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「そうでしょう!? 俺も初めてこれに入った時は感動してしまって!」
はしゃぐトワの声に次いでノーマンの呆れたような声がする。
「いや、お前はキャラ変わりすぎだから。何だよ、寮じゃあんなにつんけんしてんのに。案外表情豊かなんだな」
「いつもトワは能面のような顔をしていますからね。俺も驚きです」
「何にしてもお前にとって寛げる場所があるってのは嬉しいね。最初は寮出て婚約者と暮らすって聞いた時はどうなる事かと思ったが、今のお前見て安心したよ」
「まぁ、ここでは騎士で居る必要もないですから」
「ふぅん? まぁ良い出会いがあって良かったじゃねぇか。正直言うと俺達心配してたんだよ。聖女様の言うお前の婚約者はとんでもなさそうだったからさ」
おや? どうやら私の株が少し上がったのでは? キッチンから聞き耳を立てていた私が一人ほくそ笑んでいると——。
「いや、お前ら勘違いすんなよ? ヒマリはあの記事のまんまの女だぞ? なぁ? トワ」
「う、まぁ……そうですね。否定は出来ませんね……」
少し迷ってクリスの意見に賛成したトワ。よし、トワとクリスの分は少し減らそう。そんな事を考えながら私はそっとトワとクリスの皿からロールキャベツを1つずつ減らした。
「おいおいマジか。でも一緒に住むんだ?」
「ええ。確かに文字にするとそういう人かもしれませんが、ヒマリはそれだけではないので。人生を直してくれるという彼女の仕事は本物でしたよ」
よし、トワの分はやっぱり増やしておこう。こういう時に相手を決して下げないのがトワの良い所である。
「そうだなぁ。ヒマリはバカがつくほど正直だし文字に起こしたらとんでもないけど、誰にでもフラットだよな。だからこっちも変に気を使わない」
うむ。クリスの分も戻しておこう。なんだ、案外私は慕われているのかもしれない。そう思った矢先。
「まぁでも、あの記事は概ね当たってんな!」
「ですね。それは俺も否定出来ませんでした……」
……どっちやねん! 上げたり下げたりしやがって! 私は心の中で悪態をつきながら、二人の皿に二人が大好きだと言った、出汁が出尽くしてパッサパサになった鰹節を大量に入れてやった。
「は~い、ご飯ですよ~」
笑顔で料理を運ぶ私を見て二人はあからさまにヤバい! みたいな顔をするが、もう遅い。お前たちの夕食は鰹節のロールキャベツ添えだ。
夕食が無事に終わってトワとクリスとお茶の準備をしてマドレーヌを配ると、それまでコタツに入ってそのまま転がっていた男たちは徐に起き出した。
「めっちゃ美味そうな匂いがする」
「あなたつい今しがたお腹一杯でもう何も入らないって言ってませんでした?」
「あれ嘘な。デザートは別腹だから」
「お前はどこぞの貴婦人か。ヒマリどの、これは?」
「マドレーヌって言う焼き菓子よ。はい、トワにはおっきいのね」
何せトワの快気祝いだ。他のよりも一回り大きなマドレーヌをトワに渡すと、トワは物凄い笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます! ヒマリの向日葵……」
「……あんた、もしかして酔ってんの?」
「くっそ寒いから止めろよ、そういうつまんない洒落」
寒すぎるダジャレを私とクリスにボロカスに言われてもトワは上機嫌だ。そんなトワを見て団長の面々はあんぐりと口を開けている。
「で、結局あなた達は何をしに来た訳? 夕飯たかりに来たの?」
トワのどうでもいいダジャレを無視してお茶を飲みながら私が言うと、団長達はハッとしてお互いの顔を見合わせた。
「そうでした! すっかり忘れていました!」
「全くだ。飯の美味さとコタツの威力に完全に仕事を忘れていた……」
「いや~美味かったからな~。トワいいな~毎日こんなん食ってんだもんな~」
「羨ましいでしょう? 寮の料理とは比べ物になりませんよね。で、何か問題でも起こったんですか? 俺は明日から復帰予定だったんですけど、それすら待てなかったということですか?」
休みを邪魔された事が本心では気に食わなかったのか、トワの顔はまるで能面のようだ。
「あー……まぁ、想像通りだよ。一昨日な、来たんだよ。聖女様」
「ああ、そうなんですね。で、どこの寮に?」
トワの問いかけに三人ともが揃ってトワを指さした。その途端、トワを取り巻く空気の温度が比喩ではなく三度は下がったと思う。
「まさかとは思いますが、俺の部屋?」
「そう……ですね」
「いや、なんかもう止めても無駄だったっつうかその……なぁ?」
「てかあれ、ただの変態じゃね?」
マドレーヌを齧りながら無礼極まりない事を言ったノーマンの口を慌ててヒューが塞ぎ、レイモンドが青ざめて怒鳴る。
「お前、今のは絶対に! 思ってても外で言うなよ!?」
「わーってるよ。でもトワが置いてった家具見てはしゃいでんのとか気味悪くてさ。特にベッド」




