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「そう。かんっぜんに運! で、その後それを読んで解読すんの。僕の場合は『金の年に召喚されし乙女』だったから今年じゃん? で、チビ達〈低級妖精達〉が噂してた異世界から来た女を探してたって訳」


 ワインを飲みつつフンと鼻を鳴らしたクリスに私は目を丸くした。


「いやあんた、そりゃどう読んでも私じゃないでしょ!」

「なんでだよ」

「なんでって、そもそも私はもう乙女って年齢じゃないし、召喚されたって訳でもないじゃん! 勝手にこっちに倉庫通ってやってきた不審な社畜だよ!? どこをどう間違えたら私の所に来ちゃうの!」


 自分で言ってて何だが、流石にこの年齢で乙女とか言われると何だかいたたまれない。


「くぅぅぅ! お前、若く見えるんだよ~!」

「それはありがとう。でも流石に乙女ではないわよ。それはもう全世界の乙女達に土下座しないといけないレベルで乙女ではないわ」

「ヒマリ、そこまで自分を卑下しなくていいのに! 私はあなたをまだ乙女だって思ってるわ!」

「止めてよ恥ずかしいでしょ! 私はもう大人よ。でも嬉しいからルチルにビールのおかわりをあげよう」

「ありがとう!」

「そんな言うほどの年齢ですか? ヒマリは。確か24才でしたっけ?」

「そう。乙女って言ったらそれこそ十代までじゃない?」

「どうでしょう? 俺はまだ24才は十分乙女でも通用する気がしますが」

「そうかなぁ~?」


 何だか悪い気はしないが、クリスのは多分本当に間違えたのだろう。


「まぁ何にしても一回会ってくれば? もしかしたら何かビビビ! っと来るかもよ?」

「そうかぁ? 僕は結構ここでの生活気に入ってんだけどな」


 ボソリと言ったクリスに私は思わず驚いてしまった。いつも文句ばかり言ってるが、案外私たちは上手くやれていたのだろうか。


「そう言ってもらえるのは光栄だけど、間違いだったら正した方がいいと思う。そういうのって後からジワジワとボディブローのように効いてくるから。でも、もしあんたが聖女に会って違うなって思ったらまた戻ってくれば? 別にいまさら追い出しはしないわよ、私だって」


 私の一言にクリスが顔を輝かせた。それまでしょんぼりしていた羽が虹色に輝く。


「そ、そっか! そうだよな! 流石のお前だって追い出したりしないよな!?」

「何よ、本気で私が追い出すと思ってたの? ていうか、追い出すつもりならもうとっくの昔に追い出してるわよ」

「それもそうだよな! ヒマリ! おかわり!」


 そう言ってワイングラスを差し出してくるクリスを見て私は苦笑いを浮かべながらビールを注いでやった。


 それにしてもそんなにも薄情な女に見えていたのかと問い詰めたい。


「クリス様はヒマリが大好きなんですね」


 微笑ましそうにルチルが言うと、クリスは耳まで真っ赤にしてまたそっぽを向いた。そんなクリスにトワが白い目を向けている。


「何度も言いますが、ヒマリは俺の婚約者ですからね! あなたはただのパートナーです!」

「ふふん、お前は振られたり万が一結婚なんかしても離縁したら終わりだけど、僕はパートナーだから。悪いけど一生ずーっと一緒だから!」

「いやいや、あんたはまだ分かんないんでしょ? とりあえず明日聖女に会ってきなよ。話はそれからだよ」

「そうですね。どのみち明日、聖女のお披露目パーティーなんです。そこにクリス様は呼ばれるかと。この国を守護する高位妖精として」

「へぇ、すっごいじゃん! パーティーだったら絶対ご馳走出るよね!? ちょっとクリス、明日容器渡すから美味しかった物持って帰ってきてよ」


 そう言って立ち上がろうとした私を三人で止めにかかってくる。


「いや、それは流石に無理だろ」

「ヒマリ、パーティーのご馳走でもあなたの手料理には敵いませんから」

「ヒマリ、それは高位妖精には流石にさせられないわ!」

「何なのよ、皆して。冗談でしょ。そんな必死に止めないでよ」


 何だか悲しくなるではないか。そんな言葉を飲み込んで大人しく席につくと、三人ともあからさまにホッとした顔をする。本当に失礼だ!


 そんな事を言い合っていると気づけば夜もすっかり更けていた。

 

 そして翌日、クリスは大きなため息をつきながら 城からやってきた馬車に乗り込み、まるでドナドナの牛のように馬車に揺られて行ってしまった。


「はぁ~……何か久しぶりにすっごい静か! ヤバ! 今日は何しよう!?」


 珍しく仕事が一件も入っていなくて完全にフリーだった私は、せっかくなので久しぶりに城下町まで足を伸ばすことにした。


 辻馬車に揺られて30分。城下町までやってくると、やはりどこへ行っても召喚された聖女ブームであちこちが大セールをやっている。これは来て正解だった。

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