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「なんかさ、マリアンヌにしてもお前にしてもさ、ヒマリがお直ししただけで人生良い方向に向かってく奴ら見るとさ、いいなって思うよな。幸せになれよスタン!」


 クリスはスタンの背中をポンと叩いてスタンが持っていた私の荷物を取り上げた。


「だからこれは僕が運ぶよ。ヒマリのパートナーはこの僕だから!」


 それを聞いた途端、スタンの笑顔が引きつった。


「……あ、そういう……えっと、はい。よろしくお願いします……でも、私も諦めませんから。たとえ高位妖精様がお相手でも」

「……勝手にしろよ。僕は負けないから。行くぞ! ヒマリ」

「え? ちょ、何なの急に現れて! スタンさん、今度また遊びに来てね! その時に色々お話聞かせて! 楽しみにしてる!」

「はい! また遊びに行きます! お土産持って」

「あはは! うん、ありがと! それじゃあまたね~。ちょっとクリス!」


 引きずられるように私はクリスに手を引かれてその場を去った。クリスは見た目は子供でも力はそれなりにある。


 城下町の外れで辻馬車を待っていると、突然クリスがくるりとこちらを向いて私を睨みつけて鼻先に人差し指を突きつけてきた。


「ヒマリ! お前はちょっと警戒心が無さ過ぎ!」

「突然なんなの」

「スタンだよ! お前、僕が来なかったらこんな時間にスタン家に上げる気だったのか?」

「こんな時間って……まだ夕方だけど」


 ムッとして言い返すと、クリスはふんと鼻を鳴らす。


「今は夕方でもあっという間に夜になるだろ!」


 その言葉にようやく私はクリスが何を言いたいのか理解した。私とて子供ではない。クリスが何を言わんとしているかちゃんと分かっている。


(けれどクリス、君には言っておかなければなるまい。そんな心配は杞憂だと)

「もしかして心配してくれてるの? ありがとう。でもね、前にも言ったけどあっちの世界で散々恋愛方面で失敗した私がね、そんなにモテる訳ないから! 言ったでしょ? 私はこの世界で自分の力で荒稼ぎして幸せな老後を暮らすんだって!」


 言い切った私を見てクリスはガックリと肩を落として大きなため息をついた。


「はぁ……ニブチンもここまで来れば天晴だよ。やっぱヒマリには僕がついてないとあっという間に食われるな」

「ん? 何か言った?」

「な~んも。で、何、この大荷物」

「いや~調子乗って買い物してたら買いすぎちゃって! でも見て! 布とか鉱石とかめっちゃ安かったの! これを加工してまた高値で売るんだ~」

「……お前は本当にブレないな」

「そんな事よりもあんたよ。何でこんなとこに居んの。さっきのどういう意味?」


 私の問いかけにクリスは何かを思い出したかのように突然眉を吊り上げた。


「忘れるとこだった! 聖女な! あれ相当ヤバいぞ!」

「ど、どうしたのよ」

「何か訳わかなんない事ブツブツ言いながら僕とトワ見てずっとニヤニヤしててさ、トワと気味悪いよなって。僕も何か背筋寒くなってきたから適当な理由つけて帰ってきたんだよ。あんなのパートナーとか絶対に無理! それなら金の亡者のが全然マシ! あ、でもトワの言う通り僕もお前の方が可愛いと思う」

「可愛いはありがとう。でもちょっと聞き捨てならないわね。誰のことよ、金の亡者って」

「え、ヒマリだけど?」


 他に誰がいんの? とでも言いたげなクリスに思わず怒鳴ろうとした所に、運悪く辻馬車がやってきた。


 その夜の事である。


「無理です無理です! 俺も無理です! あ、ヒマリおかわりお願いします。これ何の魚? 美味しい」

「だよな! 僕も絶対に無理! あ、僕もおかわり」


 そう言ってトワとクリスが何故か二人していつもの席に座って、今日の夕食であるカレイの煮付けのおかわりを所望してくる。


「ていうか二人ともパーティーは? ねぇねぇご馳走は?」

「んなもん食ってる余裕なかったっつーの!」

「そうですよ! とりあえずあの視線から逃れたくて俺でさえ嘘ついてしまって……はぁ」

「後悔すんなら職務全うしてくれば良かったのに。で、何がそんなに駄目だったの?」


 私が聞くと、二人は突然黙り込んだ。互いに顔を見合わせて目だけで会話している。


「なんなの?」

「それがな、なんか変な事言ってんだよ、ずっと。でも流石聖女だよ。何でか僕たちの事知ってたもんな。おかげで名前変えなくて済んだけど」

「ええ……ちょっと怖いほど俺たちの事に詳しくて……あれは聖女と言うより魔女でした……」

「魔女? こわっ! 絶対関わりたくないんだけど。で、あんた達の事やけに詳しかったって? あんた達が知らない間に自己紹介したとかじゃなくて?」

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