2-2 ≪魔の森≫へと
ヴォイドによる時空移動。現在の時空とは異なる概念を持つ別の時空を経由することで、距離を無視しての移動を可能にする。ただし、人前に姿を現すことのないヴォイドと気持ちを通じることが前提で、そのうえ別時空の環境に適応できる肉体を持つことが必須であるが。
≪カルソト村≫から一瞬にしてキメラと戦闘を行った場所へと移動してきたカヤ。
「カヤ…、ヴォイドのこと、たよってくれる…。嬉しい…。」
異なる時空にいるヴォイドのそんな声が聞こえてくる。「ありがとう。」と小さな声で呟き、カヤは辺りを見渡した。
(視線を感じるってことは、やっぱりここで待ってたか。良かった…、集合場所を決めてなかったからどうしようかと。)
カヤは強い視線が感じる方へ向かって手を振る。
困っている魔人族の少女を救うため、約束を守るためにここに戻ってきたのだから。
「遅い!!」
そう言って、木の陰から姿を現すザワロワ。別れてから一日も経っていないが、今すぐにでも出発したいザワロワは声を荒げる。猶予がない、と焦りを感じて。
「もう時間がない。村の近くに待機させていた子から連絡があったの。もうすぐ…、もうすぐ来るって。」
以前よりも必死なその形相にカヤも真剣な表情になる。
「遅くなってごめん。急ごう、話は向かいながら。」
「そうね。ちょっと待ってて。魔物召喚。」
ザワロワが異能力を発動する。キメラとの戦闘から時間が経過し、ザワロワのチカラも回復していた。
召喚されたのはカヤより一回り大きい二匹の狼型の魔物。カヤも見たことのないその魔物の名はシャドーウルフ。日の光が差さない暗闇を好み、暗闇の中でその魔物は最速である。
「もう陽が沈む。この子たちに乗っていくのが一番速いわ。乗って。」
ザワロワはそう言うと、一匹のシャドーウルフに跨る。
カヤもそれに倣ってもう一匹のシャドーウルフへと跨った。
「よいしょっと。よろしく頼むよ。」
カヤはシャドーウルフに声をかける。頭を撫でられて気持ちよさそうにしているシャドーウルフは「クゥゥ~ン。」と鳴いた。その瞬間、近くで嫉妬している別の魔物の気配を感じカヤは撫でるのをやめた。
「その子より…、ヴォイドの方が、速い…もん。」
そんな声が聞こえてきた気がしたのだ。
シャドーウルフも自身より格が上のヴォイドから向けられた怒気に気づいたのか身を縮ませる。そんな様子に苦笑いをするカヤ。
「行くわよ。カヤなら大丈夫だと思うけど、振り落とされないようにね。」
ザワロワの合図にシャドーウルフは慌てたように駆け出した。
「こりゃすごい。本当に速いな。」
自身よりも速い生物にカヤは驚きの声を上げた。
(こんな魔物もいるのか。俺よりもこんなに速い…、まだまだ俺も鍛錬が必要なようだな。)
『最速』と呼ばれる魔物に対しても、カヤは速さで負けたくなかったのだ。
≪魔の森≫へと向かって猛スピードで進むシャドーウルフ。
乗りながら、ザワロワは口を開いた。
「それじゃ、着くまでの時間で説明するわね。私の村に迫る危機について。」
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『しばらく出かけます。すぐに戻ります。 カヤ』
カヤの家の机の上でアレスはそんな置手紙を見つけるのだった。
「また面倒なことに巻き込まれやがって。」




