表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
毒舌系社畜女子、異世界でも社畜を極めてしまう~可愛げがなくてごめんなさい~  作者: あげは渓名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/11

4

「二重人格だなんて失礼な。お客様じゃない人に猫被る必要もないでしょ? もー! 今日はお休みだからお昼から飲もうと思ってビール買い込んできたのに~」


 休みの日は昼から飲む! これが私の最高のストレス発散方法だ。あの梅の木の下でおつまみ食べながらビールを飲むつもりだったのにとんだ邪魔が入ってしまった。とっとと追い出そう、そうしよう。


 立ち上がって店のドアを開けた私は、有無を言わさず二人を外に追い出した。更に鍵をかけていそいそと作り置きしておいたおでんとビールを持って庭の梅の木の下に移動すると、そこには既にルチルとトワが居る。


「何でいんのよ!」

「まぁまぁ! ビール飲むんでしょ? 私も飲む飲む!」

「……私は一応、姫の護衛なので」

「……」


 何でこうなるんだ。私は大きなため息をついて立ち上がると、鍋に残っていたおでんと買い込んだビールを取りに戻った。


「はい、どーぞ。トワさんもどーぞ!」


 庭に戻ってきた私がフンと鼻を鳴らして二人に瓶ビールとグラスを渡すと、トワは少しだけ困ったように眉を下げる。


「ありがとうございます。ですが、私は勤務中なので」


 礼儀正しくそう言ってビールを返してきたトワに思わず私は苦笑いを浮かべてしまった。


 この人もどうやら由緒正しい社畜のようだ。世界が変わっても、どうやら社畜の身分は変わらないらしい。


「それじゃあ、あなたにはこっちね」


 そう言って私はとりあえずお茶をトワに手渡すと、トワはまだ困ったような顔をしながらそれを受け取った。


 きっと普段からルチルに手を焼いているのだろう。分かる。


 そんなトワを見てルチルが驚いた。


「まぁ! トワ、顔動くのね。表情筋が死んでいるのだと思っていたわ!」

「顔の筋肉は動きますよ。お手数をおかけしてすみません」

「いいええ! はい、これおでんね。せっかく昨日から煮込んだのにな。あ、ルチル、あんたこれ食べなさい。大根。最近毎日晩餐会でお酒飲んでるんでしょ? 大根は胃腸の働き良くしてくれるから」

「ありがと~! そうなの! 疲れてるのよ、胃が!」

「じゃあ飲むの止めな。ワインの代わりにぶどうジュースでも飲んでなさいよ」


 私が言うと、ルチルはポンと手を打った。


「いいわね、それ。はぁ~あ。舞踏会でもビールが出ればいいのに」


 貴族が集まる晩餐会にはビールなどと言う庶民の飲み物は一切出ないらしく、ルチルはここへ来るたびにこうやって私の作ったおつまみを食べてビールを飲んでほろ酔いで帰って行くのだ。もう毎回の事すぎてすっかり慣れてしまった。


 たった一ヶ月の付き合いだというのに既に何年も友人だったかのような錯覚に陥るのは、きっと姫とは思えないこの取っ付きやすさなのだろう。


 そんなルチルは既におでんの大根にハフハフ言いながら齧りついている。


 その隣ではトワがまだおでんを訝しげに眺めながら眉根を寄せた。


「……これは……何て言う食べ物です?」

「おでんって言うの。冷蔵庫の中の余りものを処理するのにちょうどいいのよ。はい、これどうぞ」


 そう言って私は適当におでんをお皿に乗せてトワに渡した。トワは半信半疑でおでんを見つめていたが、卵を一口食べて目を輝かせる。


「卵はね、たんぱく質が豊富で栄養価も高いから騎士様のあなたにはピッタリ、って聞いてる⁉」

「んん? すみません、聞いてません」

「見りゃわかる! ったく。はぁ~ビールうまぁ~!」


 もうなんでもいいや。私はおでんを頬張りながら、昼間っから飲むビールに舌鼓を打っていた。


 しばらくすると。


「そりゃね、私だってね! 公務が嫌いな訳じゃないわよ⁉ でもね、やれどこそこの王子が~とか、どこそこのお姫さまは~とかもういい加減聞き飽きたのよ! コルセットは苦しいし、あの子達、絶対に私をいつかコルセットで締め殺す気なのよ!」

「うんうん、大変だね。頑張ってるよ、ルチルは」

「そうでしょぉぉぉぉ? それなのに誰も褒めてくれないのぉぉぉ!」

「いやいや、皆知ってるよ。おーよしよし。頑張ってるルチルは偉いぞ~。良い子だぞ~」

「えぐえぐ。そうよね⁉ 頑張ってるわよね⁉」


 何度も何度も念を押してくるルチルの頭を撫でながらタコを齧る私。そんな私を物凄い顔をして見るトワ。


「あに(なに)?」

「あ、いえ。女性でもそんな、タコなんて齧るんですね」

「齧るわよ。大好きよ。何よ。女子はタコなんて齧らないと思ってたの? ナイフとフォークしか使わないとでも?」

「いえ、そうは思わないけど……俺の周りにはタコを齧る女性は居なかったので」


 そんなトワの言葉に私は頷いた。


(でしょうね。絶対良い所のボンボンだもんね)


 おまけにいつの間にかトワの一人称が私から俺に変わり敬語が中途半端になっている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ