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「何もしてません! 挨拶をする前から俺の家柄とか騎士団の事とか、あとどこで知ったのかブロッコリーが食べられないだろう? って」
「ブロッコリー? もう食べられるわよね?」
「うん。ヒマリのブロッコリーは美味しいから」
「別に私がブロッコリー生産してる訳じゃないんだけど、クリスは?」
「僕も一緒。めちゃくちゃ大きな猫被ってたのに高位妖精の割に本当は口が悪くて、背が低いのがコンプレックスだろう? って」
その言葉に思わず私はキョトンとしてしまった。
「そうなの? あんた背が低いのコンプレックスなの? クリスにはそれぐらいの身長が似合ってるけどな。それにそれ以上大きくなったらその羽根で絶対に飛べないわよ」
「そ、そう? まぁ僕はカッコイイって言うより可愛い系だし?」
「そうそう。あんたは可愛い系よ。トワがカッコイイ系。で、スタンさんが……ワイルド系?」
そうやって考えてみれば今の私の周りにはイケメンがわんさかいるではないか! もしかしたら目の保養は一生分堪能しているのでは!?
そんな事を内心考えながら私はコホンと一つ咳払いをした。
「で、あんた達はこぞってその魔女っぽい聖女から逃げ出して来た、と」
「そう」
「ええ」
「ルチルは? 特にトワなんてルチルの護衛しなきゃなんじゃないの?」
「いいえ。俺は王の騎士団の団長なので姫専属の警護はしないのですよ」
「え、そうなの? じゃあ何でいっつもルチルの警護トワがしてんの?」
「え? いや、それはその、何ていうか……色々事情があるんですよ」
何故かそう言って視線を泳がせるトワを見てクリスが白い目をトワに向けているが、私には城関係の事はさっぱりだ。
「ふーん、何か色々あんのね。騎士様は大変だ。でも今日は嘘ついて逃げて来た、と」
「はい。とは言っても元々俺は今日は非番で、お披露目会はともかく最初からパーティーの参加は自由だったんです」
「そうなんだ。ちぇっ! 美味しい物の話聞けると思ったのにな。クリスもそうなの? あんたなんて夕方にはもう私と居たけど」
「僕は自由気ままがモットーだから。お披露目会だろうが何だろうが嫌だったら帰る!」
「あ、そ。あんたらしいわ。それが許されるほどの立場って事なのね、高位妖精さまは」
「何だよ、お前の頼みは結構聞いてるだろ?」
「そう~? 割合で言ったら半分行かないぐらいじゃないの~?」
「そ、それはお前がしょうもない事頼むからだろ! やれ庭の草むしって来いだの、部屋に虫が出たから外に出してくれだの!」
「……それは完全にパシリですね」
「そうなんだよ! トワ、コイツと住むって事はそういう事だぞ!」
何故か胸を張って自慢げに言うクリスに、トワは少しだけ考えてにっこりと微笑む。
「覚悟しておきます」
と。そんなトワを見てクリスはその場で悔しそうに地団駄を踏んでいるが、そんな事は今はどうでもいい。この二人が逃げて来たということは、まず間違いなくもう少ししたら——。
そんな事を考えながらチラリと時計を見た瞬間、玄関のドアが大きな音を立てて開き、誰かがズカズカと上がり込んできた。
「もうしんっじらんない! 何あの性悪女! あ! やっぱり二人ともここに居たのね!? しかも晩ごはんまで食べてるじゃない! ズルくない!? 酷くない!?」
怒りを隠そうともしないで勝手に家に上がり込んできたルチルは、チラリと私を見た。
「ヒマリ、怒ったらお腹減っちゃった……何かある?」
「あんたたちね! ここは居酒屋じゃないんだけど!?」
言いながらキッチンの床下収納を開けて中から丹精込めて漬けた秘蔵のぬか漬けを出して中に漬けていた野菜を洗うと、ルチルの目の前に勢いよく置いた。
それを見てルチルは顔を輝かせ、一口食べてさらに目を輝かせる。臭いと言って嫌がるだろうと踏んでいたのにとんだ誤算だ。どうやらルチルはぬか漬けの良さが分かるらしい。
「美味しい! これ何? 何だか独特の味だわ!」
「それはぬか漬け。美容に良いのよ」
「素敵! はぁ……やっぱりヒマリは天才ね。それに比べて聖女様は……」
ポツリとそんな事を言いながらルチルはぬか漬けが相当気に入ったのか、人参を一本丸々齧っている。どうやら相当やさぐれているようだ。
「姫、外ではそのような事は絶対にしないでくださいね」
「しないわよ。あなただってここに来たらマナー適当じゃない」
「なんというか、ここは実家よりも落ち着くんですよ」
「それは分かるぞ、トワ。僕もここは凄く落ち着く。口うるさくて金の亡者だけどヒマリは基本放任だしな。今日はじめて城行ったけど僕は駄目だ。ああいう贅沢は僕には向いてない」




