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買い物から戻ってきた二人はそう言って荷物を置いてこちらに近寄ってくる。そんな二人にクリスとトワが真顔で言った。
「枕だよ」
と。
翌朝、朝食を作っていると家の周りが突然騒がしくなった。
私は何かあったのかと急いでエプロンを外して野次馬根性丸出しで表に出ると、そこにはノーマンとヒューが馬を引いて立っていた。
「ああ、あんた達だったんだ。早かったじゃない。おはよ。あれ? レイモンドさんは?」
「おはようございます。レイモンドは夜勤だったので寮で寝ていますよ」
「よ! おはよーさん。トワからご依頼の馬連れてきたぞ」
「ありがとね、二人共。このまますぐ仕事行くの?」
「ああ。聖女さまが何やらかすか分かんないからさー」
そう言ってノーマンが皮肉げに笑うと、そんなノーマンの脇腹をすかさずヒューが小突いた。
「ちょっと待ってて。昨日作りすぎちゃったからアレあげるわ」
そう言って私が家に戻ると、トワが既に起きてきていた。
「おはよう、トワ」
「おはようございます、ヒマリ。どうかしたの?」
「うん。ノーマンさんとヒューさんが来てんの。馬連れてきてくれたってさ。あ、あの二人にこれ渡してあげて」
そう言ってトワに昨日の黒糖饅頭を渡すと、トワは神妙な顔をしてそれを持って出て行った。
しばらくしてトワは戻ってきたが、その顔は何とも言えない顔をしている。
「どうかしたの?」
「いえ……お前の嫁ちゃん枕食うの? ヤッバ! って笑われてしまいました」
「はは、まぁ、あんた達みたいに食べてビックリするんじゃない?」
私の言葉にトワは曖昧に頷いた。
「それでもやっぱりヒマリを笑われるのは良い気がしません。枕……美味しいのに」
いや、枕ではない。枕の中に詰まっていた小豆が美味いのだ。やはり最初に枕として紹介したのは失敗だったのかもしれない。
そんなトワに私は苦笑いして言った。
「前にも言ったでしょ? 私はあんた達が分かってくれてたらそれで良いよって」
「ヒマリ……」
トワは少しだけ頬を染めて笑うと、朝食の準備を嫌がりもせずに手伝ってくれる。トワは不器用だけれど本当にスパダリだ。稼ぎは良いし顔は良いしこうして手伝ってくれるし。だと言うのに何故今まで彼女の一人も出来なかったのだろうか……本当に謎である。
そこへ遅れてクリスもやってきた。あちこち跳ねた髪でそのまま出てくる姿はとてもではないが妖精界の王子様だとは思えない。
「今日の朝ごはん何ー?」
「今日はフレンチトーストよ。早く顔洗ってきなさいよ」
「んー」
私の言葉に素直にクリスはふわふわと洗面所へ向かう。戻ってくるとやっぱりクリスも何も言わずとも朝食づくりを手伝ってくれた。
クリスだって王子様で美少年で口は悪いが相当優しいというのに、今のところ誰かに現を抜かす事もない。勿体無い事である。
私だったらこの二人の顔と地位があればきっとしたい放題していた事だろう。
「あんた達は本当に勿体無いわよねぇ……」
思わずポツリと言うと、二人して振り返って首を傾げる。
「何がです?」
「何がだよ?」
「いやさ、その顔と地位があれば女の子なんて入れ食いだよな~って」
「入れ食いってお前、そんな漁師じゃねぇんだから」
「そうですよ。それに沢山の人よりも俺はたった一人を見つけたいんですよ」
「そんな事言ってるうちにあっという間に年取るんだからね! はぁ……入れ食い人生……一度でいいから味わってみたかった……」
ため息混じりに言う私に、クリスとトワは何やらヒソヒソと話し出す。
「いや、今が結構それなんじゃ……?」
「ですよね……どうしよう……本気で何も気付いてませんよ、この人……」
「だな……でもさ、顔可愛くても枕食う女ってどうだよ?」
「美味しかったですよ、枕」
「そこなんだよ。そういうの許せるかって言われたら……許せるんだよなぁ……クソッ!」
「本当に……あの新聞の通りどうしようもない人だったら俺たちもこんな苦労してないんですよ……」
「ちょっとあんた達、さっきから何ブツブツ言ってんのよ? ほら、早く朝食食べて準備するわよ!」
いつまでもブツクサ言ってる二人に手を打って合図すると、ようやく二人はキビキビと動き出す。
それからすぐにルチルとセターレがやってきて、結局朝食も全員で仲良く一緒にとる羽目になった。
「ねぇねぇ、あんた達もしかして毎食ここに食べに来るの?」
思わず私が問いかけると、ルチルとセターレは互いの顔を見合わせてコクリと頷く。
「そのつもりだったけど、いけなかったかしら?」
「僕は実験は好きですが料理はからっきしなので、そうしてもらえると大変助かります」
「いやいや、あのね、あんた達はそりゃ毎食作る手間も知らないだろうからそんな簡単に言ってのけるけど——」




