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「お嬢さん、トワの婚約者……なんだよな?」

「あんた、どんな権力があんの?」


 唖然とした3人にトワが何かを思い出したかのようにポンと手を叩いた。


「そう言えば言ってませんでしたね。ヒマリはクリスの名付け役ですよ」

「ええ!? で、でも名付け役は高位妖精様を虐げてるって……」

「ていうかお前! 高位妖精様を呼び捨てにしてんのか!?」

「ちょ、ちょっと待って。俺今めっちゃ混乱してんだけど、どういう事? お嬢ちゃんはトワの婚約者で? 高位妖精様の名付け……役? は?」

「まぁ話せば単純な話よ。だけどそこ寒いでしょ? とりあえず入んなさいよ」


 クリスが持ってきたスリッパを3人に差し出すと、3人は半信半疑でブーツを脱いでスリッパを履いた。家の中で靴を脱ぐ習慣が無い彼らはとても戸惑っている。


「家の中で靴を脱ぐなんて……違和感が凄い」


 ノーマンの一言に頷いたのはヒューだが、レイモンドは案外平気そうだ。


「最初は違和感ですが、慣れるとむしろ家の中で靴を履いてるのが気持ち悪くなりますよ」

「それな。あと床が常に綺麗。ヒマリがくれたもこもこ靴下が最高に気持ちいい」


 そう言ってクリスが自分の足元を指差すと、全員がクリスの足を見る。


「俺、貰ってない」

「そりゃそうだ。これくれたのお前が来る前だからな~」

「トワにも作ってるからもうちょっと待っててね。あ、そうだ。あんた達マフラーお揃いでいい?」

「嫌ですよ!」

「嫌だよ!」

「えー……毛糸同じのしか余ってないんだけど」

「俺が今度城下町で買ってきます!」

「そう? えっとね、それじゃあね、カシミヤの毛糸にして! 多めにね! 私のも作りたいから」


 これ幸いと毛糸に注文をつけると、トワはな~んにも気付かずに頷いて頬を染める。

「そ、それはヒマリとお揃い……って事?」

「忘れんなよ!? 僕も仲良くお揃いだからな!」


 必死のクリスの呼びかけも無視してトワはまだ頬を染めている。


「多めに買ってきますね。えっと、カシミヤ? の毛糸」

「うん!」


 よっしゃ! 高級マフラーゲット! 喜んだ私に何か気づいたのかクリスが白い目でこちらを見てくる。


「トワ、油断すんなよ。僕たちの目の前にはあちこちに罠が仕掛けられてるからな」

「え! 今の罠なんですか?」

「よく見ろ。ヒマリのこの喜びよう。これは明らかに何かの罠だぞ」


 クリスの言葉にトワはじっと私を見つめてきたかと思うと、半眼になって言う。


「ヒマリ? どうしてカシミヤがいいの?」

「え? そんなの天下の騎士団長様にそこらへんの毛糸で編んだマフラーなんてさせられないでしょ?」

「……本音は?」

「カシミヤって洗濯も大変だし手入れもすんごい必要で面倒なんだけど、それを差し引いてもめっちゃくちゃ気持ちいいの! ただね、高いの。とにかく高いの!」

「あ……そういう……うん、買ってくる……色は?」

「トワの好きな色でいいよ! 私の分もトワが選んで」

「僕は青! 絶対に青!」

「……あなたのももちろん俺が選んできてあげますよ。安心してください」


 私の本音を聞いてトワは半眼のままクリスを鼻で笑った。一体どんな色を選んでくるのか楽しみである。


「で、あんた達は夕食は? もう食べてきたの?」


 クルリと振り返って私が言うと、3人の騎士団長達は目を点にしたまま首を横に振った。


「そうなんだ。それじゃあ食べて行きなさいよ。沢山あるから」

「あ、す、すみません」


 そう言ってヒューが頭を下げると、他の二人も慌てて頭を下げる。


「ダイニングじゃ狭いし畳のとこに持ってくわ」

「おう。じゃ、コタツの用意しとくな!」

「うん、ありがと」


 冬になって一番にした事。それは畳の部屋とコタツを作った事だった。


 本当は電気が使えるのだから電気でいきたかったが、あいにく私には新たに電化製品を作り出す技術も知識も無い。そこで目をつけたのがクリスの力だ。


 クリスは高位妖精なので火は扱える。火力も自由に操れるし、その火力を魔石と呼ばれる妖精にしか扱えない不思議な魔法を貯蓄出来る石に詰めておけば最低でも3日はポカポカのままだ。それをテーブルの裏板にDIYを施して無理やり取り付けた。最初はクリスはまた私がおかしな事をしだしたと思っていたようだが、実際にコタツに入ってからというもの、今やもうコタツの虜である。


 魔法はこの世界でもありふれた物ではなく、妖精にしか使えない。使えたとしても低級妖精だと調節が難しいらしい。高位妖精さまさまだ。


 私が最後の味の調整をしながら人数分のお皿を出して夕食の準備をしていると、畳の部屋から感動したような声が聞こえてきた。


「こ、これは凄いですね!」

「ああ~……冷えた体にこれはたまらんな……」

「うわ~これは確かに靴いらないわ」

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