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「まぁまぁ、冗談は置いておいて。とにかく行ってみよっか。手当たり次第聞けば誰か一人ぐらいは知ってるでしょ。偽物の医者じゃなきゃさ」


 いつも通りの大雑把さを発揮した私に、その場に居た全員が呆れたように頷いた。どのみちそうするしか無いのだ。いつまでも解決しない事を話し合っていても仕方ない。


「さてと! とりあえず今日はこれで解散ね! 私そろそろ夕飯の支度始めなきゃ」


 そう言って冷蔵庫に貼ってある買い物リストを取りに行くと、ルチルとセターレは動く気配がない。


「ねぇ、あなたのお家はお向かいに王様が手配してくれたんでしょ?」

「ええ! でも晩ごはんの手配はしてくれてないわ! ね? セターレ」

「そうですね」

「え? だから?」

「だからって?」

「……」


 本気で分からないとでも言いたげなルチルに私はおでこを抑えてルチルに買い物リストを押し付けて怒鳴った。


「分かった。作ってあげる。でも! ここでは働かざる者食うべからずだから! もちろんあなたもよ、セターレさん! ほら、さっさと買い物行く!」


 そう言って玄関を指さした私を見て、ルチルは青ざめて席を立った。その後をセターレが涼しい顔をしてついていく。


 二人が出て行ったのを見てクリスがふとトワを見上げた。


「あれ? お前行かなくていいのかよ?」

「ええ。だって、今しがた就業時間は終わりましたからね。はぁ……ヒマリ、何か甘いものありませんか?」

「お疲れ様。はい、これ。黒糖まんじゅう」

「ずるい! 僕も欲しい!」


 そう言って身を乗り出したクリスはトワに渡した黒糖饅頭を一つ奪い取るが、トワはまだ首を傾げている。


「なんです? これ」

「おまんじゅうよ。聞いてくれる!? ここってばあんこも黒糖もあるの! もう嬉しくて即買いしちゃったよね!」


 そう言って私が取り出したのは枕だ。それを見て二人は揃ってギョッとしている。


「え……待って、何で枕?」

「なぁ、嫌な予感しかしないんだけど……まさかとは思うけどお前これ……」

「うん! 枕の中身だよ!」


 昨日何気に寝具屋に行ったら見つけた安価な小豆が入った枕。もちろん私はそれを爆買いしてきてあんこを作ったのだが、どうやらこの世界ではまだあんこは早かったらしい。


 二人はまんじゅうの正体を聞いて愕然としている。


「枕の中身!? 食べられるの!?」

「猫の餌の次は枕だと!? お前、本気でどっかおかしいんじゃないか!? ていうか、普通高位妖精に枕なんか食わす!?」


 相変わらず食べても無いのにギャーギャー騒ぐ二人を横目に私は熱いお茶を入れて黒糖まんじゅうを頬張った。はぁ……枕、めっちゃ美味い……。


 そんな私の行動を二人はゴクリと息を飲んでしばらく見ていたが、とうとう我慢出来なくなったのか、恐る恐る一口かじって声を詰まらせた。


「こ、これが……枕……」

「枕うめぇ……マジかよ……」


 愕然とする二人を他所に私は2つ目の枕に……いや、饅頭に手を伸ばす。


「あんた達ね、そういうのを食わず嫌いって言うのよ」

「マジか……それじゃあもしかして布団とかも食えたり?」

「もしかしたらヒマリなら美味しく調理出来るのかも……」


 ヒソヒソと言い合う二人を見て、私は真顔で言った。


「布団? そんなもん食べられる訳ないでしょ。馬鹿なの?」

「お、お前にだけは言われたくねぇ!」

「枕食べる人に言われるなんて……」

「あのねぇ、中身考えてみなさいよ。今回私が買った枕の中身は小豆よ。豆よ。豆は食べられるでしょ?」

「ま、まぁ……そうですね」

「それじゃあ布団の中身は? 鳥の羽根でしょ? 食べられるの?」

「お前なら、あるいは」

「ヒマリなら、もしかしたら」

「いやいや、流石の私も鳥はお肉の方がいいから。羽根なんてほぼ味ないから。つまり、中身が食べられる物であれば解体して食べられるということよ。分かる?」


 意気込んで言った私を見てトワとクリスが顔を見合わせて言った。


「さすが修羅の国から来た社畜は面構えと心構えが違うな」

「騎士団の中にも流石に枕を食べようとした者は居ませんでした……見習わなくては」

「ねぇ、何か私の事誤解してない? 二人共」 


 これはかなりおかしな誤解をされているに違いない。やはり再教育を——そんな事を考えていると、ようやくルチルとセターレが買い物から戻ってきた。


「ただいま~! ふぅ~重かった! ねぇねぇ聞いて! 何かね、色々おまけしてもらっちゃ……ねぇ、三人で何食べてるの?」

「ただいま戻りました。はぁ……もう腕がもげそうです。おや? おやつの時間ですか? 僕達に買い物をさせておいて? それにしてもそれは何です? 見たことの無い食べ物ですね」

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