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「感染症専門の医者ということは、他にも色んな感染症と戦う事になりそうですからね。ですが一つだけ気になることが」
セターレがそう言ってメガネを押し上げる。そんなセターレに私は首を傾げて返事をすると、セターレは小さな息をついて話し出した。
「彼が投薬をする絵が映る寸前、その絵が一瞬乱れたのですよ。トワも見ていたでしょう?」
「はい。その前に一瞬だけフレッドと映った人物、フードを被っていましたが、あの衣装は……魔王でした」
「どういう事? 魔王ってあんた達が討伐したんでしょ?」
「うん、そのはずなんだけどね」
そう言ってトワはチラリとクリスを見た。そんなトワの視線に気づいたのか気づいていないのか、クリスはそれを聞いて腕を組み、難しい顔をしている。
「もしかして、今回僕が召喚されたのはそれが理由か?」
「もしもあの一瞬映った絵も正しかったのであれば、そうではないでしょうか」
「マジかよ。だからこんな短期で呼ばれたのか」
「かもね。おまけにトワ達が一瞬視たっていう絵がもし合ってたんだとしたら、聖女がフレッドに言った言葉の意味も分かるね」
「どういう事です?」
「聖女はフレッドの頼み事を聞き入れなかった。理由は味方じゃないからでしょ? それは聖女の知ってる未来にはフレッドはこれから敵役として出てくる予定だったって事だよね? でもフレッドは魔王に出会う前に薬の存在を知ってしまった。だから鏡の絵が乱れたって事じゃないの? つまり、未来が変わったって事でしょ?」
「……一理あるな。おい、すぐに宿に戻って話し合いだ!」
クリスはそう言って羽根を輝かせたけれど、そんなクリスを私は止める。
「あ、ちょっと待って! まだ買い物全部終わってないからそれ済ませてからね!」
「はあ!? おっまえ、今それどろじゃねぇだろ!?」
「こんな時だからこそでしょ! 万が一魔王が蘇ってみなさいよ! 下手したら来年お祭り無いかもしれないじゃないの!」
「……ヒマリ……またそんな自分本位な事言って……」
「姫よりもずっと斜め上をいく人を初めて見ましたね。面白い方です」
それから私達はパンフレットに書き込んだ買い物リストを全て周り、戦利品を持って宿に戻った。
「たっだいま~」
両手いっぱいに戦利品を持ってルチルの待つスイートルームに戻った私達を、ルチルは部屋の真ん中で仁王立ちをして待っていた。
「遅かったじゃない! 人員をこちらに回してもらう手紙もとっくに書き終わったわよ! で、薬はどうなったの?」
「はい、これお土産ね。薬ね、大丈夫そうよ。フレッドってば医者兼研究者だったみたいなの。後は任せておけばあっという間に出来上がるでしょ」
私の言葉にルチルは顔を輝かせて喜んだ。ルチルは腐っても姫だ。国民の幸せは自分の幸せなどと本当に思っているような人で、話を聞く限り現王の子ども達の中でも一番の庶民派である。
「良かったわ! いつか正式にあの病院に挨拶に行かなければね。それよりもヒマリ、本当に良かったの? お父様への手紙にはあなたの名前は一切出さなかったけれど、薬が完成したらせめて発見者としてぐらいの功績は貰うべきだと思うの」
「ダメダメダメ! 発見者なんていっちばん駄目な奴でしょ! もう私の存在は抹消しておいてくれていいから!」
真顔と早口でルチルに迫ると、ルチルは怯えたように頷いてすぐさまセターレの後ろに隠れる。そんなルチルを見てクリスが笑った。
「おいおい社畜、姫を脅かすなよ。って、そんな話をしに急いで帰ってきた訳じゃないんだよ!」
「そうですよ! さっきの話の続きをしましょう」
「さっきの話って? 何か難しいお話?」
「そうですね。姫ももしかすると関わりのある事かもしれません。食事をしながら話しましょう」
そう言って意外なことにセターレが淡々と目の前の大きな机の上に食べ物を並べだした。
「意外ね。あなたが一番食事には興味無さそうなのに」
ポツリと私が言うと、そんな私にルチルがそっと耳打ちしてきた。
「そうでもないのよ。セターレは頭を使うと凄くお腹が減るみたいなの。会議中もそれこそひっきりなしに何か食べているわ」
「なるほど。頭脳に栄養全部取られて体に栄養が回らないタイプなのね」
「さあ、準備が出来ました。いただきましょう」
席に着いてさっさと食事を始めたセターレに倣って皆もとりあえず席につくと、トワがルチルにフレッドの家で起こった事と先程の話を説明しだした。
「なるほどぉ……フレッドは敵だったのね。もしかして聖女が私を目の敵にするのもそれが理由だったり!?」
「案外そうかもしれないわね。もしくは単純に嫌いなキャラだったとか?」
「そ、それは地味に傷つくわね」




