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顔を輝かせて笑顔を浮かべたフレッドを見て私達は外に出ると、辺りはもうすっかり真っ暗だ。
「で、どうやって探せばいいの?」
「それを僕に聞かれてもだな。しょうがねぇな。チビ達の手借りるか」
そう言ってクリスはおもむろにしゃがんで土に手を当てた。すると、突然土が地震でも無いのに波打ちだす。暗がりの中で波打つ地面ははっきり言って恐怖だ。
「これは妖精の仕業でしょうか?」
「間違いなくそうでしょうね。ほら、あれ」
セターレが指差した先には何やら不自然にキラキラと光る場所があった。そこは家庭菜園なのか、野菜が大量に植わっている。
「おう、お前らこっちだぞ」
土から手を離したクリスがそう言って家庭菜園の方に向かって歩き出した。それにぞろぞろとついていくと、さっきまで光っていた場所に何やらぽっこりと土の山が出来ている。
「ここに居るってさ」
「え!? ここに? ていうか、この土にですか?」
「ああ。これ持って行けってチビ達は言ってんぞ」
「なるほど。放線菌は肥沃な土につくもんね。トワ、この土持って戻るわよ」
「う、うん。え、こんなあっさり?」
半信半疑なのかトワとセターレは完全に引きつっているが、私はもうクリスのこういう力はよく知っているので今更不思議にも思わない。
とりあえず全員で土を持ってフレッドのもとに戻ると、フレッドはギョッとしたような顔をして私達を見つめてくる。どうやら彼もこんなにも早く見つかるとは思ってもいなかったのだろう。
「ほらよ、これ」
「こ、こんなにも……俺にはただの土に見えるんだけど……」
「ただの土よ。でもここに放線菌は住んでる。ここから先は私には分からないけど、大丈夫そう?」
私がまだ芽を白黒させているフレッドに言うと、フレッドは土を触って匂いを嗅いで少し舐めて頷く。
「ああ、大丈夫。発見と培養は薬の基本だから。問題は量だよな……致死量とかになったら困るし、与え方もだな……」
「与え方は分かりますよ。ついでに言うと、あなたはこの薬を完成させると思います」
悩むフレッドにセターレが言った。そんなセターレに思わず私は首を傾げる。
「もしかしてまた何か視えたの?」
「ええ。視えたからトワとここへやってきたのです。私が視たのは彼が子どもに注射をする絵でした。フレッドさん、ベッドから動けない少年が一人居ますよね?」
「あ、ああ。居る。昨日から容態が急変したんだ。まだ重症とまではいかないが、多分、次逝くのはあいつだ……」
そう言って目に涙を浮かべたフレッドに、セターレは淡々と言った。
「その子ですね。注射を打ってしばらくすると外で遊んでいました。注射の針の目盛りまでは視えませんでしたが、量はこれぐらいでしたよ」
セターレは机の上に置いてあった注射器の目盛りを指さした。それを見てフレッドが真剣な顔をして頷く。
「あいつの体重でこんなもんか……ありがとう! 城専属の占星術師が言うならそうなんだろうな! 何の臨床実験も出来ないのは不安だけど、どのみちあいつらに待ってるのは死だ……よし、それじゃあ俺は今から薬に取り掛かるよ。あんた達、どれぐらいの間ここに居るんだ?」
「私達? あなた次第よ」
「俺次第?」
「うん。あなたが私がトワの子を妊娠してるって一筆書いてくれるまで、私達はどこにも行かないわ」
「行けないわ、の間違いだよな?」
「重ね重ね申し訳ありません……」
私とクリスの言葉にトワは申し訳無さそうな顔をして項垂れる。そんな私達とは裏腹に、フレッドは持っていたペンをポトリと落として私達を凝視してきた。
「はあ!? お前、妊婦なのかよ!? なんでこんなとこについてきたんだ! さっさとこっから出ろ!」
「あ、いやこれには事情がありまして——」
「事情もくそも無いだろ! あと何一緒になって土弄らせてんだ! もし何かあったらどうするんだ!」
「なぁ、お前何か誤解して——」
「誤解とかしようが無いですよ! 大体あなた達がついていながら何でこんなとこに!」
「ちょっとフレッド、落ち着いて。今からこっちの事情説明するから、あんたはとりあえずその薬に取り掛かりなさいよ」
「逆に何であんたはそんな落ち着いてんだよ!?」
全然落ち着かないフレッドに、とうとう私はキレてしまった。
「あーもう、うっさいうっさい! ちょっとはこっちの話聞け! トワは今、聖女に貞操を狙われてんのよ! そこで私が彼の偽装婚約者の振りをしてたけど、このバカってば聖女から逃げる為に私のお腹に自分の子どもがいるかもだなんて嘘ついたの! 私は正真正銘生粋の乙女なのに! ひっどい風評被害よ! その為にはどっかの医者に診断書を出して貰わなきゃいけない。そこで白羽の矢を立てたのがあんただったの!」




