2-18 自慢の孫
その夜、≪ミュール村≫の村人たちは全員の無事に感謝し、盛大にカヤへもてなしを行った。今ある食糧で作れるだけ豪華な食事を振る舞い、美麗な踊り子たちによる祝いの舞、カヤのためにと村の土地も用意されていた。
村一番の大工がガルーダとベイを引き連れて、森で木材の回収を行っている。カヤはそんな村人たちからの善意をありがたく受け取っていた。
「この≪カナキシ≫のジュース美味しいな。何度でも飲みたくなるよ。」
「へへへ、そうでしょう。この村で採れるとびきりのフルーツですからね。是非どんどん飲んでください。」
見た目は白いリンゴ。≪ミュール村≫で栽培されている≪カナキシ≫というフルーツは、その美味しさだけでなく疲労回復などの効果も含まれていた。
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「次から次へとすまんな。絶望していた頃の反動か、みなが生き生きと今この瞬間を楽しんでおるのだ。それもこれもカヤ殿のおかげ。みな、カヤ殿に話しかけたくて仕方がないのであろう。」
少し落ち着いて宴会の様子を離れて見ていたカヤにララロワが話しかける。
「ララロワさん、俺はザワロワにお願いされて来ただけさ。ザワロワがこの村を全力でどうにかしようとしていたことを俺は知っている。だからこそザワロワの願いに俺は、まぁ簡単に言うとほっとけなくなったわけだ。だからさ、全てはザワロワの頑張りがあったからこそじゃないかな。」
「カヤ殿の男がそう言ってくれるか。絶望に打ちひしがれていたこの村で唯一ザワロワだけは常に希望を抱き、探し回っていた。そして本当に希望を持ち帰って来てくれたのだからな、さすがはわしの自慢の孫じゃよ。」
その頃、カヤとララロワが会話しているすぐそばで聞き耳を立てていたザワロワは自らのことをそんな風に言われ身もだえていた。
「なぁカヤ殿、少し聞いてもいいかの。」
「いいよ。」
「わしの自慢の孫であるザワロワなのだが、どうじゃろう。カヤ殿が良ければ嫁に貰ってはくれんかのぅ。」
「「えっ!?」」
突然のララロワの申し出に困惑したのはカヤだけでなく、近くで聞き耳を立てていたザワロワも驚き声をあげる。もちろんザワロワの気配にカヤもララロワも気づいていたわけで、今さら隠れていたことに驚くことはない。
「ちょっと、お婆ちゃん!急に何言ってるの。」
隠れていたザワロワが、身を乗り出しララロワに言い寄る。顔を真っ赤に染め、あたふたとララロワの襟をつかむ。
「カヤも気にしないでね。お婆ちゃんの戯言だから、聞かなくていいから!!」
ザワロワは次いでカヤに視線を向けて、真っ赤な顔で注意する。「お、おぉ…。」となぜか怒られているかのような勢いにカヤもたじろぎながら頷いた。
「ヒューヒュー、熱いねお二人さん。これは今夜にでも同じ寝床で交わっちゃうかな。」
だが、どこからともなくカヤとザワロワにかけられる言葉。カヤとザワロワとララロワの他に近くに誰もいないが、姿を消している誰かがザワロワにちょっかいをかけるように言葉を投げかけていく。
「顔を真っ赤にしたザワロワの可愛さならカヤさんも一撃よ。ここは、問答無用で押し倒して無理やりにでも繋がるのがおすすめよ。口では否定していてもカヤさんのことが大好きなザワ、ぶべっ。」
ザワロワがまるで見えているかのようにキュールの口を両手でふさぐ。
「良い度胸してるじゃないキュール。わざわざ冗談言う為だけに透明になるなんて。でも残念、魔力量が増えたことでキュールの持つ魔力の流れが私には見えちゃうようになったみたい。今もキュールの輪郭だけははっきりと見えているわよ。…それで確か、完全に姿を消すには裸になる必要があるのよね。あんなふざけたことを言う悪い子は、このまま村の真ん中で大開脚した姿のまま縛り付けてあげる。」
口を塞がれ目の前に迫るザワロワの目は狂気に染まっていた。
(からかいすぎてザワロワの怒りが爆発しちゃった……かしら?)
キュールは透明化を維持したままザワロワのもとをゆっくりと離れるように後ずさる。
「どこ行くのかしらキュール。もっと一緒に楽しみましょ。」
そんなキュールの背後に回ったザワロワがガシッと腕の下に手を入れてキュールを拘束する。
「本当に見えてるの!?ごめんごめん冗談だから、そんな本気にしないでよ。私たちの仲でしょ。」
ガッチリと拘束されたキュールの全身に冷や汗が流れる。こうなってしまってはキュールの身体能力ではザワロワを振りほどくことができない。
「そうよね。私たちの仲だもんね、大丈夫よ。たとえ明日キュールの異能力が解けて村中に恥ずかしい姿を見られても私はキュールの親友のままだよ。」
ザワロワはキュールを拘束したまま見通しの良い大木の近くへと歩いてく。
「許してっ、ごめんなさいいぃ。そんな格好で縛り付けられたら私お嫁に行けなくなっちゃう。……そうなったら、私もカヤさんに貰ってもらうしか…、んんぅ!」
キュールの放つふざけた言葉にザワロワはキレた。
「ザワロワどこ触ってんのよ。やめて、摘ままないで!」
「あらー、キュールったら変な声あげてどうしたのかしら。カヤさんに貰ってもらう、とか聞こえたんだけど聞き間違いかしら?」
「冗談だって。ちょっと、んっ、ダメ。爪立てないで……、引っ掻くのもダメッ!!」
透明になっているキュールであるが、その会話からザワロワに何かされているのは明白であった。
「摘まむのも引っ掻くのもダメなの?しょうがないな、私は優しいからキュールの言うようにやめてあげる。でも代わりに下の方でお仕置きね。」
ザワロワの手がキュールの下半身へと向けて伸ばされる。
「ダメ―――ッ!!」
キュールの絶叫は騒いでいる村人たちに届くことはなかったが、カヤとララロワの耳には確かに聞こえてしまっていた。
「……バカ二人がすまんな。わしの自慢の孫という言葉は撤回させていただこうかのぅ。」
「ハハハ、まぁ色々な仲の良さがありますからね。」
キュールの色っぽい声を聴いてしまったカヤは照れを誤魔化すように笑うしかなかった。




