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ルチルが何か言おうとしたその時、誰かが私にぶつかってきた。その反動で思わず私がよろけると、すぐさまトワとクリスがやってきてそんな私を支えてくれる。
「大丈夫ですか!? ヒマリ」
「おい、大丈夫かよ? ったく、どこのどいつだよ! ちゃんと前見て歩けよ!」
「ちょ、クリス! 本当に大丈夫だから」
こういうお祭りの雰囲気をぶち壊したくない私が慌ててクリスを止めると、私にぶつかってきた相手がハッとしてこちらに頭を下げてきた。
「ごめん、お嬢ちゃん! 列から押し出されてその勢いでぶつかっちま——あれ? あんた達……」
「え? ……あー! やっと見つけた! 湿布男フレッド!」
「本当ですね。まさかこんな所でお会いするとは。不届き者フレッド」
「いや、お前らこれから頼み事しようって相手になんつう呼び方……」
「この人が噂のフランク?」
「こっちはまだ名前覚えてねぇ! あーもう! フレッド、久しぶりだな」
失礼極まりない私達を押しのけてクリスがフレッドの前に躍り出ると、フレッドは意味が分からないとでも言いたげに目を白黒させながらこちらを見ている。
「えっとー……何でこんな所に?」
「あなたを探してたの! あ、でも先にお買い物ね! ほら、並んで並んで! どこから押し出されたの? ここ?」
列の人たちに問いかけると、一人の女性が手を上げた。どうやらフレッドはそこから押し出されたらしい。
私はそれを聞いてフレッドが居た場所に押し込んでやった。
「え?……ちょ、」
フレッドはまだ何が何だか分からないとでも言いたげに首を傾げているが、そんなフレッドに私は笑顔で手を振って自分たちも列に並ぶ。
しばらくして——。
「で、あんた達なんでこんなとこにいんの? あとさ、まさかその人、本物のルチル姫?」
互いの買い物が終わって合流すると、フレッドが困惑した顔で尋ねてきた。
「あら、私の事知っているの? 光栄だわ」
「そりゃ、自国のお姫様知らない人居ませんよね」
「その通りね。そう、本物のルチル姫よ。でも今回は姫はただの付き添いなの。ちょっとあなたに用事があって探してたのよ」
「俺に?」
怪訝な顔をしたフレッドの手には大量の買い物袋が下げられている。それを見てふと私は言った。
「それ、すごい量ね」
「ん? ああ、患者のだよ。あいつら病気のせいでこういう所来れないからさ」
「なるほど。って、それじゃあこんな所で油打ってる場合じゃないじゃないの!」
患者と言う事はやはりこの人は医者なのだろう。そしてどうやらその患者達の為に買い物をしていたようだ。行きがけに湿布をくれた医者は、どうやら本当に良い人だったらしい。
「あんた達、手分けして荷物持ってやって。ほら、フレッド行くわよ」
「お、おお」
そう言って、私達は戸惑うフレッドの先導で彼が居る病院へと向かった。
病院は屋台広場からそう離れていない場所にあった。まさに灯台下暗しである。
「ねぇ、どうしてこんな目立つ所にあるのに誰も知らなかったのよ」
そこそこ大きな病院を見上げて私が言うと、フレッドが苦笑いして言う。
「そりゃ、俺が子どもたちの死神って言われてるからだろ」
と。いや、いやいやちょっと待って! それどういう事!?
一切口には出さなかったが、どうやら顔からダダ漏れだったようで、フレッドは苦笑いをして続きを話してくれた。
「うちは子どもの感染症専用の病院なんだよ。別名死神病棟って呼ばれてる」
「はあ!? なんで」
「感染症!? そ、それは……大丈夫なの?」
「……それは確かに死神と呼ばれますね……」
「感染症ってあれか? 不治の病って奴?」
私の反応とは裏腹に、何故かフレッドを始めルチルもトワも、クリスでさえも暗い顔をしている。そんな三人に私はさらに驚いてしまった。
「ね、ねぇ何で皆そんな反応なの? フレッド、あんたんとこで流行ってる病気って、そんなヤバい感染症なの?」
「ヤバいよ。結核だから」
「結核ですって!?」
「結核……」
「お、おい大丈夫なのかよ!? ていうか、お前は大丈夫なのかよ!?」
「結核? そんなの抗生物質で一発じゃん」
ポツリと私が言うと、全員が驚いたような顔をして私を見つめてきた。
「お、おいお前、今何て言った?」




