2-13 ザワロワとキュール
「ありがとうね、カヤ。なんだか大げさな感じになっちゃったけど、あいつの相手をできるのはカヤしかいないから。最後に私からお願いを少しだけ追加してもいい?」
カヤに詰め寄るザワロワ。集会場の外に向かおうとしていたカヤは振り返り、ザワロワと目を合わせる。
「俺にできることなら、いいけど。」
その言葉にザワロワはニッと笑うとカヤに向かって拳を突き出した。
「もう様子を見るのはおしまいにして。村のみんなの不安を一刻も早く消し去ってもらえないかな?」
「……そうだね。村のみんなを見ていて分かったよ。この村はあまりにも活気がなさすぎる。そりゃザワロワも無茶して俺たちの村を襲うわけだ。」
「な、何よ!なんでいきなり、そういう話に……、」
「違うよ。俺が言いたいのは、ザワロワは本当にみんなを大切に思っているってことだよ。そして村のみんなもまたザワロワを大切にしている。良い村だよ、ここは。だからさ…、任せろ!!」
ザワロワの拳に自信の拳をぶつけるカヤ。
ハッと驚くザワロワの顔を見て、ニッコリと笑うとカヤは崩れた壁の隙間から外へ出ていった。任せろ、とザワロワへの言葉を示すように合わせた拳を上に掲げて。
「………。」
自身の拳を見つめ言葉を失うザワロワ。
「ボーっとしないの。私たちもせめてカヤさんに声援を送るくらいのことはしないと。」
そんなザワロワの背中をバシッと叩き、手を引っ張るキュール。ザワロワの頬が朱色に染まっていることにはあえて触れず、キュールは壁際までザワロワを連れていく。
「そうじゃな。キュールの言う通りじゃ。わしらに戦う力はなくとも、カヤ殿のためにできることをやろうではないか。」
キュールに続きララロワや村のみんなが続く。みんなで外の様子を伺えるように、崩れた壁の瓦礫をどかす。
「でも、大丈夫かな。さっきみたいにまた動きを封じられたりしたら、カヤさんに勝ち目はあるのかな。」
キュールの疑問。カヤの頑丈さのせいで忘れていたが、その疑問により先ほどの戦闘をみんなが思い出す。
よくない結果を想像し、気分が落ち込む人も出てくる中ザワロワの声が響き渡った。
「大丈夫よ。カヤの強さを知っている私が保証する。さっきまではきっと、カヤの中で躊躇があったんだと思う。敵の攻撃を受けるだけで、カヤの方から手を出していなかったからね。」
キュールは親友であるザワロワの顔を見つめ、頷いた。
「ザワロワったら、カヤさんのことを喋る時だけ声ちょっと高くなってない?」
「えっ……!そう?そうかなぁ。」
「私の知らない間に恋する乙女になっちゃったのか。なんだか嫉妬しちゃうな。」
ザワロワの顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「そんなんじゃないからっ!!もうっ、やめてよねキュール。」
「じゃ私がカヤさん狙ってもいい?さっき裸見られちゃったし。」
すでに服を着ているキュールはわざとらしく自分の体を抱きしめて、恥ずかしがっているポーズをとる。
「へ、へぇ。ふぅ~ん、いや、う~ん……、ダメッ!!よく分からないけど、ダメだからね!!」
キュールに飛びつくザワロワ。自分でも何を言っているのか理解しないまま、キュールを押しとどめる。
「ふふっ、冗談だよ冗談。さて、こんだけふざけられる余裕も出てきたし…、カヤさんの戦いをしっかりと見届けようか。」
瓦礫をどかし、集会場の外を覗き込む村人たち。
今の間にもカヤはガルーダとベイの二人を相手に戦いを始めていた。ガルーダとベイもすでにカヤに対して余裕などなくなっていた。魔王候補であり魔人の中でも屈指の肉体を誇るガルーダに、珍妙な技を使うベイ。魔人の中でもトップクラスの二人を相手に戦うカヤの姿は、村人やキュールを黙らせるには充分であった。
もはや誰の目にも明らかに、カヤはガルーダとベイを圧倒していた。




