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毒舌系社畜女子、異世界でも社畜を極めてしまう~可愛げがなくてごめんなさい~  作者: あげは渓名


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3

 私はルチルの言葉に頷いた。せっかくやって来た異世界だ。私の中ではまだ現実感が無さ過ぎて夢の中に居るのと何も変わらないが、何だかぼんやりしているうちに乗っかっておいた方がいい気もする。


 頷いた私を見てルチルは笑顔で手を差し出してきた。


「よろしくね、ヒマリ!」

「あ、はい。よろしくお願いします。お姫様」

「嫌だ! ルチルでいいわよ! さあ、まずは家を探しに行きましょう!」

「はぁ……え、早速⁉」


 こうして、私の異世界ライフが始まったのだった——。



 ルチルの口車に乗った私は、異世界にやってきてから半月後には自宅つきの店を持った。


 店は王都まで馬車で30分ほどの場所で、いい具合に田舎。小さな町でとても暮らしやすそうというのが第一印象だった。


 私が選んだ家は店舗の裏がそのまま居住区になっていて、家の割には少し大きめの庭がついている。庭には何故か数本の梅の木があり、その梅の木に懐かしさを覚えた私は、ルチルが言う王都のど真ん中にあった豪華な店を買い取るという提案を辞退してここに決めたのだった。


 あとこの世界の生活インフラと何故かメジャーな家電だけは古臭くとも地球と何も変わらなかったので死ぬほどありがたい。


 ルチル曰く、インフラや家電に関しては大昔に私と同じようにこの世界にやってきてしまった異世界人が作ったという伝説が残っているという。


 ちなみにその人が地球に戻れたのかどうかは定かではないらしい。



 異世界にやってきて早一月。私もそろそろこの世界に慣れてきだした。


 ところで話は変わるのだが『ランプトン少年像』という名画を見た事があるだろうか? 


 超美少年が描かれた有名な絵画なのだが、何故唐突にこんな話をしだしたのかと言うと、正にその少年の大人バージョンが目の前に居るからだ。


 濃い茶色の癖っ毛に少しだけ垂れた一見優し気な雰囲気の鳶色の目。スッと通った鼻筋に形の良い唇。なかなか日本に居てはお目に掛かれないタイプの甘いマスクの美青年だが、愛想笑いが凄い。


「えっとー……ルチル、こちらはどちらさまでしょう?」

「この人はトワ。こう見えて王の騎士団の団長なのよ! 美貌の騎士様ってこの国では有名なの」

「姫、その紹介は止めて頂いてもよろしいでしょうか?」


 美貌の騎士様と言うだけあって甘く優し気な声だが、確かに表情はぴくりとも動かない。笑顔なのに、だ。貼りつけたような笑顔は確かに仏頂面よりも怖い。


「まぁ、ごめんなさい! だって、あなた目が全然笑わないんだもの。そんなだから皆に誤解されるのよ」


 そう言ってルチルは含み笑いをする。


 私は全く事情が分からないままとりあえず二人にお茶を出した。


 すると、トワはそれには一切手をつけず、突然淡々と話し出す。


「あなたが異世界から来たという方ですか?」

「え? ええ、まぁ、そうですけど」


 何とも言えない威圧感に思わずたじろぐ。ルチルの言う通り、微笑んでいるのに目が全く笑わない。これはもしかしたら出自を疑われているのかもしれない。


 そんな私の警戒を他所にトワが口を開いた。


「あなたに一つ頼みたい事があるのですが」


 少しも人にものを頼む態度ではないが、客は客だ。私はそれを聞いてニコっと笑いかけた。


「失礼しました。お客様でしたか。ではお悩みをどうぞ」


 突然の接客モードに驚いたのかトワは目を見開き凝視してくる。そんなトワの隣では、ルチルがお茶を噴き出しそうになるのを必死に堪えていた。


「お客……になるのかどうか分かりませんが、あなたに是非頼みたいのです。その化粧の術を使って、私を二目と見れない顔にしてくれませんか?」


 それを聞いた途端、私はスッと笑顔をひっこめた。


「……残念です。どうやらあなたはお客様ではないようですね。……とっとと帰れ、このすっとこどっこいが! ここはお直しする所だっつってんでしょ! 不細工になりたいならその辺の壁にでも顔潰れるまでぶつけてないさいよ!」


 目が眩むほどのイケメンでも、客でないのなら用は無い。


 ぶはっ! 私が言い終えたと同時にルチルがとうとうお茶を噴き出した。


「もう、だから言ったでしょ! ヒマリはあくまでも修正してくれるの! 不細工になりたいなんて、ほんっとありえない!」


 大笑いするルチルを他所にトワはこちらをじっと見て来る。


「何よ?」

「いえ、あなたは外見で他人を判断しないんですね。私にそこまで言う人は初めてかもしれません」

「へー……いや、それ遠まわしに顔自慢なの? 言っとくけど、ここはあんたみたいな人が来るような所じゃないの! 分かったらとっとと帰ってちょうだい!」

「おまけにとんだ二重人格なのですね。驚きました」

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