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昇る沈没者  作者: 安来 光
第1章 カルソト村襲撃編
22/72

1-21 スタート

途中まで書いたものが保存できずに全部消えまして、思い出しながら書きました。

「カヤっ!!大丈夫!?」


 森を走り抜けてきたアンジュは目の前に広がる景色を見て慌ててカヤへと駆け寄った。

 何十という数のクレーター、それは今までにこの場所で激しい戦闘が行われていたことを示していた。カヤの強さを知りながらも、心配せずにはいられなかった。


「この通り、なんともないよ。」


 慌てて駆け寄ってくるアンジュを安心させようと両手を広げて無事をアピールするカヤ。そんなカヤの姿を見てアンジュはホッと一安心した。


「よかった。」


 カヤの前で立ち止まったアンジュは気持ちを落ち着かせると周囲に目を配る。

 カヤの無事を確認した今、アンジュにとって気になるのはザワロワであった。村を襲ったことも許せないが、アンジュはザワロワに負けたことも根に持っていたのだ。


「それで、あの女は?見当たらないようだけど。」


「ああ、ザワ……、」


 アンジュの鋭い視線がカヤに飛ぶ。カヤはザワロワの名前を出しそうになり咄嗟に口を閉じた。


(気を付けないと。魔(・)物(・)を(・)召(・)喚(・)す(・)る(・)ザワロワをアンジュは許さないだろうから…。さて、どうしたものか。)


「彼女が村の近くで暴れそうになったから急いでここまで引き離したんだ。そしたら、とんでもなく強い魔物を召喚されてさ。その魔物と戦っている間に逃げられちゃった。」


 ほんの少しの真実を混ぜながら、考えた言い訳を話す。申し訳なさそうにしながら、ザワロワに心の中で「ごめん。」と謝っていた。


 そんなカヤの様子を見て、


「私が弱かったから。カヤにだけ迷惑かけちゃったわね…。」


 落ち込むアンジュだったがそれもつかの間、怒りをぶつけるように空に向かって拳を突き立てた。


「絶対に許さない!今度会ったら、必ずぶっ飛ばしてやるんだからっ!!」 


 闘争心を燃やすアンジュ。そんなアンジュの様子を見て、カヤは心の中でザワロワに再度謝るのだった。


■


 魔人族の襲撃という大きな危機を乗り越えた≪カルソト村≫。だが、カヤにとってはその事(・)件(・)をきっかけに念願であった異能力に目覚めることができたのだ。


「ここからだ。俺の冒険は、今日スタートした。」


 前を向いて、夢である冒険者にまた一歩大きく近づいたカヤ。

――まだ【沈没】がどれだけ異端で異常な異能力なのかは理解できていなかった。


 所有することを許されていない三(・)つ(・)の異能力。【沈没】がその内の一つであり、【沈没】の異能力を自覚してなお生きているカヤの現状は本来あり得ないものであったのだ。


 ただ、その事実を知る存在は人族全体の中にもごくわずかしかいなかった。



■


 遥かなる上空にて、伝説と呼ばれている存在は気づいた。


「珍しいな、我に伝わるほどの動揺とは。アイツとの戦い以来ではないか。」


「・・・・・・。」


「ほぅ。」


 グローリスはフッと笑うと自らが治める大地へと降りていく。懐かしき知人からの音なき返事に何百年ぶりだろうかと思いを馳せながら。


「吉兆か、はたまた凶兆か。いずれにしろ楽しみができたのはいいことだ。」


 

1章終わりです。

コメント待ってます。質問でも罵倒でもなんでもどうぞ。

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