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「あらら~また火花散らしてる。それで、ヒマリは聖女の力はそのスマホに関する事だと思うの?」
「分かんないけどさ、やっぱどう考えても変だよなって。大嫌いな奴のイラストをさ、わざわざスマホに置いとくかな? 私なら嫌いな奴の顔なんて絶対に見たくないんだけど。ていうか、存在を消去するよね、潔く」
わざわざ自分からストレスを溜め込む必要などない。嫌いだと思った奴の事など一瞬で摘んで記憶からポイである。
「一理あるね。俺もそのタイプだよ」
「僕は一生覚えてるよ。しつこくしつこく!」
「あんたはぽいよね。ちっちゃい仕返しいっぱいやってそう。でもさ、それはあくまで対人の話でしょ? 例えばお話の中の登場人物にそんな事考える事ある?」
「無いな」
「そういう事よ。お話は現実とは違うんだから恨んでも仕方ないじゃん。ここに来るって分かってた訳でも無いんだからわざわざそんな事しないわよ。てことは、単純に聖女にはもう一つチートな力があった。それは、こちらでもスマホを使えるような能力だった。そう考えれば一番スッキリすると思うんだけど?」
「確かにヒマリの言う通りかもしれない。もしもそのスマホが叡智の塊だと仮定して、それを聖女が扱う事が出来るとしたら……」
「ね、ねぇ、それって大変な事なんじゃないの……?」
トワのセリフに青ざめたルチルを見て、それまで黙っていたセターレが小さく咳払いをした。
「姫、私には一つ理解が出来ない点があったのでお答えしていただけますか?」
「びっくりした! 急に話しかけないでよ。で、なぁに?」
「彼女は今、お話と現実は違うと仰いましたが、それはどういう意味でしょう?」
「ああ、そうよね。あのねセターレ、驚かないで聞いて頂戴ね。ヒマリが言うには、もしかしたら私達の存在はヒマリの世界では何かのお話として語り継がれていた可能性があるのではないか、というの」
「ほう?」
「理由はね、聖女が解決した事件を覚えている?」
「ええ、覚えていますよ。城中が流石聖女だと盛り上がりましたから」
「その事件の真相をね、もしかしたら聖女はあらかじめ知っていたのではないかって言うの」
「何故です?」
「それは——」
そう言ってルチルはチラリとトワを見上げている。トワもトワで困ったように視線を伏せ考え込んだ。
そもそもあの話は何の確証もないただの私の推測だ。だからこそセターレに告げるべきかどうか迷っているのだろうが、ここはあえて言おう。そう、私が。
「騎士団の寮に移った聖女の部屋から怪しいノートが出てきたんだって。それには市井で起きた事件が事細かく書き込まれていたそうよ。しかも解決前にね」
「それだけですか?」
「ええ、それだけ。でも変だと思わない? 例えば聖女があなたみたいに未来を予知する事が出来るのなら、市井で起きた全ての事件を解決出来たはず。でも彼女はそれはしなかった。彼女が解決出来たのは、自分に逆恨みをした人物が起こした事件だけなの。どうしてかしらね?」
「……」
「でもこう考えれば説明はつく。聖女は自分にまつわる事件だけはあらかじめ知っていた。だからこそ一部の事件だけを解決する事が出来たんだろう、って。何よりも聖女は初めて出会ったはずのトワとクリスの事を何故かとても良く知っていたらしいの。それは変よね? クリスがトワに手紙を持っていくタイミングや、トワがブロッコリーが嫌いな事を、どうして聖女が知っているの? それとも高度な占いではそういうのも分かるの?」
一気に話した私を見てトワとルチルが青ざめた。そんな二人を無視して今度はクリスがズイっと前に躍り出る。
「こいつの言う通りだ。あいつ、僕たちのプライベートな事を知りすぎてんだよ! しかも何か勝手に変な勘違いまでしてる! それはもう、こいつが言った通り僕たちを題材にした何らかの物がこいつらの世界にあったって考えるのが一番しっくりくるんだよ」
「なるほど……確かにお嬢さんと第5王子の言う通りですね。言われてみれば彼女は私の事もよく知っていました。あの時は誰かが言ったのだろうと思っていたのですが、そうではないかもしれないという事ですね?」
「そゆこと。マジでどんな物になってたのか知らねーけど、僕とトワを無理やりくっつけようとするのだけは本気で勘弁してほしいんだよ!」
説明しているうちに何かを思い出したかのようにクリスが羽根を震わせる。
「それは俺のセリフですよ。いくら俺が恋愛に疎いとは言え、まさかそっち方面で噂される事になるとは思いもしませんでした」
「そりゃあなたがさっさと彼女作らないからじゃないの。美貌の騎士がいつまでも一人でフラフラしてたら、そういう噂も立つわよ。聖女じゃなくても案外そういう風に思ってた人居るんじゃないの?」
「や、止めてください! 本当に時間がなかっただけなのに!」




