。隠れている本体を探す手間が省けたな。」
カヤは吸血フラワーの根を蹴って、花本体の真上に跳び上がる。
「今度は邪魔しちゃダメだからな、ヴォイド。」
真上からカヤは吸血フラワーに向かって急降下する。その最中、吸血フラワーの餌食にされそうになっていた女性冒険者を拘束する最後の根を手刀で両断する。空中で拘束が解かれた女性冒険者に手を伸ばし抱き寄せるカヤ。
「助けてくれたのは嬉しいけど、どういうつもり…!?」
体を密着させるように抱きかかえられ狼狽える女性冒険者。カヤはそんな態度に気づくことなく、女性冒険者に向かって笑いかける。
「せっかくですし、やられたお返しも込めて一緒に討伐しませんか?」
女性冒険者を抱えたままカヤは真下で待ち構える吸血フラワーに向かって落ちていく。
「……、そうね!そういうこと。反撃の機会までくれるなんて、お姉さん嬉しいわっ!!」
女性冒険者は二ィッと笑うと、眼下に待ち構える吸血フラワーに向かって手を向ける。
「さっきまでは良くもやってくれたわね。仲間たちが待っているっていうのに、無駄な時間使わせてくれちゃって…。たっぷりとこらしめてあ、げ、るっ!!」
女性の手からバチバチッと火花が散ったかと思えば、次の瞬間、勢いよく吸血フラワーに向かって電撃が発生した。
ドォォウンッ
吸血フラワーと周辺の大地を焦がす熱量を纏った電撃。
「すごいですね。完全に吸血フラワーの動きが止まった。」
「散々な目に合わせてくれたお礼よ。そして、止めの一撃をくらいなさい!」
カヤと女性冒険者は目を合わせると、お互いに片足を下に突き出した。動かなくなった吸血フラワーに向かって落下の勢いそのままに大地まで踏み抜く二人。
「キッァアア………。」
眉間と思われる場所を踏み抜く一撃に、吸血フラワーは血をまき散らして絶命した。




