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「お、おお。なんか、初めてお前が賢く見えたわ」
「失礼ね。私は常に考えているわよ。何をどうすればもっと楽に稼げるかってね! てことでフレッド、もしこの薬が成功したら、儲けの一割でいいから私に送金してね!」
「うん、やっぱりただのがめつい社畜だった!」
「一割どころか、半分は送金してやるよ。で、続きは?」
「ああ、ごめんなさい。そしてその細菌にも天敵は居る。それを体に摂取する事で、悪さをしてた細菌を殺してしまうっていう治療法なのよ。まぁ、ものすっごい殺菌能力を持った微生物の詰め合わせセットって事。漢方やハーブでどうにもならない場合とかに使うのよ」
私の言葉にフレッドはドサリとその場に座り込んだ。
「ちょっと待って、俺今すっごい混乱してんだけど……もしそれが本当なら、この世界の医療は急激に発展するんじゃないのか?」
「そりゃするわよ。抗生物質は色んな細菌性の病気に効くからね。例えばトワがよく行く戦場にもあると嬉しいわね。怪我が原因で感染症引き起こして死ぬ確率はグッと減るわよ。まぁ、元々は戦争で負傷した兵士をどうにかしたいって出来た薬だから。で、今回の結核に効くのが放線菌のストレプトマイセスちゃんって訳。ちなみに抗生物質には色んな種類があるんだけど、それぞれ効く病気が違うし、放線菌の中にも悪さする子もいる。まさに毒にも薬にもなるってやつよ。だから一種類作ったらそれで完成って訳じゃないってのをよく覚えておいてね」
一息で言い切った私の言葉をフレッドが真剣な顔をしてメモしている。そんなフレッドを感心した様子で眺めていると、そこに突然二人の男が飛び込んできた。
「ヒマリ! それは本当ですか!?」
「フレッドさんを覗き見していたら、どうやら凄い現場に立ち会ってしまったようです」
「うおっ! トワ? と、セターレじゃん。どしたの、お前ら。ルチルは?」
「やはり心配になって様子を見に来たんですよ。姫にはおやつとビールを渡して部屋に軟禁してきました。で、ヒマリ今の話は本当?」
「びっくりした。今の話って?」
「負傷した兵士がどうとか!」
「ああ、本当よ。元々はその為に開発された薬だもの。まぁ戦争なんてそもそも無い方がいいんだけどさ」
「それは……それは国で開発すべき薬だよね、どう考えても」
トワがゴクリと息を呑んで言うと、セターレもメガネを押し上げながら頷く。
「僕もそう思うけど、ちゃんと順序踏まないと開発者がこいつって事になるだろ? だからまずはフレッドが研究してたって体にして、成功してから持ち帰るべきじゃねぇの?」
「そっか……そうでしたね。ヒマリは有名になるの避けたいんだもんね。で、それはどうやって作るの?」
「さあ?」
「ん?」
「いやいや、最初に言ったでしょ? 薬の原料は教えられるよって。詳しい作り方は分かんないって。そういうのはお薬を研究してる人のお仕事でしょ? だからクリス連れてきたんじゃん」
「え? いや、僕も薬なんて作れないけど?」
「分かってるわよ。でも放線菌がピンポイントで見つかれば、後はそれを培養して増やすだけ。ね? あんたなら簡単でしょ?」
「探すのは確かに出来るだろうけど……そっから先は未知って事か?」
「うん」
私の顔を見て皆は顔を見合わせて何とも言えない顔をしているが、当然だろう! 流石の私も薬開発の研究などやった事がない。実験なんて、理科の授業が最後だ。
「えっと……でも原料が分かっただけでもかなりの進歩ですよね?」
思わずと言わんばかりにトワが言うとクリスとセターレは頷いたが、フレッドだけは未だに震えていて顔すら上げない。
「あー……なんかごめんね。私だってそんな簡単に薬なんて出来ないってのは分かってるんだけど、一応そういうの頭の隅にでも——」
「ありがとう!」
「へ?」
何だかガッカリしている身内とは違い、どうやらフレッドは感動して震えていたらしい。前のめりになって私の両手をがっしりと掴んできたフレッドの目には、うっすらと涙が浮かんでいる。
「これで……これで死ぬやつが減るかも! すぐに取りかかるよ! 高位妖精様、その放線菌を探してきてもらえますか!?」
そう言ってフレッドはクリスに言うなり席を立って、部屋の隅にあった不審なカーテンに手をかける。
「お、おお。いや僕が探してきてもそっから薬になんて……ってお前、研究者だったのかよ!?」
「おお、これはまた古めかしい器具の山ですね」
「す、凄いですね……ここでずっと研究してたんですか?」
フレッドがカーテンを開くと、そこには映画とかでしか見たことのないような実験器具がズラリと並んでいた。
「なんだ、ここで出来るじゃん。じゃ、ちょっと私達は探してくるから、あんたは準備でもしててよ」
「ああ! 任せた!」




