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毒舌系社畜女子、異世界でも社畜を極めてしまう~可愛げがなくてごめんなさい~  作者: あげは渓名


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2

 このお姫様、とんでもなく跳ねっかえりで自由奔放なお姫様なのだが、この日も勝手に城を飛び出して戦場の観察に来ていた所で私を見つけてくれたらしい。


 その後ルチルは私を馬に乗せて安全な場所まで連れ出してくれた。そして当然のように質問攻めにされたのは言うまでもない。


 どこから来たのか。突然地中から顔を出したのはどういう事か。ここに何の目的でやってきたのか。突然の事態に戸惑う私は、分かる範囲で答えていった。


 すると、ルチルはあっさりとそれを信じてくれたのだ。


「なるほどね。ヒマリは妖精にイタズラされたのね。妖精の通り道にできた空間に入り込んでしまったんだわ」


 戸惑う私をルチルはあれこれ慰めてくれていたのだが、この時、私はほとんどルチルの話など聞いていなかった。何故ならその顔に釘付けだったからだ。


 真っ白な肌に真っ赤な唇。絵に描いた、というか実際描いたのかと思うような顔は正に絵画! ルチルの顔はまるで絵画のようだったのだ! 


 何なら厚塗りしすぎてそこら中にうっすらと不自然なヒビが入っている。


 だから私は思わずルチルの顔をマジマジと見つめて言ってしまった。


「その化粧……正気ですか?」


 この私の一言にルチルの顔が引きつった。その拍子に今度は口元にピシリとまた皺がいく。


「どういう……意味かしら?」

「いや……今凄い事になってますけど……」


 そう言って私はそっと腰に付けたメイクポーチの中から手鏡を取り出してルチルに見せると、それを見てルチルは短い悲鳴を上げる。


「ひぃっ! だから嫌なのよ! 化粧するのは!」

「……」


 いや、化粧が悪い訳ではない。何故そんな顔に皺の後が残るような化粧をするのだ。私は許せなかった。美容に携わる者として、プライドが許さなかった。


 おろおろするルチルの手を引きとりあえず林から移動すると、腰に付けたメイクポーチの中から今度はクレンジングを取り出してルチルの顔を弄り始めた。


 今思えば相当に失礼である。


 しかしルチルは何も言わなかった。後から聞いたら、戦場の騎士よりも怖い顔をしていたと言われたがそれは聞かなかった事にしている。


 そしてこの行為こそが、今後の私の生活を決定する事になってしまったのだ。


「まず全部落とします。これ、何塗ってるんですか?」

「何って、蜜蝋よ」

「蜜蝋⁉ オイルで薄めずに!? バカじゃないの!」


 一応言っておくと、この時点では私はまだルチルがこの国のお姫様だという事を全く知らなかったからこその暴言だ。


「バ、バカ……」


 愕然としているルチルのメイクを全て落とし、スプレータイプの化粧水で肌を丁寧に拭き取り、乳液を付けて持っていたパウダーファンデーションで軽く下地を作った。 そして後は言わずもがなである。いつも通りのメイクをして見せた私に、ルチルは顔を輝かせて言ったのだ。


「顔が軽いわ!」


 と。


 思わず苦笑いを浮かべた私にルチルは教えてくれた。この世界の事を。


 そしてようやく私は理解したのだ。ここが自分の居た地球とは全く別の星の、全く違う文明を持った場所だという事を。そう、かの有名な異世界だという事を!


 気が遠くなる、とはこういう時に使うのだろう。


(そう、正に今!)

「マジか……」


 そう呟いて目を閉じた私はそのまま後ろに倒れ込んだ。ゴン! と物凄い音がして意識を失えれば良かったのだろうが、石頭の私には何の効果もなかった。


 おまけに不幸な事に私はとても好奇心が旺盛なのだ。違う世界も楽しいかもしれない、そう思ってしまった。


「大丈夫? 物凄い音がしたけれど……」

「ええ、大丈夫。いたた……えっと、とりあえずお姫様、絶対返すんでお金、貸してもらえません?」


 突然の私のお願いにルチルは目を丸くした。


 しかし、そんな顔をされても私には今の所何もない。しいて言えばこのメイクポーチと接客術ぐらいである。


 どっちが役に立つってそりゃ間違いなく接客術だろう。この技術は大体どこへ行っても通用する。 


 私の申し出にルチルは一瞬ポカンとしていたが、すぐに笑いだした。


「ヒマリ! あなた最っ高に面白いわ! この化粧の技術もそうだけれど、その何でもズバズバ言ってしまう所! それを活かさない手はないと思うの! お金を貸して? とんでもない! 今日から私があなたのパトロンよ。思う存分この世界で天下をとってちょうだい!」

「……」


 何だかとんでもない事になった。


 社畜根性が体に染みついている私にはパトロンなどついた事がないからよくは分からないが、つまりはお金を出してくれるという事だろう、きっと。ならばそれに乗っかるしかあるまい。

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