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「もちろんよ。私達の権力はこういう時に使うのよ。ビールの為だけにある訳じゃないもの。私も一筆添えるわ」
「ええ、ありがとうございます。フレッド、それまで子どもたちをよろしくお願いします」
「よろしくね、フレッド。出来るだけ早く人員を回せるようにするから」
突然頭を下げたトワとルチルを見て、フレッドは泣きそうな顔をして頷く。
それからトワとルチルとはそこで別れ、私達はフレッドと共に病院へ向かった。
「な、なぁ本当に大丈夫だよな? ヒマリ」
「大丈夫でしょ。フレッドだって無事じゃん」
「いや、そりゃそうだろうけどさ……はぁ、何でこんな危ない橋渡んないといけないんだよ」
クリスはブツブツとぼやきながら後をついてくる。そんなクリスに前を歩いていたフレッドが苦笑いしながら振り返った。
「いや、流石に病院には直接連れていきませんよ。病院にはお土産だけ置いて、俺の自宅に向かいます」
「あれ、そうなの?」
「なんだよ! それを早く言えよ!」
それを聞いた途端、クリスは羽根を輝かせてあからさまに喜んだ。どうやら高位妖精でも病気は怖いらしい。
それから三人は病院に到着して一旦フレッドと別れた。フレッドが院内に入った途端、中から子どもたちの嬉しそうなはしゃぎ声が聞こえてくる。
「あいつ……本当に良い医者なんだな」
「そうね。そういう人を死神ってレッテル貼るのはどうかと思うわね」
「全くだな。大体なんで聖女はそんな事言ったんだ? 子ども専用の病院なんて、メチャクチャ感謝されんだろ」
「それは分からないけど、もしかしたら前に言ってたあっちのお話のストーリーにフレッドも出てくるのかもね」
「ああ、推しの奴か」
「うん。おまけに聖女の言ってた事を素直に解釈するとしたら、フレッドは敵側で出てくるって事なのかも」
真面目な顔をして私が言うと、クリスも腕を組んで頷いた。
そこへ、ようやくフレッドが笑顔で出てくる。
「悪い、おまたせ!」
「全然。皆、喜んでた?」
「そりゃもう! この町に住む大体の奴らは豊穣祭を楽しみにしてる奴らばっかだから。ここに居る奴らだって、去年は家族と一緒に参加してたんだよ」
「それは辛いだろうな……おいヒマリ、さっさとその何とかって薬作ろうぜ」
「だね。ただ一つお願いがあるんだけど、フレッド」
「なに?」
「私が教えたって事は秘密にしておいてくれない?」
「は? いや、無理だろそんな事」
「無理じゃないわ。あなたが偶然見つけたって事にしといて欲しいのよ。お願い!」
そう言って私は目の前で両手をパンっと勢いよく合わせた。そんな私を見てフレッドは首を傾げ、クリスは意地悪な笑みを浮かべている。
「こいつ、根っからの社畜なんだよ。既に大分目立ってんだけど、これ以上目立ちたくないんだと。だから悪いんだけど、黙っておいてやってくんね?」
「目立ちたくないって、それは今更無理なんじゃ……?」
「まぁそうなんだけどな。本人はこれでも目立ってないつもりなんだよ。て訳でフレッド、新しい奇跡の薬はお前の手柄って事にしといてやってくれ」
「まぁ、高位妖精様がそこまで言うんなら……えっと、とりあえず家に案内します。って言っても、このすぐ裏なんだけど」
そう言ってフレッドは病院のすぐ後ろにあるこぢんまりとした建物を指さした。
フレッドの家の中は閑散としていて何だか寒々しい部屋だった。きっと、ここへはほとんど帰っていないのだろうな、と分かる程度には部屋の隅に埃が溜まっている。
「ごめん、うちに客なんて来ないから掃除とかほとんど出来てなくて」
「絵に描いたような医者の不養生ってやつね」
「いや、でもお茶の類は今病院から持ってきたから! ちゃんと飲めるから!」
「そんな気使わなくていいわよ。一分一秒でも急いだ方がいいでしょ。まず結論から言うと、その薬は土の中にあるわ」
そう言って私が床を指差すと、二人してキョトンとした顔をしている。
「いや……いやいや、お前何言ってんだ?」
「えっと、俺がそれを信じると思う?」
「信じる信じないは別にどっちでもいいけど、私の言う抗生物質の正体はカビとか微生物なの。結核はウィルスじゃなくて細菌性の病気よ。相手が生物であれば、必ずその天敵になる生物も世の中には存在する。それが土の中にいる菌なの。名前は放線菌。はい、クリスそいつら探して」
「はあ!? だれだよ、それ!」
「待って、結核は細菌性とか、まず言ってる意味が分からない!」
「これは本からの受け売りだけど耳の穴かっぽじってよく聞いてね。感染症の原因は2つ。一つは細菌性の病気。もう一つはウィルス性の病気よ。ウィルス性の病気には特効薬みたいな物がほぼ無いと言っていいわ。でも細菌性は違う。あれはその名の通り細菌の仕業なの。どこかで細菌に感染して発症するの。ここまではいい?」




