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 そこまで言った私の前に、突然セターレが何かをじゃらりと置いた。音からしてこれは明らかにコインの音である!


「忘れる所でした。これを僕達の一月の食費に充ててください。残った分はあなたの取り分です。来月も王から送金されると思うので、それをお渡ししますね」


 そう言って微笑んだセターレを見て私は目を輝かせ、そんな私をトワとクリスが白い目で見つめてくる。


「セターレ分かってんな、こいつの扱い方」

「全くです。だからこの方は怖いのですよ」

「もう! ちゃんと費用が出るのなら文句はないのよ!」


 ホホホと笑う私にルチルが顔を輝かせる。


 人間が二人増えたら、それだけ食費は上がる。私が一番心配していたのはそこだ。慈善事業で毎食作ってやるほどお人好しではない。


 ただありがたい事にこの世界は光熱費はいらない。電気や水道などのインフラはしっかりしている割に、そのエネルギー源は星そのものが放つ磁場を利用してうんたらかんたらと前にクリスが言っていたが、よく分からなかったのでぬるりとスルーした。


「これでずっとヒマリのご飯が食べられるのね!? ビールも飲み放題!?」

「ちょっとちょっとルチルさんってば! 全部は流石にビールには充てないわよ? で・もぉ~これだけあったらそこそこ良いビールを結構飲めるんじゃない?」

「本当!? 明日にでも買い出しに行く!? ていうか、隣町にも地ビールあるんじゃない!?」

「ほんとね! そうと決まればさっさと食べて面倒事も急いで終わらてショッピングしましょ!」


 それだけ言って食事を再会しだした私とルチルを見て、何とも言えない顔をして男三人は無言で食事をしていた。


 後片付けはトワとクリスの仕事だ。そこへ今日からセターレも加わる。私とルチルは食後のお茶を楽しんでいたのだが、そこにこんな会話が聞こえてきた。


「なぁ、地獄じゃね?」

「流石にそこまでは言いませんけど……最強の二人が手をがっちり組んでしまっているので、俺たちはこれまで以上に振り回される事確定ですね」

「姫だけでも手を焼くのですよ。そこへ来てヒマリさんも姫属性だとは……」

「ああ、ヒマリの事は見えないって言ってましたもんね。言っておきますが、ヒマリは姫以上ですからね? 俺たち二人がかりで持て余すんですから」

「そうそう。僕たちにしばらく休息はないな、こりゃ。明日から死ぬほど働かされるぞ」


 お皿を磨きながらそんな事を言うクリスにトワとセターレが無言で頷いていが、一体あの三人は私達の事を何だと思っているのだろうか。


 朝食を終えて出掛ける準備が整うと、皆は既に家を出ていた。


「ごめんごめん! お待たせ~」


 ルチルと違って乗馬服など無い私は、とりあえず部屋着のスエットもどきをワンピースの下に穿いて出ていくと、その格好を見て全員がギョッとしたような顔をする。


「ざ、斬新な服の着こなし……ですね」

「トワ顔引きつってんぞ。てかヒマリさ、お前もうちょっと何とかならなかったか? その格好……」

「ヒマリ……それは流石の私でもアウトだと思うわ」

「服装など何でも良いと思う方ですが、流石に僕の予想の範疇を超えてきましたね、ヒマリさん」


 皆が口々にそんな事を言うが、この格好にはちゃんと理由がある。


「あんた達好き勝手言ってるけどね、スカートで馬に乗るのがどれほどハードルが高いか分かってる? それにこれから妊婦さんの振りをしなきゃいけないのに乗馬をして隣町に向かうのよ? その時点でどう考えても妊婦さんじゃないでしょ! だから私はあえてこれを着てきたの! まずこのワンピース! お腹周りを締め付けないからマタニティドレスと言っても過言ではない! でも乗馬するならズボンは必至! だから仕方なくこれを着用したの!」

「えっと……それで、ヒマリの作戦は?」

「隣町に入る前にどこかで馬から下りて、ズボンを脱いで歩くわ。だから出来るだけ目立たない道を走ってちょうだい」

「そこまでしないと駄目かなぁ?」


 ふわふわと飛びながら呑気にそんな事を言うクリスを私は睨みつけた。


「クリス。前にも言ったけど、どこで誰が目を光らせているか分からないの。いい? 皆、敵なの! 一瞬でも弱みを見せたら、その瞬間喉元をガブ! よ」

「社畜は常に猛獣と一緒に仕事してたのか?」

「まぁね。気を抜いたら一瞬でクビが飛ぶ。そんな世界よ」

「やべぇ世界だな。お前なんてどう見ても猛獣側なのにそれがしがない社畜だもんな。お前の世界の猛獣ってそれはもう、怪物だろ?」

「言い得て妙ね。その通りよ、クリス。あんたみたいにフワフワ生きてたら、屍どころか骨も残らないわよ」

「こえぇ」


 とは言え、クリスぐらいの顔があれば間違いなく人生イージーモードだったに違いないが、それは腹が立つので言わない。

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