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「と、まぁこういう人なんですよ。なのでここでヒマリから見聞きした事は絶対に他言無用でお願いします。多分彼女はあなた達のお茶に対する反応を見て、明日にでもこれを商品化するに違いないんですから」

「目に浮かぶよな、茶葉が出来る木を庭に埋め倒すヒマリの姿がさ」

「ええ。そしてそれを運ぶのも植えるのも俺たちですよ」

「ほほほ。いいじゃないの。やる事一杯あって!」 


 既に使う気満々の私にトワとクリスは互いの顔を見合わせてガックリと項垂れる。


「こんな人ですが、それでもヒマリのこういう所に俺は救われてるので。確かにあの号外に載っていた通りなんですけど、本当にそれだけじゃないんですよ」


 そう言ってトワは何故か頬を染めた。そんなトワの隣でクリスも頷いている。何となくいい気分になった私は、明日は二人が大好きなハンバーグにしようと心に決めたのだった。


「ところでさ、お前ら本題は?」


 クリスのと言いかけに三人はまたハッとして居住まいを正した。


「お茶にすっかり気を取られてまた忘れる所でした!」

「やばいな、これじゃ俺たち騎士失格だぞ」

「いや~このアットホームな雰囲気が駄目なんだろうな~。みかんうめぇ」


 そう言ってノーマンは3つ目のみかんに手を伸ばしている。


「あんまり食べたら手が黄色くなるわよ。で、聖女は何やらかそうとしてんの?」

「識字率ですよ。あと計算」

「それは上げた方が良くない? ていうか、見事なまでに聖女としての役割を果たそうとしてんのね、その人」

「どういう意味? ヒマリ」

「うん? 元居た世界でさ、そういうのが流行りだったみたいなんだよね。何ていうか、平凡な私が異世界に転生したら聖女だった! 前世の知識を駆使してこの世界を救います! ざまぁ! みたいな奴」


 特に創作物に興味も無かった私だが、そういうのが流行っているという噂は耳にしていた。というか、本屋に行くとそんなタイトルの本が所狭しと並べられていた。そんな本のタイトルを横目によく思ったものだ。


 『皆、現世に疲れているのだな……』と。


「謎すぎる世界観だな。なんだ、それ。社畜の経典か?」

「う~ん、ある意味経典だったのかも。あくまでも一部のだけどね。しかもこれは社畜だけじゃなくて社畜予備軍のガクセーにも人気だったわよ。大体の内容が異世界に転生してチートな力で無双する、みたいな話っぽかったし、聖女ものだったら白魔法であらゆる病気治しつつ元の世界の知識使って世界を発展させる、とか、悪役令嬢だったら婚約者に突然理不尽な三行半言い渡されたのを良い事にそれまで隠してた知識をあちこちで披露してもっかい言い寄られてこっちから振る、とか、勇者ものだったらパーティから役立たずって追い出されたけど、実はこの力凄かったんです。え? 俺また何かやっちゃいました? 的な奴とかさ」

「めっちゃ詳しいじゃねぇか! おい、それ絶対社畜のバイブルだろ!?」

「夢見たいのよ、皆。そういう成り上がり系とかざまぁみろ展開なお話がブームになるほど、世の中は腐ってたって事よ」


 後輩にやたらとそういう本やゲームを愛している子が居た。色々オススメしてくれるのでとりあえずいくつか読んだが、確かにスッキリするのだ。ただ本の中と現実のギャップが大きすぎて反動がデカかったので、私は自らその世界には手は出さなかった。そこが底なし沼だと知っていたからだ。


「なるほど。それを聞く限り確かに聖女はそれを実行しようとしているのかもしれませんね……だから唐突に識字率を上げるとか言い出したのでしょうか」

「だとしたら厄介だな。この世界の望む聖女はあくまで役職だぞ。別に目立った事なんてしなくていいんだよ。慈悲深く微笑んで誰彼構わず話を聞いてやるだけでいい。だって、聖女が居るってだけで他国には十分に牽制になるんだからな」

「そうだなぁ。派手に動き回られちゃ厄介だな」


 団長三人組はしきりに頭を捻っているが、私の疑問はそんな所ではない。


「まぁ別にそういうのはやりたいって人がやればいいじゃん。そんな事よりもさ、聖女がどうしてトワとかクリスの事を知ってたのか、どうして色んな事件の犯人を知ってたのかの方が重要だと思うのよ」

「確かに。それが分かんねぇのが僕も一番気持ち悪いんだよ。あと、トワとそういう関係だって思い込まれてんのもすっげぇ嫌」

「それは俺のセリフですよ、クリス。ヒマリの言う通り、識字率や計算力を上げる事自体は悪い事ではないのでやらせておけばいいんです。でも先の事を予知したり俺たちの事に異常に詳しかったのは気になりますね。あなた達はそういうの無かったんですか?」

「う~ん……俺たちは特には無かったよな? あ、でもノーマンは何か言ってなかったか?」


 そう言ってレイモンドとヒューがノーマンを見ると、ノーマンは頷いている。

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