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「あー……なんか、兄弟仲が悪いのよね? って。推しじゃなかったからあんまり覚えてないの、ごめんなさいとか言われたな」

「推し? 推しって言ってたの?」

「言ってたね~。推しの意味分かんの?」

「もしもね、もしも聖女様が私と同じ所から来た子だったら分かる。分かるけど、それは……う~ん……」

「ヒマリ? 何か気づいたなら言ってください」

「あ、うん。推しって言うのはアイドルとか俳優とか、あとは特定のキャラクターに向けて使われる言葉で、すっごく好き、もしくはタイプって意味……だと思う」

「すっごく好き?」

「うん」

「それは……俺たちの事がヒマリの世界で何かになっていたと、そういう事?」

「……それしか考えられないよね?」

「……」


 私たちは黙り込んだ。そりゃそうだ。突然自分たちは創作物のキャラクターだと告げられて良い気はしない。


「なるほど。百歩譲ってお嬢ちゃんの意見が正しかったとして、だからこそ聖女は未来を知っていた?」

「かなぁって思った」

「ま、待ってください! それはあまりにも荒唐無稽です! それではまるで私達が……」


 そこまで言ってヒューが黙り込んだ。その先を継いだのはクリスだ。


「作り物みたいだな。おいヒマリ、そこんとこどうなんだよ?」

「私に聞くの? いやでもね、だとしても変なんだよね」

「どこが?」

「だってさ、じゃあ私の存在って何なの? 私は元社畜であっちからこっちに来た人間で完全にイレギュラーなはずなのよ。それでもあの小憎たらしい号外! あれってあんた達が思わず納得するほど私だったわよね? しかも名付け役としてもトワの婚約者としても」

「そうだな……変だな。何でお前の事も知ってたんだ?」

「思うに、そういう設定の名前も何も無いモブ的な人が居たのかなって思うの。てことは、この世界は別にお話の世界じゃない。聖女が知ってるのはあくまでそういうキャラクターの事だけで、あなた達では無いって事かなって」

「名前も出身も嫌いな食べ物も一緒の人が、ですか?」

「うん。だってクリスとトワは別に出来てないし、クリスはここから出ようとなんてしてない。トワがクリスを助けた訳でもないし、私もクリスやトワを虐げた事なんてないもん」

「いや、それはお前……嘘だろ」

「……そこは俺もノーコメントで」

「何でよ! まぁいいわ。聖女はクリスを私から引き離そうとしたみたいだけど、実際にはそうはいかなかった。トワは実家に帰る予定だったみたいだけど、それも違った。ね? 聖女の知ってたお話通りには進んでないわよ、きっと」


 もしも何らかの力でこの世界が具現化したものだったのだとしたら、そういうのもズレないはずだ。と、思う。多分。


 けれど今は聖女の思惑通りには進んではいない。それはこの世界があちらの創作物とは似て非なるものだからだと言うことではないのだろうか。


「ややこしい話だな。つまり何か。俺たちの事がお嬢ちゃんの世界で何かの創作物として扱われてるって事だな?」

「そう。でも完全には一致してない。聖女の振る舞いで実際に事件は起こった。で、その事件の内容は聖女も知ってたお話と一緒だったから解決出来たって事なんじゃない? でないと聖女が解決してない他の事件の説明がつかないもん」

「……なるほど」

「もっと言えば、聖女は自分で蒔いた種を回収したに過ぎないって事よ。だって他の事は今のところ全滅じゃん」

「それは確かにヒマリの言う通りだな。ここが例え創作物の世界だったとしても、聖女は自分の役割外の事は思い通りには出来ないって事か」

「そういう事。でも考えようによっちゃ便利ね、聖女」


 ニヤリと笑って私が言うと、途端にクリスとトワが半眼になる。


「ま~た何か余計な事思いついたな?」

「悪い顔してますね」

「失礼ね! だって考えてもみなさいよ。クリス、あんたが今回ここに来た理由、まだ分かんないんだよね?」

「おう」

「でもさ、聖女ならもしかしたら知ってるんじゃないの?」

「おお! なるほど」

「ていうか、そのノートにネタバレ書いてんでしょ? 逆手に取って先に解決しちゃえば良くない?」

「確かに! ヒマリは本当にずる賢いですね!」

「トワも一言余計なのよ!」


 私の言葉に全員が納得したように頷いた。


「お嬢さんの言う通りだな。先を知っているということは、未然に防げるということだ。むしろ創作物万歳じゃないか」

「その発想はありませんでした……」

「まぁそりゃ普通は聖女を利用してやろうだなんて考えないもんな~。いんじゃない? ただどうやってそれを聞き出すんだよ?」

「そりゃあなた達が頑張ってよ。おや? もしかしてこれはトワさんの出番では?」


 ニヤニヤしてトワを見ると、トワは青ざめて首を振る。


「お、俺に何させるつもり!? 嫌ですよ! 絶対に嫌ですから!」

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