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昇る沈没者  作者: 安来 光
第1章 カルソト村襲撃編
19/72

1-18 約束

もう少しで1章終わりです。

「私たちを助けて!!」


 キメラに勝利した余韻も忘れるほどの緊迫とした空気。少女の悲痛な訴えにカヤも真剣な態度でそれに答えた。


「もちろんさ。俺の中で君はもう他人じゃない。君が困っているのなら、俺でよければ力になるよ。」


「……っ!!本当に!?」


 キメラとの戦闘で共闘したとはいえ、人族と魔人族。魔人族の少女もそれを分かったうえで、無理だと思いながらも願わずにはいられなかった。その逞しい人族に全てを託したくなってしまったのだから。

 だからこそ、あまりにもあっけない返答に魔人族の少女も耳を疑った。


(敵わない…っ。この人間になら私の全てを投げ出しても、まだ足りない。一体どれだけの恩を。)


 遥か高みにいる目の前にいる人族の少年に目を向けていると、


「なっ!?なにを。」


 いきなりのことに魔人族の少女は驚きの声を上げた。


「優しい君があんなことをしたんだ。村を襲うだなんて、何か大変なわけがあったのだろう。」


 カヤがそっと魔人族の少女を抱き寄せたのだ。魔人族の少女の震える体を見て、少しでも落ち着かせようとしたカヤの行動であったが、それによって魔人族の少女の中で張りつめていた何かが決壊した。


 そしてそれは、涙となって魔人族の少女の瞳から次から次へと溢れ出したのだ。カヤが支えていなければ今にでも崩れ落ちてしまいそうな華奢な体。カヤは魔人族の少女が泣き止むまでその場を動かなかった。





「グスッ、みっともないところを見せちゃったわね。ごめんね。」


 目元を赤く染めながらも、気丈に振る舞う魔人族の少女。


「別にいいさ。誰だって泣きたい時は泣けばいい。」


「そうね、ありがと。泣いたおかげでずいぶんスッキリしたわ。私たちに迫る絶望なんかあのキメラと比べれば全然大したことじゃない。あなたの助けがあればきっと乗り越えられる。約束したんだからね、私の全てを渡す代わりに私たちを助けてくれるって。」


 顔を真っ赤にしながらカヤに詰め寄る魔人族の少女。大きな決意をした乙女のような顔になっているが、そんなことにカヤは気づかず約束を確かなものとする。


「ああ。俺の力で君が救われるなら、俺は喜んで君を助けよう。」


「約束破ったら承知しないだからね。」


「善処するよ。それよりも、そろそろ話してくれないか。君は一体何で村を襲うようなまねを?」


 カヤの言葉にハッとする魔人族の少女。大事な内容を何一つ話さず約束に取り付けている現状に恥ずかしくなったのだ。


(私ったら、急ぎすぎよ。)


「……そっ、それはそうとまだ名乗ってなかったわね。お互い名前を知らないままじゃ不便でしょ!!」


 恥ずかしさを誤魔化すために咄嗟に話を転換した魔人族の少女であったが、未だ名前すら知らない二人にとってそれは確かに必要なものであった。


 カヤも「そういや、そうだな。」と頷いた。


 先に名乗ったのは魔人族の少女だった。慌てた様子を悟られないように呼吸を落ち着かせると、胸に手を当てて話し出した。


「じゃあ、私から。名前はザワロワ。魔人族で、十五歳。≪ミュール村≫村長の孫よ。あなたの前で言うのもアレだけど、村の中じゃ一番強いんだから。」


「俺の名前はカヤ。≪カルソト村≫のカヤで、奇遇かな、ザワロワと同じ十五歳だよ。こうして会ったのも何かの縁だ。種族の違いなんて気にせずこれからもよろしく。」


 右手を前に出すカヤ。ザワロワはカヤの名前を忘れないように数回呟いた後、


「よろしくね、カヤ。」


 そう言ってカヤの手を握り返した。

やっとザワロワの名前出せました。

「魔人族の少女」だと長かったので早く名乗らせたかったのですが、けっこうかかっちゃいましたね。

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