2-3 主従契約
ザワロワの話はこうだった。
以前までの魔王が人族のパーティー≪英雄≫によって討伐された。それにより次期魔王の座を狙って動き出した力ある魔人たち。魔王として認められるのに必要なのは強者であるということ。魔人族の代表である魔王の座に力なき者は座れない。
そこで重要になってくるのが契約であった。魔人族が古くから利用してきた主従契約と呼ばれるもの。両者の合意のうえでのみ行えるが、一度契約を行ってしまうと以降は主となる者に全ての権利が与えられていた。従者に自身のチカラを分け与えたり、逆に従者のチカラを引きずり出すことも可能。そこに従者の意思は関係なく、主の気分次第では従者はチカラを全て奪われる。ここで言うチカラとは生命エネルギーそのものであり、従者は主に命を捧げていることと等しかった。もちろんのことであるが契約破棄も主しか行えず、また、従者は複数の主と契約を結ぶことはできない。
この主従契約こそが魔王の座を狙う者たちが取る行動であった。従者を増やせば増やすだけ自身のチカラが上がり、ライバルと差をつけられる。
「だから、私たちの村を狙って来ている奴は力ずくで契約を迫る。反対は許されない…、私たちの村に戦える人はいないから。」
「それで、ザワロワはみんなを守るためにあの異能石に頼ったってわけか。戦える人がいないなら、自分が戦えばいいと考えて。」
「そうね。村で一番強いって言われて調子にのってたのね。ただ異能力に恵まれただけなのに、うぬぼれていた。私ならみんなを守れるって勝手に考えて、勝手に行動した。」
「いいじゃないか。自分の望む未来を手に入れるために手段を選ぶ必要はない。俺もザワロワの立場ならそうしたかもしれない。」
「ほんと優しいね。カヤって。」
シャドーウルフの背中に跨り、カヤとザワロワは話す。着々と近づいている≪魔の森≫へと到着する間、二人の会話はまだまだ終わらなかった。
「でも、素直に契約を受け入れるってのはどうなんだ。チカラを得たい奴だとしたら、むやみやたらに従者を失うような真似はしないと思うけど。」
「うん。カヤの言う通り契約を受け入れれば、その一時は助かるわ。でも、他の魔王候補に見つかったら終わり。ライバルのチカラを減らすために自身の従者にならない者を放っておく奴なんていないわ。」
「なるほどな。一人の主にしか仕えられないってのが原因で、そうなるのか。それにしても物騒だな、魔人族ってのは。」
「勘違いしないでよね。魔人族のみんながみんなそういうイカれた奴ばかりじゃないんだから。」
ザワロワの説明に対し、気になることをカヤが聞きザワロワが答える。こうして、カヤの中でもザワロワが抱える問題がはっきりとしたものになっていった。
「なんとなく分かった。ただ結局は相手の実力次第だな。俺とザワロワの二人でかかってもどうしようもない相手なら諦めるしかないな。」
「フフフ、あのキメラより強い奴なんていないわ。それこそ初代魔王とその配下くらいなもの。それに勝ったカヤなら大丈夫だって信じてる。」
「どうだかな。あの戦いは、異能力のおかげで勝てたみたいなものだしな。」
「自分に自信があるくせにこういう時は謙遜するのね。」
ザワロワが笑う。キメラとの戦闘を経て、今じゃ遠慮することなく話せる関係になった二人。
(出会ったばかりの魔人族である私のために、迷うことなく力を貸してくれるあなたなら村のみんなもきっと認めてくれる。魔人族と人族との間で争いが繰り広げられているとしても、カヤとは一生仲良くしていたい。)
カヤの横顔を見つめる目に熱がこもる。無意識に頬を赤く染めているザワロワだが、カヤはそんなザワロワの変化に気づくことなく話し続けるのだった。
主従契約と言っても、なんでも命令を聞くとかそういうものではありません。主からの一方的なチカラの貸し借りを目的としたものです。




