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「そうでもないわよ。あんたがそういう絵をあちらで描かれていたって事は、一般的には人気キャラだったんじゃない?」
「いやいやお前、好きな奴らそんな風に扱うか? 普通」
「そういうの結構あったわよ? 好きなキャラっていうか、人気キャラね。聖女が持ち出してきたのがたまたまそういう絵だったってだけで、そういう絵を描かれるキャラは需要があるって事だから。賭けてもいいけど、あんた達なんて多分絵どころかそういう本とかも出回ってると思うわよ?」
ニヤニヤしながらトワとクリスを指差すと、二人は一瞬ポカンとしてすぐに青ざめた。
「や、止めろ! そういう不穏な事言うのは金輪際止めろよ!?」
「そ、そうですよ! 何という呪詛を唱えるのですか!」
「愉快な世界ですね。お話に出てくる人たち同士で疑似恋愛を楽しんでいるという事ですか?」
「そういう事。キャラは生身の人間と違って裏切らないからね。ただ分からないのは、この世界がどういう媒体の物語だったかって事よ」
「媒体?」
「うん。漫画なのか本なのかアニメなのかゲームなのか、それが分からないのがなぁ」
「媒体が変わると何か変わるのですか?」
「そうねぇ……本とかアニメは完結してるのであればストーリーは変わらないかもしれないけど、ゲームとかだったら大変なんじゃないの。私ゲームとかした事ないからよく分かんないけど、弟がやってたゲームはマルチエンドって言って沢山エンディングがあったりする奴もあったみたいだし、他にもひたすら撃ち合いする奴とか、恐竜みたいなの倒す奴とか、ゲームの中でも社畜してる奴とか~……まぁ間違いなくここはファンタジーの世界だわ。それだけは分かる!」
弟がやっていたゲームを思い出しながら私が言うと、クリスとトワも困ったような顔をしている。
「何言ってんのかチンプンカンプンだな。おいセターレ! お前、そのニコニコキャンディ2つ目だろ!?」
「ええ、かぼちゃの味が美味しいです」
「知るか! 一個寄越せよ!」
クリスはそう言ってセターレが抱えているお菓子が詰まったカゴからキャンディを一握り奪い取った。
「ところで質問してもいい?」
「なに?」
「だけどそのよく分からんエンディングとやらが沢山あるのは困るよな。もしそういうタイプのだったとしたら、聖女はどれを目指そうとしてんだ?」
「それが分かれば苦労しないでしょ。それこそ聖女の持ってるノート見るしかないんじゃないの」
呆れたように言った私にクリスも納得したように頷いて大きなため息を落とした。
「しっかし厄介な事に巻き込まれたな。久しぶりの人間界だと思ったら、討伐したはずの魔王が生きてるかもしれないなんて、一体どんな拷問だよ!」
「そういう意味では災難だったわね、あんたも。第五王子が下りてくるのは久しぶりなんでしょ?」
「おう。めちゃくちゃ久しぶりだよ。生活水準も大分違うし、世の中便利になったもんだな」
そう言ってニコニコするクリスを見て、セターレが食べかけのお菓子を齧るのを止めてポツリと言った。
「確かにあなたに関する文献はほとんど残されていませんね。他の方の文献はそれなりにあるのですが」
「あー……まぁ、な。それにはちょっとした理由があってだな」
「理由? 何か前にあんたは美しすぎるから滅多に人間界に降りてこないって聞いたけど?」
あれを言っていたのは誰だったか。そうだ、スカーレットだ。それをクリスに告げるとクリスはあからさまに苦い顔をする。
「んな訳ねーだろ。それはあんまりにも僕だけが下りて来ないから流れた、ただの噂だよ」
「じゃ、なんであんただけ下りて来ないのよ」
「いやー……言わないと駄目?」
そんな事を言って上目遣いで目をウルウルさせて小首を傾げたクリスを見て、私はフンと鼻であしらった。
「そんな可愛い後輩ちゃんみたいな顔しても無駄。そういう手には私、絶対に乗らないからね」
「た、大抵の奴には効く手段なのに!」
愕然とした顔でそんな事を言うクリスに私は目を閉じて言った。
「そういう顔してお願いしてくる奴に合わせてたら、こっちの仕事がバカみたいに増えるのよ。サービス残業なんてさせられて、理由聞きだしたら合コン行くからだと!? ふっざけんな! 人に仕事押し付けて自分はキャッキャ言いながら男と酒飲んで!? こちとらもう合コンなんて誘われもしないっていうのに!!!」
勢い余ってダン! と机に手を叩きつけると、皆がビクリと肩を揺らした。
「お、落ち着け、ヒマリ。な? ほら、最後のニコニコキャンディーやるから」
「ありがと」
「ほらヒマリ、珍しい地ビール。ほんのり甘くて飲みやすいよ」
「ありがと」
「すみません、その合コンというのは何なのです? あなたの居た世界ではそれに誘われないと何か不都合があるのですか?」




