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「つまりね、私は異世界から来たって事で既に変にハードルが上がってる訳よ。うっかりジョーイに足突っ込みそうになってるの。そこへ来て拾ってくれたのがルチルに居直り強盗してきたクリス、そして安易に引き受けたトワの婚約者、このコネはすっごく、それはもうすっごく魅力的だけど、私自身は何の取り柄も無いチューキュー(底辺より)だから、巻き込まれて派手な人生にならないように常に気をつけなければいけないの。それなのに異世界からの知識をここで大々的に披露なんてしてみなさいよ! エラい事になるわよ!」
「お、おう」
「そ、そうですね」
思わず力んで握りこぶしを握った私を見て二人はたじろいだ。そして二人してコソコソと話し合う。
「いや、でもな、コイツはもう十分ジョーイだと思うんだ、僕は。中身もなかなかのもんだろ」
「俺もそう思います。チューキューとか下っ端ではないですよね?」
「おお。むしろボスのキョーシじゃね?」
「……確かに」
「ちょと! 何コソコソ話してんの!? あんた達が聞いてきたんでしょうが!」
「ちゃんと聞いてるって!」
「聞いてます! しっかり聞いてますから!」
グルリと振り返った私を見て二人は慌てて背筋を伸ばした。そんな二人を見て私が鼻を鳴らすと、二人共何故か安堵のため息を落としている。
「ま、まぁあれだ。お前はこれからも目立たないように気をつけて生きろよ。もし目立ちそうになったら僕が庇ってやるよ」
「そうですね。俺もちゃんと盾になりますから、ヒマリはその社畜人生を全うしてください」
「……ありがとね、二人共」
厚意は有り難いが、この二人が側にいる時点でその夢はほぼ潰えたと言ってもいいのではないか。何せ本物の勝ち組二人組なのだから。
私に出来ることはせいぜい調子に乗らないように気をつける事ぐらいである。あと、別に私は一生を社畜として暮らしたい訳ではない。
何だかいつ見てもキラキラしている二人を見てため息をついた私は、トボトボと家を目指して歩き出した。
「コロッケ……美味すぎる……」
クリスは揚げたてのコロッケを頬張りながら目尻を拭う。その向かい側でトワが目を見開いたまま黙々とカレーうどんを食べていた。
「あんた達は何食べさせても感動してくれるから作り甲斐があっていいわね」
一口一口噛みしめるように食べる二人を見て私が褒めても、クリスもトワもそんな私を無視してひたすら無言だ。しばらくしてようやくトワが口を開いた。
「すみません、カレーうどん舐めてました。うどんというものにカレーをかけるだけだと思っていたのに、このカレーはうどん専用なの?」
「まぁね。私はうどん用にはいつものカレーとは違うカレーを作るわね。でも普段のカレーをそのままうどんにかける人も居ると思うよ。料理に正否はないの。自分が美味しいと思ったものが正解よ」
「なるほど。それにこのコロッケ! あのつぶしたジャガイモがこんな変身を遂げるなんて思ってもいませんでした……サクサクでふわふわ……不思議な食感だなぁ」
「おいトワ! お前何個食った!? 一人3つだぞ!」
「まだ二つ目ですよ。あなたこそ既に3つ目では?」
「あんた達、お願いだからコロッケの数で喧嘩するの止めてよ。またいつでも作れるんだから」
まるで子供のような喧嘩を始めようとしたクリスとトワを叱ると、二人は睨み合ってまた食事を再開しだした。何だかこんな生活にもすっかり慣れてしまった。順応性が高すぎるのも問題かもしれない。
いつも通りの食卓に和んでいたその時だ。突然玄関が激しく叩かれた。
「チッ! 飯時だってのに誰だよ」
「本当ね。こういう時間を見計らって来る奴なんてロクなもんじゃないわよ。ちょっと見てくるわ」
「ヒマリ、俺が行こうか?」
「大丈夫。いざって時は大声出すわ」
笑ってリビングを出た私は玄関のフライパンを握りしめてそっと覗き穴から外を見て急いで鍵を開けた。
「ルチル!? どうしたの、あんた! ずぶ濡れじゃない! 早く上がんなさい!」
「うっ……ひっく……ヒマリぃぃぃぃ!」
突然やってきたのは他の誰でもない、ルチルだ。何故かルチルは全身びしょ濡れで私に飛びついてきて大号泣を始める。
私が驚いたのもつかの間、ハッとしてルチルが突然顔を上げた。
「何かいい匂いがする……」
「……あんた、本当にお姫様なの? 本当は犬なんじゃないの?」
「失礼ね! 朝から何も食べてないのよ! 仕方ないでしょ!」
そう言ってルチルは私から離れて勝手にスリッパを取り出して家に上がり込んでくる。勝手知ったる他人の家だ。
「いい匂い! なにこれ! え、この茶色いの食べ物?」
「おう、ルチル。これはコロッケって言うんだ。めっちゃ美味いぞ」
「そうなんですか!? わ、私にも一つ……」




